おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

日本政治家の『入院』事情

2006-02-28 15:59:52 | 不祥事
 永田議員の記者会見が行われた。なぜあの「偽メール」を信じたのかという根拠については納得を得られるような説明はなかった。武部疑惑も解明されていないのだが、このお調子者をどのような勢力が利用したのかその政治的背景についても、新たに「巨大な闇」(前原)が誕生したわけだ。

 永田議員はめでたく退院されたが、病院側はいい迷惑だったに違いない。一番困ったのは他の入院患者だ。報道陣が押しかけてとても治療どころではない。
 「永田氏にみる政治家の『入院』事情 不祥事の避難所」と題する本日の東京新聞の皮肉な記事。< 国道沿いには、報道関係などの車両が並び、「こんな所に入院している永田さんって本当に非常識よ。交通だってこんなに渋滞してる」と、自転車に乗った主婦が甲高い声をあげながら、報道陣の間を縫うように歩道を通りすぎる。>

 この記事は、「政治家の緊急入院は“永田町のお家芸”と化している」として、(1)1992年共和汚職事件での、阿部文男元北海道・沖縄開発庁長官の入院、(2)同じく92年金丸信元自民党副総裁が、東京佐川急便ヤミ献金疑惑で小田原市の病院に緊急入院したことを指摘している。
 しかしこの両名はこの時すでに高齢だった。永田町の「トリックスター」永田は元気溌剌の37歳。「若い人なのに、自民党の年配議員が雲隠れに使っているみたいで何か潔くないね。記者会見して謝るんだったら早く謝るしかないんじゃないか」という同じ病院の患者のコメント。
 永田議員のHPを開くと、「時代はスピーディな政権運営を求めている」という金言が流れる。しかし自身の不祥事への対応はスローを極めて墓穴を深くしている。

 永田議員の説明によると、国会での質問の前に、野田国対委員長に相談し、前原代表にもこのメールを見せたという。しかし彼らは国会で暴露後の展開をどのように読んでいたのか?たとえ真実であっても武部側は否定するに決まっている。メールは証拠にならんとつっぱねられたらそれでおしまいなことは明らかだった。永田・野田・前原の三人は緊急入院してMRIなどで脳の検査を受けることをお勧めしたい。これが謀議でないとしたら、つまり自民党を追い詰めると判断していたとしたら、脳が正常に機能していないとしか考えようがない。

 永田君はもちろん道化役だが、彼を育てた(匿ったと言おうか)民主党自身が完全なピエロだ。いつでも「主役」を引き立てるためにわざと?すべってみせる。例えば昨年の総選挙だ。
 与党分裂で総選挙という野党にとっては願ってもない展開。そこで掲げたスローガンが、「日本をあきらめない」。えっ? 対する自民党は「改革を止めるな」。これは攻守全く逆だ。この完全にすべったスローガンを聞いて民主党を「あきらめた」人も多かったためか、おかげで自民党大勝。これは契約した広告代理店が自民党のエージェントだったからなのか、心の中では自民党に勝って欲しいと幹部が思っていたためなのか。

 そして「4点セット」で小泉政権誕生以来の最大の危機で国会論戦がスタートした矢先の「偽メール騒動」である。世間の関心は、永田町のピエロとその後見人たちの道化ぶりに関心が集中して、例えば伊藤ハム介の政治倫理審査会の証言など誰も気にも留めなくなってしまった。

 自民党は思いもかけずなのか思い通りなのか、とにかく民主党の生殺与奪の権を手にした。このネタだけで、今国会は完全に自民党がコントロールできるだけでなく、民主党の幹部(特に前原)に貸しを作ることで、長期間のリモートコントロールまで手に入れた。
 確かに民主党は岡田代表の時代から、「僕たちを野党と呼ばないで」と言い続けてきた。政権に難癖つけるだけの「野党opposition party」の”悪い”イメージを変えたいということらしいが、それにしてもこれだけ自民党を助ける政党は想像するのも難しい。与党の公明党だってここまで自民党に「役に立って」はいないのだから。
 そして今日の民主党幹部の対応を見ていると、ケジメをつけないことで民主党の信頼をより失わせ、そのことで今後さらに相対的に自民党を高めようとしているようだ。そこまで自虐的になるのなら、小泉の誘いを受けて自民党と合併すればいいのにと思うのだが、そうすると完全に一党独裁になって中国や北朝鮮と区別できない。いわば今後とも「偽装野党」として生きていく覚悟のようだ。もちろんこう言ったからとて民主党を誹謗中傷したいわけではない。政治はオリンピック以上に結果がすべての世界である。結果として自民党を応援していることはその評価を問わず衆目の一致するところである。

 タイやフィリピンでは首相や大統領がいま大変である。腐敗停滞した政権は打倒されるのが古今東西の政治法則だ。しかし日本は例外だ。前原党首は、自民党に「提案競走をやろう」と持ちかけた。小泉首相は、そんな面倒なことやるくらいなら「いっそ前原君自民党に来い」と公然と持ちかけた。確かにこうなると、与党も野党も体制も反体制もない。「みなさんごいっしょに」の完全翼賛化だ。そして自民党の「危機を救った」民主党の今回の「ファインプレー」。90年代には社会党が身を挺して自民党の危機を救って、その結果自身は「絶滅危惧種」(辻元清美)にまで衰退した。これが日本の政治文化だ。「反対」勢力が自らを貶めることで権力を高める。謙譲の美徳と言っていい。

 しかし民主党前原体制が続くようだと、国民の目からは「ああやっぱり。前原は自民党に命乞いをしたんだな。裏取引があったんだな」と見られることは間違いない。これからの民主党の行動はすべて「偽装」と見られてしまう。
 今でもすでにそうだが、与党から、「このまま党首でいて欲しい」と期待される”野党”党首というのも奇妙奇天烈・奇々怪々・摩訶不思議な存在と言わざるを得ない(本人は結構悦に入っているようだが)。

 前々党首の菅直人氏が「未納三兄弟」発言で、党首を辞して頭を丸めて四国88ヶ所巡礼の旅に発ったことを覚えている。前原代表も、「自民お助け隊隊長」と見られたくない、野党として政権を奪取すると言うなら、まず今は頭を丸めてお遍路さんになるのがいいだろう。できれば民主党国会議員全員辞職してお遍路さんになるのもいい。それでは「野党」がいなくなる。しかし「偽装野党」よりは一党独裁の方が分かりやすいし、自民党も自分で全部責任を負わないといけなくなるので政権には打撃だろう。

「ホリエモンメール」で謝罪へ:民主党

2006-02-26 14:27:32 | 不祥事
 「ふふふ、前原よ心配することはない。お前はワシらにとっても役に立つ男よ。間違っても石田三成にはせん。」
 「寛大なる御沙汰、辱のう御座います。上様のお心遣い、この前原一生忘れることは御座いませぬ。」
 「まあそう鯱ばることもあるまい。儂とお主の間柄じゃ。一時は”四点セット”などと申して、血迷うて謀反でも企んだかと案じておったがのう。まあ改めて恭順の意を表してもらうことにはなるがな。」
 「御意。無論今国会の”セット”はゲームセットといたします故、上様におかれましては国会運営に関していささかの妨げもございません。今後はこの前原、大御心のままに忠良な家臣として永田町にて粉骨砕身、遠くから上様にお仕えすることをお誓い申し上げます。」

 民主党は「ホリエモンメール」について謝罪するという(共同)。すでに先週このBlogに書いたとおりの展開だ。その時には「小泉か前原のどちらかの首が飛ぶ」と予測していた政治記者もいたが、日本の政治風土を考えれば”裏取引”が常道だ。
 昔なら、与野党の国対関係者が料亭で会って直接交渉だったろうが、料亭政治の衰退で、意志疎通は”オープン”になっている。自民党幹部から、「深追いして前原を追い落とすと損だと」声が上がっていた。これはある意味、「改革」の成果かもしれないが、党首討論で、「前原さんには頑張ってもらいたい」と小泉首相自ら前原にエールを送ったのは皮肉というより、本音なのだ。もちろん「交換条件」まではオープンにしないが、そこは日本文化の精華「以心伝心」だ

◆事件のウラのウラのウラのウラの・・・・

 自民党は「民主党のオウンゴール」と賞賛?するが、攻め込んで相手ゴール前で「オウンゴール」は常識ではあり得ない。民主党の攻撃を殺いだだけではない、「貸し」を作ることで民主党とりわけ党首をリモートコントロールできるし、武部ファミリーがクリーンであるという「誤解」まで生むことが出来て、自民丸儲け。うそ臭くて漫画にもできないような筋書き通りの展開である。

 こうなると世間の関心は、永田町のお調子者の永田君に「ガセネタ」を掴ませて操った「黒幕」に向かう。ちょうど本能寺の変の「黒幕」は誰かという詮索と同じで、「ウラのウラのウラ・・」読みになってしまう。光秀を動かした黒幕が、天皇か本願寺か家康かはたまた秀吉でないのかという様々な陰謀説に決着は着かないように、「永田光秀」を操ったのは、例の札付きガセネタ切り売りジャーナリスト一人と考えるのではつまらない。
 自民党サイドの陰謀説はあまりにもストレートだ。「ウラのウラ」読みは、前原追い落としを狙う民主党の勢力を指摘するが、完全に逆効果になっている。「ウラのウラのウラ」は、前原自身が自民党に刃向かいかけた民主党の勢いを逆転させるために仕組んだというもので、逆にこれはあまりにもきれいな筋書き過ぎて(完全に「狙い」が実現)弱い面がある。

◆永田町の「トリックスター」の永田君

 それにしても今や日本一有名な「入院患者」となった永田町の永田君だが、「二,三日食事も喉を通らない」ながら、ホテルで大型「クラブサンド」のモーニングを注文して軽く平らげるなど気丈な一面のある愛すべきキャラクターだ。今回が初の「お茶の間デビュー」のはずなのに、もう何度でも彼に会ったことがあるような気がするのはなぜだろう。

 そうそれは永田君が文化人類学で言う「トリックスターTrickster」だからだ。神話には必ずこのトリックスターが(よく「道化」の形で)登場する。神話や物語の中で、神や自然界の決まり事を破り、物語を引っかき回す役割を負うもののことである。
 心理学者のユングによると、トリックスターは以下の4つの特徴を備えている。1.反秩序、2.狡猾なトリック、3.愚鈍、4.セックスと飢え。
 永田君について、1.はいいだろう。若手とは言え、懲罰動議5回は現役国会議員最多。2.も「狡猾」とは言い難いが今回の詐欺的行為を見て欲しい。3.は「トリックスターの意識は究めて幼児的で初歩的であり、愚かな者たちをトリックで騙す事しか出来ない。」という記述に完全に合致する。4.は永田君が本会議場で丁髷松浪に水をかけられたのが、「お前は××(女性党首の名)と何発やったんだ」と卑猥なやじを飛ばしたのが原因であることを思い出して欲しい。

 それぞれのトリックスターによって上記4点のどれが前面に出るかが異なる。永田君の場合には、今回は2.と3.が前面に出て、1.は、「反秩序」どころか自民党の「秩序」化を促進することになった。いずれにしても”永田町神話”を分析する材料を与えてくれたことに感謝したい。

◆憲法改正の「神話」の実現へ

 家康は三成を探し出して鴨川の河原で首を刎ねた。一方小泉は鴨川で育った前原の首を取るどころか激励を続けている。それはもちろん憲法改正という自民党半世紀の「神話」を実現する"同志"と考えているからである。その触媒としてお調子者永田という「トリックスター」が必要だったのだ。「低俗なトリックスターは破壊のみをもたらし、高尚なトリックスターは破壊の後に新しい秩序をもたらす。」(上記URLから)。永田町の永田君は、「低俗」か「高尚」か、まもなく答えが見えるだろう。


自民政治家愛用料亭が店仕舞い

2006-02-25 17:07:40 | 迷言・妄言
 我ら民草には高根の花というより、別世界の赤坂の高級料亭。連想するのは与党政治家の、時代劇の定番の上の写真のようなやり取りだ。そしてそれが必ずしもそれほど的外れな連想でないというのは、この世界に「入門」したての新人の次のような言葉でも確認できる。:「料亭行ったこと事ないですよ!行きたいですよ!料亭!」。小泉チルドレン、デビューの第一声であった。

 しかしその小泉氏愛用の老舗料亭が店仕舞いという寂しいニュースである。「金龍:YKKの「拠点」が店じまい 料亭政治で一時代」(毎日新聞2.25)

 <東京・赤坂の老舗料亭「金龍」が今月末にも閉店する。かつては小泉純一郎首相、自民党の加藤紘一元幹事長、山崎拓前副総裁の「YKK」トリオが頻繁に会合を持ち、店先はそれを取材する記者であふれた。90年代のYKK全盛期を見続けた料亭の店じまいは、政界の時の流れを象徴しているようでもある。>と記事は書いている。

 すでにこのBlogでも紹介したように、あの日歯連事件のワイロ攻勢の記事によると、料亭での政治家との会合のあと、「同席した幹部が議員の背広のポケットに100万円を入れる」という手荒な「接待」をしたこともあるということなので、「料亭」に落ちるカネも大きそうだと素人は考えてしまうが、おいしいのは政治家だけでその舞台ではなさそうだ。

 自民党の大物政治家が利用するのは赤坂ではこの『金龍』のほか、『口悦』『鶴よし』『浅田』『外松』、向島では『ふたば』、銀座の『吉兆』などなどが有名という。いったいいくら使っているか政治資金収支報告では出てこないが、例えば上記日歯連の場合、02年に51回の「会合」で890万円だから、1回あたり17万円。豪勢さで有名だった亀井静香議員は『外松』だけで年間11回で330万払っていることが分かっている。タイゾー君の憧れは無理からぬことだが、すべての政治家がこの特典を享受できるわけではない。

 日本の政治の重要事は料亭で決められる。政界の大物は皆「料亭政治家」であった。国会での論議は形式に過ぎないというのは極論であろう。しかしこと人事に関しては、「その時歴史は料亭で動いた」という証言が数多くある。
 以下に紹介するのはあのナベツネ(本名知ってますか?渡邊恒雄ですよ)、の証言である。舞台はこの「金龍」だった。
「中曽根さんは大臣になりたい。僕もできることなら大臣にしてやりたい。親分の河野に頼んでも、斡旋してもらえないので、ここは僕が大野伴睦に頼むしかない、こうなったわけだ。」
 もちろん「大勲位」中曽根康弘である。この時にナベツネは読売新聞の政治部記者。中曽根とはすでに盟友であった。
 「大野伴睦と中曽根さんを向き合わせて、僕が角に座って議事進行したわけです。そしたら『きみは総裁の器だ。そうだな、よし、きみを入閣させる』ときた。それで中曽根さんは、科学技術庁長官になるんだよ。」(『渡邊恒雄回顧録』)
 年譜で見るとこれは1959年のことだ。「あの時、入閣していなければ、彼は総理大臣になっていなかったかもしれないよ。」とナベツネは語っている。まさに「金龍」から大勲位へと登り詰めたわけだ。ナベツネはこの時すでに政治記者というよりフィクサーだった。

 「料亭史観」で日本の戦後政治を語る人もある。ただ、国会の論戦と違い、正確な記録が残るはずもないので、「正史」にはなり難い。その日本政治の「本舞台」も、「往時100軒近くに及んだ赤坂の料亭も今は1ケタ台」という。不景気と政治資金の規制が厳しくなったことで、大先生の金回りが悪くなったのだろう。最も豪勢であった静香氏が自民党を追われたのも、「小泉改革」の結果だったから、小泉行きつけの「金龍」が廃業するのも時の流れだ。「今は政治家もイタリアンや焼き肉店で会合を持つ時代」(加藤紘一)というから、タイゾー君は時機を逸したのかもしれない。

 週刊誌の報道によると、早くも昨年の10月にタイゾー議員は「料亭」を初体験したという。しかしそれは日本料理屋で、しかも1万5000円のランチだったらしい。もう「金龍」には間に合わない。少なくとも「大勲位」への道は閉ざされたわけだ。

Winnyで海自から「機密」情報ネットに流出

2006-02-23 15:12:20 | 不祥事
 昨日、ホリエモンが「交際」相手の女性タレントにくれてやったノートパソコンに粉飾指示のメールが残っていたという報道があった。(毎日など。)ケチだネー、ホリエモン。腐るほど金があるんだからせめて愛人には新品を買ってやれよ。という話はさておいて、「IT企業」社長としてのセキュリティー意識が皆無だ。すでにこのBlogでも何度か(ここここ)、livedoorのIT能力の低さを指摘したが、ここまでプロ意識に欠けているとは思わなかった。こんなことでは検察の追求を待たずに不正行為メールがネットに流出するのも時間の問題だっただろう。

 プロ意識の欠如という観点からは、しかしもっと悲惨なニュースが。海上自衛隊の「極秘」情報がネットに流出したというのだ。しかもそれは恐るべき海外諜報機関の手によるのでなく、自衛隊員自身が自分の?パソコンにWinnyをインストールしていたためという、いわばオウンゴールだったようだ。

 <ファイルの内容などから、海自佐世保基地配備の護衛艦「あさゆき」(基準排水量約3000トン、乗員約200人)の関係者のパソコンが「暴露ウイルス」に感染したことが原因とみられる。>(毎日2月23日)。まだどの隊員のパソコンから流出したかは調査中という。流出した情報は、「暗号関係の書類や、戦闘訓練の計画表とその評価書など」、防衛庁では「極秘」に指定された情報という。ちなみに、防衛庁は、秘密情報を秘匿性の高い順に「機密」、「極秘」、「秘」と分類している。「機密」、「極秘」合わせて15,000件程度あるという。

 Winnyというのはインターネット上でファイルを交換するためのソフト。作者が逮捕されるという事件もあったが、現在でも誰でも無料で入手使用できる。多くの人は、自分の欲しい音楽ファイルやスケベ画像を入手するために使っている。インストールして、適当なキーワード(例えば裸 nudeとか)を設定しておくだけで、それを含むファイルを自動的にネット上で見つけてくれて、自分のパソコンにダウンロードしてくれる。
 便利なことこの上ないソフトだが、どんな悪質なファイルが自分のパソコンに侵入するか分からない。いわゆる「暴露ウィルス」というパソコンの中のファイルを勝手に流出させるウィルスにやられて、秘密のデーターを「流出」させるという事件が後を絶たない。同じ日に、栃木県警の捜査資料が、これもWinnyを使っていた警部のパソコンから流出するという事件が報じられた。(読売)。

◆危機管理の出来ない「危機管理」のお役所

 自衛隊や警察という「危機管理」のプロが、もうこれまで何度も情報「流出」事件を起こしている。(1)公務で使用するパソコンには絶対Winny(とそれと類似のソフト)をインストールしない、(2)私物パソコンでは、公務で使用するデーターを入力しない、(3)データーをどの様な形でも絶対に外部に持ち出さない。以上の3点が徹底していればほぼ完全に防げるのに、こんな簡単なことが出来ないお役所が、国民に「危機管理」をお説教するだけでなく、そのための予算を獲得して、「訓練」まで行っているというのだからホントに背筋が寒くなる。

 自衛隊からの情報流出は毎度のこととは言え、今回はいわゆる暗号情報が流出したことがこれまでと違う。<この中には、暗号の解読機とみられる「符号変更装置」の操作手順の詳細な記述があった。また、「極秘」と記された、非常用暗号書や乱数表などの書類の名称と整理番号をまとめた「暗号書表一覧表」があった。>(毎日)という。
 自衛隊というのはまあ体質もあるんだけど、不必要に情報を隠したがる。例えばミサイルの射程などは「秘」扱いのはずだ。しかし例えばこんなのは然るべきミリタリーオタク本を見れば当たり前のように(たぶん正確な値が)書いてあることだ。もっとも秘密にしなければならないのが暗号情報であることは、あの山本五十六の搭乗機が撃墜されたのも米軍に暗号を解読されていたためであることを考えただけで分かる。

◆自衛隊”幹部”は「戦争ない」論

 暗号情報を扱っていることから、今回の流出の犯人は自衛隊の幹部クラスの人間であろう。公務で使用する「機密」情報満載のパソコンにWinnyをインストールして、職務の合間にあるいは職務中にスケベ画像を楽しんでいたのだろう。「情報保全」の意識もないのだが、それ以上に自分の仕事をなめきっている。建前としては、C国やN国の「脅威」を強調して5兆円もの血税を要求しておきながら、「敵」に対する警戒心が全くない。つまり「バカ言ってんじゃねぇよ。どこの国が日本を攻めてくるってんだ。ミサイルよりもオレはハダカを見る方が好きだな」と、最前線基地佐世保の幹部が言っているも同然である。

 日常的にC国やN国の艦船を監視している幹部が、戦争なんてありっこないと思っているのだから、それは正しいのだろう。しかし国民の立場からするとこれは詐欺だ。もっと他のことに税金を投入できたはずだ。

 昨日防衛施設庁の「談合三兄弟」が再逮捕された。在日米軍基地建設でのゼネコンとの談合容疑だ。米軍基地建設には日本人の税金が投入されるが、施設庁では何と40年間も談合を続けて天下り先を確保してきたという。今初めて、米軍基地の真の存在意義が明らかになったわけだ。施設庁のお役人に天下りを保証し、ゼネコンに甘い汁を吸わせるためだという。

 額賀防衛庁長官は、施設庁を解体するという。しかし”本体”の防衛庁も、このWinny事件で、遊び半分で「戦争ごっこ」をやっているのが自衛隊幹部であることが分かったからには、真剣に解体を検討しなければならない。大事なのは、国民の安全保障であって、施設庁や自衛隊の腐敗した幹部の身分を保証することではないからである。


「イラクに行きたくない」と自衛官万引き

2006-02-22 18:07:55 | 珍事件
 自衛隊員の犯罪は(残念ながら)そんなに珍しいことではない。特に万引きのような「軽微」な犯罪は報道するほどの値打ちもないように思う。しかし今回の自衛隊員の万引きは、その理由が全く意外なものであった。それは「イラク派遣を命令されてそれがイヤだったから万引きしてわざと逮捕された」というものである。しかもそれが陸自最精鋭の第一空挺団の隊員というから二重に驚きだ。

 東京新聞2月22日によると、<陸上自衛隊第一空挺(くうてい)団(千葉県船橋市)の二等陸曹(38)が同県印西市のホームセンターで万引し、部隊内の事情聴取に「イラクに行きたくなかったからやった」と話していることが二十一日、関係者の話で分かった。>
 同空挺団からはイラクに約百七十人が参加することになっていたという。この二曹は、派遣部隊に欠員が出た場合の予備隊員だった。自衛隊は彼を21日付で停職四十日の懲戒処分にしたらしい。空挺団はすでに1月に出発しているので、この二曹は"希望通り"派遣されなかったということだ。

 政府の正式な発表はないが、サマワに宿営している陸自は、この3月から撤退を開始することになっている。だからこの陸曹も撤収の仕事をするために派遣命令を受けたわけだ。しかし軍隊が一番危ないのは撤収の時期だ。極端な話、サマワの宿営地を去る日の隊員たちは、隊舎を撤去してから退去するわけだから、その時「隠れ家」はないわけで、包囲されて攻撃されたら全滅だ。まあだからこそ、最精鋭の空挺部隊をつぎ込んだのかもしれないが、この陸曹からすれば「おれはまだ死にたくない」と危機感を持ったのだろう。

 この陸曹の年齢から考えて、入隊は20年前だ。80年代には、自衛隊の海外派遣は全く想定されていなかった。この時代には自衛隊法成立とセットで上げられた国会決議、「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」(1954.6.2参院本会議)が有効だった。「メシはタダで、無料で免許も取れる」というおなじみの謳い文句に誘われて入隊した彼の立場からすれば、海外の「非戦闘地域」への派遣はもう完全な契約違反だ。

 でも牢獄を選ぶくらいなら、自衛隊を辞めたらいいのにと不思議に思われる方があるかもしれない。しかし敵が攻めてきたときに、怖いから自衛隊辞めますという隊員が続出するようでは、そもそも「軍隊」は成り立たない。だから自衛隊法では、許可なく退職できない(特に”戦時”には)ようになっている。また”戦時”の「出動」命令を拒否しても三年以下の懲役又は禁錮刑に処せられる(自衛隊法百十九条)。

 とは言っても、実際には上記の罰則はこの二曹には適用されなかったのだ。つまり上記のことは”戦時”のこと、つまり自衛隊法の用語で言う「防衛出動」(外部からの侵略と戦う)、と「治安出動」(内乱の鎮圧)の場合にのみ適用される(これらを自衛隊員の「本来任務」と言う)。今回のイラク派遣は、法的には「イラク特措法」で行われており、これには派遣拒否に対する罰則を特に定めていない。自衛隊も内部では自衛隊法の教育などなされないようなので、この二曹にも誤解があったのだろう。

 この二曹も犯罪に走らず、落ち着いて手続きを踏めばよかったのだが、一方で派遣する側、つまり政府だが、こちらの方としては派遣拒否者に対する罰則を厳しくしようという動きがある。具体的には、「海外派兵」を自衛官の「本来任務」にしようということ。と言うのも、今回のイラク派遣も日本が進んでというより、アメリカからの”命令”によるものだ。そのアメリカはイラクだけでなく、今やイランにもちょっかいを出そうとしている。しかも国内では兵隊が集まらなくなって、アゴで使える自衛隊に熱い視線を送るようになって来た。自衛隊の海外派兵の「需要」は高まる一方なのだ。当然それはますます危険な任務になる。”甘やかして”いては逃げられる。

 これは昔からだが、自民党などには「昔は敵前逃亡は死刑だった。自衛隊法もそれくらい厳しくしないと戦えん」という議論がある。なるほど、拒否すれば死刑ということにすれば、まだ少しは助かる見込みのある「戦場」への派遣の方がましだ。
 しかしそもそも旧軍の規定を志願制の「軍隊」である自衛隊に適用するという発想に無理がある。これは一種の恐怖政治なので、不満は内攻するだけ。マグマのように貯まった不満が、ある日突然爆発して、万引きや強盗どころか、戦車を動かして国会や首相官邸を砲撃という事態になるかもしれない。そう言えばもうすぐ「2・26」がやって来る。

金持ち女性宅を「嗅ぎ分けた」空き巣

2006-02-21 21:17:30 | 変人
 冬季オリンピックで、人数だけは世界7位の選手団を派遣しながらまだ一つのメダルも取れない日本。日本は雪が降らない赤道直下の国だと勘違いしている外国報道陣はまだいい。イタリアでは、日本選手に群がる日本の報道陣の多さを笑い物にした番組まで作っているという。

 これだけ不成績だと日本人が自分たちの身体能力にコンプレックスを抱く心配があったが、それを払拭する、日本人にもこんな超人的な人物がいるという「明るい」ニュースだ。警察犬ならぬ警察「人」の嗅覚五輪があるなら間違いなく金メダルだ。

 神奈川県警は10ヶ月の間に200件もの空き巣を重ねていた46歳の男を逮捕したが、なぜかくも”効率的”であったかというと、自分の嗅覚を最大限に活用していたから。
 「ブランド品や貴金属があるので女性宅を狙った。玄関ドアのすき間などから化粧品や香水のにおいで探り当てていた」と、供述しているという(共同2月21日)から驚きだ。つまりマンションなどの廊下で鼻をクンクンさせながら、「おっとシャネルの5番。金持ちだな」と判断してから侵入するので、1件あたりの「実入り」は平均30万円と、”打率”は高い。200回連続で逮捕されなかったということは、鼻だけで留守かどうかまで判別できたのでないか。少なくとも住人が男か女か、一人暮らしか複数かは「鼻」だけで完璧に判定していたに違いない。

 よく犬の嗅覚は人間の数千倍から1億倍(臭いの種類による)と言われるが、犬の場合には臭い源についての価値判断が出来ない。この男の場合、化粧品や香水などの銘柄、つまり持ち主の経済力を正確に嗅ぎ分けられたようだ。恐るべき能力である。こういう人がマンションに一人居ると、ガス漏れなどはいち早く関知してくれて便利であるが、臭いだけで自分の生活水準を丸裸にされるのもイヤだ。

 どうしてこの”警察犬男”が逮捕されたのか記事は何も触れていない。空き巣が香水の臭いの強い部屋ばかりを荒らすのに気付いた警察が、警察犬を投入したのでないか。臭いを手がかりに犯罪を成功させていた男が、その臭いによって足がついたのだ。

 男は当然無職であったが、この能力活かして更生して欲しい。今は、臭気判定士(Olfactory Measurement Operators)という国家資格がある。全国で24,000件以上も発生している悪臭苦情を解決するために、工場・事業所からのにおいを測定するのが主な仕事である。悪臭苦情というのは、機械で測定するだけではダメなので、必ず人間が客観的に判定しないといけない。
 もっともこの先生の場合敏感すぎて、例えば満員電車など「とても人間の呼吸できる環境でない」と判定してしまうだろうが。そうだねー、この男も昔会社勤めをしていたけど、夏の満員電車が我慢できずに辞めたのかもしれないね。腋臭よりも、安物の香水の方が恐ろしい。我々の平凡な鼻にも拷問なのだから、この「臭気判定士」は電車の中で卒倒していたに違いない。

公費旅行の市議、海外で泥酔して「強制送還」

2006-02-21 11:33:08 | 不祥事
 昨年の国政選挙だったか、初当選したある新人議員が、「議員ってすごいなぁ。グリーン車乗り放題ですよ」という”初々しい”コメントをして話題になった。このone of「コイズミチルドレン」、今でも感動しながら新幹線に乗っておられるのだろうか。センセイ、初心を忘れないでください。
 しかし議員の特権はこんなものではない。国政だけでなく地方議員も楽しめる特権と言えば、無料海外旅行の特典である。まるでテレビのクイズで優勝したようなこの特典は、通常「視察旅行」と呼ばれるが、堅苦しく考える必要はない。名所をめぐり、夜は飲んで騒いで、旅行社のパックツアーよりも自由度は高くて豪勢である。

 そのスポンサーはだれかと言えば、もちろん我々が汗水垂らして稼いだカネ、血税である。さすがに格差拡大で「負け組」の生活が苦しくなるに連れて、「いったい先生たちは何を”視察”してるんだ」という声もチラホラ出て来はじめた矢先、あまりにも象徴的な不祥事が起きた。

 姉妹都市への「視察・親善旅行」で、市議が酔いつぶれて外国で乗り継ぎ便への搭乗を拒否されて、日本に”強制送還”されるという”国辱もの”の不祥事を起こしたらしい(毎日新聞2月20日)。この大分県のB市の58歳のA市議(S民党)は、NZの姉妹都市ロトルア市への公式訪問(市議5人、市職員6人、市民10人)に旅立つ大分空港ですでにでき上がっていたらしい。
 まず大韓航空のソウル便に搭乗したが、機内でもさらに聞こし召されて、もう完全な泥酔状態。
「機は午後7時20分に韓国・仁川空港に着き、A市議は車イスで降ろされた。同9時半の大韓航空ニュージーランド・クライストチャーチ行きに乗り継ぐ予定だったが、大韓航空はA市議の搭乗を拒否。一行はA市議と分かれ、予定通り6日間の公式訪問を終え17日、帰国。A市議は帰国後に入院した。」(毎日、原文は固有名詞明記)

 「強制送還」は正解だ。姉妹都市でこの醜態を見せられたら、何しろ市民の代表の議員なんだから、B市民が同じ目で見られてしまう。<家族は「申し訳ない」と、キャンセル料を含めた費用の全額弁済を市に申し出ている>というが、返還は当然、公費で酔っぱらいを送迎してどうする。問題は、この公費による旅行が最初から物見遊山であったことを証明していることにある。誰が大事な出張の朝に酔っ払って乗車しますか。

◆知られざる「視察旅行」の費用実態

 国、都道府県、市町村を問わず、こういう議員の公費での「視察旅行」は例外なく行われているのだが、いったいそれにどれだけの費用がかかっているのかは通常公表されない。これまでは意識を持った人が、それぞれの自治体に対して「監査請求」をして資料を手に入れて初めてその実態の一端を知ることが出来る。
 例えばここに「長野県議会議員平成8年度から平成12年度の海外視察実施状況」の資料がある。この資料、9年度までは費用の記載がない。一例として12年度の5月に行われた「欧州総合行政視察」は5名の県会議員が参加しているが、総費用は8,474,035円。一人当たり約169万円である。ひょっとしらセンセイのお土産代も含まれているのではと思うほどカネがかかっている。

 こういう場合、ほとんど例外なく「観光地」を訪れているのだが、ちゃんと言い訳も考えている。「現地の観光産業の実態を調査し、本県の観光産業育成に資する」というような決まり文句。それならちゃんと報告書は出すのかというと、そこは旅行社の方で書いていてくれるというのだから議員としては至れり尽くせり、納税者としては詐欺にあったようなものだ。そしてこれも例外なくと言っていいのだが、その「視察」が地方行政に具体的に活かされたという例を知らない。

 さすがに最近では納税者が、これらの公金による物見遊山に対して補助金の返還を要求して、勝訴するケースも出ているが、全国的にはまだまだ例外だし、国政レベルでは完全に”遊び放題”である。参考までに、2004年のお盆休暇を活用した「海外視察」の場合、衆参合わせて約100人が出かけて、経費は衆院約3億2000万円、参院約2億円の総額5億2000万円だったという。
 B市の運営するBBSにはさすがに抗議の書き込みもあるが、B市の人口からすると少数だ。「観光都市」だから、公費旅行も物見遊山で行ってもらった方が「実感ツアー」になってよろしいということなのだろうか。それにしてもA市議のように最初から泥酔状態では、何の記憶も残っていなかったはずなのだが。あっ、そうか!こういう時に旅行社で用意してくれた「報告書」を使うんですね。

バットマン遂にアルカイダと「直接対決」

2006-02-20 15:14:11 | 変人
 それは本当に痛ましい事件だった。大金持ちの両親の愛情を受けて何不自由なく暮らしていた少年ブルース・ウェインは、観劇の帰りに自分の目の前で両親を強盗に殺害されてしまう。六歳の時のことだ。その事件が少年の心に与えたトラウマの大きさは計り知れない。と言うか、少年は「悪」に対して生涯を賭けて復讐することを誓ったのである。あらゆる格闘術や犯罪学を学んでいるうちに、現実と幻想の区別がつかなくなったのであろう。学芸会衣装の余り物のような奇妙なコウモリ?を真似たコスチュームを纏い、「秘密基地」バットケイブという陰気な地下の隠れ家を造り、どんな暴走族も尻込みするような奇怪な改造車バットモービルに乗って「悪」を懲らしめる秘密の探偵業を始めたのである・・・そう”正義オタク”バットマンの誕生である。

 『バットマン・ビギンズ』(2005年)の描くブルース・ウェインの過去は辛い話だが、日本人の感覚からするとバットマンのオタクぶり、そして50を過ぎてもあのコスチュームで走り回る姿を見せられるのは、もう辛いというより痛々しいとしか表現のしようがないのだ。
 そのバットマンが定年退職どころか、新たな敵、それもこれまでのジョーカーとかキャットウーマンのような学芸会的なキャラクターでなく、現実の敵、世界最強のアメリカ軍さえ苦戦しているあのアル・カイダと戦うことになったと、イギリスの高級紙「ガーディアン」などが伝えている。
 「なんでアルカイダのような悪党がいるのに、(架空のキャラクターの)リドラーなどをバットマンが追いかける必要があるんだ」というのが、バットマンの劇画作者のフランク・ミラー氏の言い分である。来年完成予定のこの"Holy Terror, Batman"という200ページの劇画製作の意図は、「大衆は今我々は誰と戦っているのか忘れている。それを思い出させるため」と言うから、もう「ぶっちゃけた話し、純粋なプロパガンダ作品」(ミラー氏)。「対テロ戦争」で手にしたバブル人気がしぼみがちなブッシュ大統領に対する最大の援軍になるに違いない。
 ちなみにバットマンもアルカイダの”首領”ビン・ラディンも大金持ちの息子だ。奇遇だが、「金持ち喧嘩せず」の日本のことわざに反する夢の富豪対決になるわけなのか。

 それにしても劇画とは言え、純粋な娯楽作品に「現実の敵」が登場しても構わないのだろうか。実は誰でも知っているあのスーパーマンは、第2次大戦中にヒトラーを「懲らしめていた」というのだ。アメリカ人にとってはアル・カイダと言うかつまりビン・ラディンはバットマンに登場するジョーカーとかペンギンなどと同じ”純粋な”悪人だということだ。いや、バットマンの中では登場する悪人たちはなぜ悪の道に入ったか説明がある(例えばキャット・ウーマンは元娼婦とか)が、もうアル・カイダ達は同情の余地はないただただ殲滅の対象としての「悪」なのである。

◆「バットマン」国家アメリカ

 漫画家の里中満智子氏によると、1970年代に日本のマンガはアメリカ人に「悪と正義の区別がハッキリしていない」と批判されたそうである!お伽話的な米国のコミックスに対して、日本のマンガはいわばドストエフスキー的な世界、つまりキャラが複雑すぎると文句を付けられたのだ。そう、「鉄腕アトム」が時に自分のしていることに悩んだり、敵役のロボットがふと子供を助けたりすることがアメリカ人には我慢できない。「正義」が悩んだり、「悪」が善を行うのを見るともう脳味噌が引き裂かれたような感じがするのだ。これを理解しないとアメリカ人の国際社会での行動にはついていけない。

 そう、それは「庶民」だけでなく、知識人層でもそうなのだ。インテリと呼ぶのはちょっと憚られるが、現在のブッシュ大統領でも、その演説、例えば1月31日のいわゆる「一般教書演説」では彼はこう言っている。「これらの邪悪な攻撃者を放っておいたとしても、彼らの方は我が領土に戦場を移してくるだけです。退却に平和はありません。我々は決して悪に屈服することはないのです(拍手)」。これで大統領があの黒い耳付きの頭巾をかぶれば完全にバットマンの世界である。アメリカ自身が”正義オタク”そのものなのである。
 「いや、テロにも原因があって、今の国際社会の矛盾が・・」と言い出すと、「貴様はアル・カイダか」と命まで危なくなる。バットマンは原則「悪人」達を殺すことはないのだが、米軍の場合は、単に「アルカイダの集まっている」と噂のある建物の近くにいただけで「精密誘導」爆弾で、子供や女性まで吹き飛ばしてしまうのだから、物騒極まりない「オタク」だ。

 アメリカを「バットマン国家」と呼ぶことにブッシュ氏も異議を唱えることはあるまい。しかしバットマンとアメリカ政府の決定的な違いだけを最後に指摘しておきたい。
 サダム・フセイン、ビン・ラディン、オマル師、と言えばアメリカの不倶戴天の敵であることは言うまでもない。しかしいずれのキャラクターも一時期はアメリカの友人で、支援を惜しまなかった時代があった。サダム・フセインをイラン・イラク戦争でアメリカが応援していた時代、ラムズフェルド(現国防長官)が1983年には特使としてサダムと握手をしている映像は何度も日本でも放映された。ソ連のアフガン侵攻と戦っていたイスラム戦士たちを応援する中で、ビン・ラディンやオマルが台頭してきた。つまり「敵の敵は味方」という論理で、これらの「悪人」達と手を結んできたのがアメリカ外交である。

 バットマンにはその様なことは皆無である。バットマンは純粋な正義オタクなので、一時的にせよ「悪」と同盟を結ぶことはない。キャットウーマンは?と問う人があるかもしれない。彼女は、バットマンと知り合って更生?して義賊になったが、バットマンと「男と女」の関係になったわけではない。
 
 だから彼女を、「枢軸の悪」から「一の子分」に変身した日本になぞらえて理解することは間違いと言えよう。第一彼女はその後バットマンシリーズから飛び出して、2004年には独立した「キヤットウーマン」という映画として登場した(と言うか笑い物になった←2005年ラジー賞つまり最悪映画の最多7部門受賞)。まだ「独立」を果たしていない日本に例えるのは失礼というものである。

「ホリエモンメール」で与野党泥仕合

2006-02-19 18:33:43 | 詐欺
電子メール時代の偽装と反偽装

 民主党が暴露した「ホリエモン→武部二男メール」が世間を賑わせている。
 メールといういかようにでも偽造できる代物だけで天下の自民党幹事長を追い落とせると考えているはずはない。もっとすごい決定的な証拠があるに違いないと思っていた小生の予想を裏切って、自民党からの逆襲に反撃する「証拠」として民主党側が公表したのは、メールそのものというより、プリントアウトしたもののFAX。しかも戦中世代の方には郷愁を呼び覚ますであろう「墨」塗り箇所が多数。

 この「メール」を提供した人物が「フリーのジャーナリスト」というのがまたいかにもである。しかも国会でこれを暴露したのが、東大卒で元大蔵官僚という肩書きとは思えないようなお調子者(国会で丁髷松浪に水をかけられた)のN代議士だったから、「真珠湾攻撃」を受けた自民党の方が即座に立ち直って逆に優勢になった。ごろつき「ジャーナリスト」がわざと野党議員にガセネタを掴ませて、政治的失脚を狙うということは実はそんなに珍しいことではない。

 まあそうは言っても、武部ファミリーがクリーンであると信じている政治家やジャーナリストも敵味方問わず皆無なので、自民党が「国勢調査権」の発動に同意するわけでもなさそうだ。今週には、自民党が民主党への”戦略爆撃”を控える代わりに、民主党も通常国会の「4点セット」を撤回することで手打ち-痛み分けということになるのでないか。永田町の論理は我ら民草には到底理解できないものだから何を書いても所詮ごまめの歯ぎしりだ。

 しかし「政治家の××に1億円振り込んでおいてね」なんてメールを偽造にせよ生涯送る可能性のない我ら庶民にも、この事件から学ぶ重要な教訓がある。それはメールの偽装をいかに防ぎ、いかに見破り、いかに否定するかということだ。
 ワイロの話ではない。例えば、誰かが「あなたが書いたメール」を持ち出して、第三者から金品をせしめるかもしれない。あるいはあなたを攻撃したり陥れるために、メールを「証拠」に裁判を起こすかもしれない。メールの偽装を見破ることと偽装を防ぐ知識は表裏一体の関係にある。メールの真偽を見分けるポイントを整理してみた。

◆内容とスタイル
 従来の手書きの手紙では、当然筆跡の鑑定が決定的であるが、メールには関係ない。そうなると、文章そのもの、内容や文体によって真偽を判定することになる。
 例えば今回の「ホリエモン」メールについては、ライブドア社員から、堀江のものとはスタイルが違うという指摘がある。例えば彼はメールの最初に「堀江です」と書くのに、件のメールは最後に「堀江」という署名があるなどである。
 またもう少し長いメールの場合は、表記の違いや文体などによってその人かどうかある程度判断できる場合がある。例えばその人は「その人」をいつも「そのひと」と変換しているなどである。
 もちろんホリエモンメールを頻繁に受け取っている人なら表記についても偽造は可能だが、逆にそうでない人は必ずこの点でつまずいてしまう。

◆メールの「ヘッダ」情報
 通常のメールソフトでは特別の操作をしないと表に出てこないが、メールソフトやサーバーがメールの頭にくっつける送信についてのサーバーや時刻等の情報である。Return-Path: Received: from Message-ID:Return-Path: 等々の記述である。今回の民主党の公表したメールには一切このヘッダ情報がなかった(発信時刻のみ)。例えばどのメールソフトを使った(ホリエモンの場合はEudoraに違いない。このメーラーの製造会社を買収したのだから)まで黒塗りはおかしい。この情報だけでも、あなたのメールが偽造された場合に、それは自分の使っているメールソフトと違うという形で反証することが出来る。

 もちろん「ヘッダ」というのも所詮は電子情報なので、編集加工は自由だ。しかし経由サーバーなどの情報で辻褄の会わないことが出て馬脚を現しやすい。メールの真偽はまずヘッダ情報の確認が第一なのに、民主党は「ジャーナリスト」にそれを提出させなかったのが躓きの元だった。

◆電子署名ー暗号化

 電子メールはいわば葉書。途中で傍受されたら簡単に全文を読まれてしまう。最近明らかになったように、「テロ対策として」アメリカ政府(正確にはNSA国家安全保障局)は「疑わしい」人物数千名のメールを「盗聴」(盗視?)しているという。読まれてまずいメールは暗号化するのが常識である。どこの国でも大昔からそうだけど、いわゆる公電(外務省の在外公館との文書のやり取り)はすべて暗号だ。

 ところがこの「ホリエモンメール」は暗号化もせずに平文で送っているようだ。どこの世界に「シークレット」とハガキに書いてワイロの振り込みを命令するバカがいるか?この点でも信憑性は薄い。
 
 ただホリエモンへの”アドバイス”に書いたように、ライブドアの「IT化」は意外なほど立ち遅れている。あんなヤバイことを次々とメールで指示する割には、メールの消去がシステマティックでなかった。検察情報としてメールの中味がリークされていることから、どうも暗号化せずにヤバメールを送っていたこともあったようだ。この一事だけでも、livedoorは一流の「IT企業」だとあこがれていた人の幻想を打ち砕くに足るお粗末さだ。

 自分はホリエモンと違って犯罪を犯さないから、メールを警察に読まれても大丈夫だと思っている人は勘違いをしている。暗号化というのは電子署名をすることだから、これは間違いなく自分が作成したメールだと証明できる利点を忘れている。つまり偽装メールを完全に防げるのだ。
 これからの時代はメールが主要な通信手段であることは言うまでもない。このセキュリティに無関心、つまり大事なメールを平文で送る人は、買い物の時に車にロックをしないのと同じだ。
 お使いのメールソフトに暗号化プラグイン(世界中で使われて実績のある"PGP"なら無料だ)を組み込んで、暗号通信が出来るようになるまで、1時間もかからない。苦手な人は出来る人にインストールと使い方の指導を頼んででもやってもらったほうがいい。


チェイニー友人誤射でテレビ出演

2006-02-17 12:22:32 | 不祥事
 日本語には全く相当する単語がないのだけど、米語には"trigger-happy"という奇妙な言葉があり、結構普通に使われる。直訳すると「引き金で幸せ」ということだが、Websterの説明によると、「1.銃器の取り扱いについて無責任なこと:特に、目標をちゃんと確認せずに撃つ傾向のあること」。あっ!、それは「バカボン」のお巡りさん!いえいえ、天下のアメリカ合州国の副大統領のことです。

 ウズラと間違えて友人を散弾銃で撃ち抜いたディック・チェイニーDick Cheney副大統領。事件の起きた2月11日以来マスコミから逃げ回っていたが、16日になってようやく米Foxテレビの単独インタビューに登場した。
 しかしこのインタビューを最初に伝えた共同通信の記事には驚いた。<副大統領は、ウズラを狙ったつもりで撃ったのに友人が倒れているのに気づき「何でここにいるんだ」と声を掛けた>(2月16日)。えー?これって、「馬鹿野郎!、そんなとこにいるから撃たれるんだ」って意味でしょう。いくら"trigger-happy"のチェイニーでも・・と思って、ホワイトハウスの発表したこのインタビュー全文を読んでみた。該当箇所はこうだ。
Q What did you say?
THE VICE PRESIDENT: Well, I said, "Harry, I had no idea you were there." And --
 つまり「君がそこにいるなんて知らなかったよ」だ。先入観に基づく共同通信の誤訳だろう。

 しかし報道機関が間違うのも無理からぬ所だ。チェイニーほど"trigger-happy"という言葉が似合う人間も世界にいない。銃器業者の利権を代表するロビー団体「全米ライフル協会NRA」の集まりでは頻繁に演説して(たぶん多額の献金を受けているのだろう)、銃規制の動きを罵っている。もちろん自身も銃は大好きで、上のような狩猟に興じる写真が残っている。もちろん相手はウズラとかスズメなどの「生物的弱者」なので、弱い者イジメ好きと言ってもいい。
 弱い者イジメといえば、チェイニーの”特技”は戦争だ。国防長官だったこともあるが、そもそもイジメ戦争、いやイラク戦争の推進者だ。世間ではネオコンとも呼ばれる。しかも彼にとっては戦争は趣味でなくビジネスなのだ。
 彼が経営最高責任者だった(1995-2000の間)ハリバートンHalliburton社は、イラク戦争後の「復興」事業で大儲けしたと問題になったこともある。Websterの"trigger-happy"の説明の二番目にはこうある:「戦争を引き起こすような事態において無責任に傾きがちな、態度が過剰に好戦的な。アハハハ・・この辞書編集者はチェイニーを念頭において原稿を書いたな。

 チェイニーの身分は一応副大統領だから、大統領を助けて・・と思いがちだが、実はブッシュとは別の側近を侍らせて別のチームを組んでいるといわれている。そしてその行動も”ステルス性”を重視してマスコミを遠ざけている。日本で言えば”闇将軍”だ。その「闇」の一端が間抜けな行為で明るみに出たので、米マスコミ、特にcartoon風刺画作者はもう大喜びだ。「情報機関の能力不足だ」「なに、これはcollateral damage随伴被害に過ぎん」「自然保護論者を撃ったつもりだった」等々言い訳を考えるチェイニーを書いたマンガなど、もういくらでも描けてしまう。

 多くのボディガードや「医療関係者」を引き連れた大々的な狩猟のその獲物は何と---ウズラquailだったことも滑稽さに輪をかけた。ん?・・・副大統領、クウェールと言えばどこかで聞いたような・・・あっ!思い出した!「アホのクウェールQuayle」。そうだブッシュ(父)大統領時代の副大統領。あれは1992.6.15のことだ。この日付は2006.2.11と共にアメリカ副大統領にとって「暗黒の一日」(チェイニーは2.11を「人生最悪の日」と呼んでいる)として歴史に残るに違いない・・・

◆"potato"のスペルを知らなかった副大統領


 その日クウェールはニューヨークの託児施設を訪問した。政府の補助金が出ている、親が仕事で帰宅しない子供の世話をしている施設だ。授業はカードを見せて、その綴りを黒板に書くという極めてシンプルなものだった。「はいこれは?」、「ボク分かる」と手を上げたのが、ウィリアム・フィゲロア君12歳。日本で言えば小6だから、黒板に"potato"と書くのも馬鹿らしいほど簡単な問題だった。その瞬間の写真が上(副大統領は左端)だ。黒板の横に立って真剣に眺めるクウェール。熱心だ。感心だ。
 しかしこの写真が撮られたその瞬間、副大統領が台本にない「介入」をした。
「うん、なかなかいい線だ。でも君は何か忘れてないかい?最後の"e"を」。ウィリアム君はちょっと面食らったような表情を浮かべたが、すぐに"potato"に"e"を付け加えた。その時教室にいた校長をはじめとするお歴々も、この副大統領の”適切な指導”に拍手を送った。クウェールも満足の笑みを満面に浮かべていた。

 そう、クウェールはその時には全く事態を掌握していなかったのだ。授業が終わってマスコミが彼を取り囲んだ「副大統領"potato"ってどう書きます?」。何のことだ?なぜそんなことを聞くんだ。

 坂田利夫と聞けば日本では「ああ”アホの坂田”」と誰でも言う。その時までには、なぜかアメリカのマスコミでは「アホidiotのクウェール」という評価が定着していた。実際に会った人の話では、「そんなバカでもないよ」と言うのだが、マスコミというのはステレオタイプで報道する。クウェールの「アホネタ」ばかりを追っていた。そこへ"potato"綴り事件である。ネタのためには生みの親でも容赦しないマスコミが、クウェールに情けをかけるはずもなかった。ニュースメディアは繰り返し繰り返しこの瞬間の教室の映像を流し、通信社は「副大統領potatoが書けず」と全世界に打電した。cartoonistsは狂喜乱舞して数え切れない風刺画が量産された。

 「アホのクウェール」はいわば絶対的真理になってしまった。その数か月後親分のパパブッシュは落選した。"e"の一文字がクウェールの人生だけでなく、アメリカ史を変えたと言えるかもしれない。

 しかしここでスポットライトを、世界のアメリカ副大統領を知的に打ち負かした12歳のウイリアム君に切り替えてみよう。この滑稽なニュースが全米のみならず全世界を駆け巡っていることを知ったお父さんは、次の日散髪に出る息子にマスコミとの対応を注意した。お父さんは共和党の支持者だった。「アメリカ副大統領に失礼になるようなことを喋ってはいけないよ」。
 "potato"を正確に綴るという高度な知的能力を持つウィリアム君はもちろんこの言いつけを守った。
 「もちろん彼の方が間違っているって分かってたよ。でも副大統領だから黒板に戻ってeを付け加えたんだ。席に戻ってから辞書を引いてみたよ。やっぱりボクの綴りが正しいって確認したんだ」。自分の目で事実を確認する! これはイラク戦争前に諜報機関の情報を鵜呑みにしたチェイニーやブッシュにも見習って欲しい基本事項だ。
 ウイリアム君は「敗者」クウェールへの思いやりも忘れなかった。「もちろん副大統領がバカidiotでないことは知ってるよ」。しかし次の一言は、クウェールとアメリカ政治に対する最終兵器になる言葉であることは12歳の少年には分からなかったのだろう。「でも彼はもっと勉強する必要があるね。副大統領になるには大学に行かなきゃダメなの?」

 もちろんこの12歳のウイリアム君の方が、副大統領どころか大統領になるにも知的にはふさわしいことは言うまでもないのだが、だれでもこの”神童”がどう成長したか知りたいだろう。あの"potato"事件から5年後(1997年)の同君を取材した記事を見つけた。17歳のウイリアム君は、ハイスクールを中退して、自動車店でフリーターをしていた。そしてもう子供もいたという。

 もう25歳になっているウイリアム君は今どうしているのだろう。そう「副大統領になるには大学に行かなくていい」のだからまだまだクウェールを超えるチャンスは開けている。しかしたぶんチェイニーのような大金持ちになってクウェール猟を楽しむような身分にはなれないだろう。アメリカンドリームの時代は終わり、(日本も小泉ー竹中アメリカン路線で同じになってしまったが)、イギリスのような身分社会に移行しつつあるからだ。

「山崎えり子」事件に判決

2006-02-16 21:23:16 | 詐欺
 直接個人を傷つける行為よりも、「お上」のつくった制度に刃向かう行為をより厳しく罰するのは権威主義的国家の特徴だが、日本の法律にもそういうところがある。徳川時代の名残と言ってもいい。例えば酔っぱらい運転で人を殺しても、「反省しているなら刑務所行きは許してあげる」ということも珍しくないが、お役所の書類に嘘を書いた「だけ」で懲役刑を食らう人もいる。
 あの「山崎えり子」(仮名)事件に判決(共同2月16日など)。懲役1年6月。罪は「公正証書原本不実記載・同行使」。この罪名をそらで言える人は法律の専門家だ。分かりやすく言うと偽名をお役所の文書に書いてしまったということ。名義の偽装だ。
 「被害者」はお役所だろう。3年の執行猶予がついているが、感覚的にはえらく重いなという感じ。もちろん「山崎えり子」を庇っているのでない。「本来の罪」は問われずに、「被害者のない」罪状だけが取り上げられたことが釈然としないだけだ。

◆「浪花節」では説明にならない

 判決直前の15日に毎日新聞が「<偽名人生>苦難の末…決別誓う 人気エッセイストに判決」という浪花節的な記事を載せている。
 「山崎えり子」の「苦難」とは何か?
<法廷での供述などによると、山崎被告は幼いころ、母親と父親が相次いで蒸発して親類に預けられた。成人後、給料日になると親類から無心された。逃げようと転居しても、転居届を足掛かりに追いかけられた。「本名で申告すれば親類に住所が知られると思った」。>(毎日)
 だから知人から(借金を肩代わりする代わりに)借りた性を使い、内縁の夫との婚姻届を”偽装"した。「山崎えり子」は法廷で「本名は捨てたほうが楽だと思っていた」と供述したという。

 この事件の最初の報道では分からなかった偽名の理由については、半分は分かってきた(ただ、親類から逃れるというなら、なぜマスコミに露出していたのか辻褄が合わないが)。確かに、幼い頃から親類に養われるという肩身の狭い思いをしてきて、自分を守るために嘘をつかなければならず、「偽装」が人生の一部になってしまったという気の毒な面はある。同じ時に共犯で懲役刑を宣告された内縁の夫も「彼女がふびんで、何でもしてやろうと思った」と法廷で号泣したそうである。

 しかし裁判は、したがって「山崎」本人も、実はもっと重い罪、つまり”公人”として、ベストセラー作家として何百万の読者を欺いた行為については、言及もしていないし、謝罪反省一切なしだ。彼女が著書で紹介していた経歴は一切が嘘だった。さすがに「不幸な生い立ち」だけではこの「経歴偽装」は説明できない。「山崎えり子」のデビュー作は80万部を売ったという「節約生活のススメ」だったが、あの姉歯建築士は「鉄筋節約のススメ」を実践した理由として「妻の病気治療費」をあげていた。どちらも偽装の大家だが、どちらも正当化の理由が理由になっていない。「山崎えり子」にいたっては説明さえないのでないか。

◆出版社には「ヒューザー」と同等の責任

 このBlogに書いた「山崎事件」の記事に寄せられた多くの「被害者」のコメントやトラバからも、その罪の重さが分かるが、「裏切られた」という感情は法的な救済は難しい。ただこの経歴偽装には出版社の編集者が片棒を担いでいるはずだが、責任を転嫁して逃げている。例えば、「節約生活ー」を出版した飛鳥新社は「山崎えり子」逮捕の後以下のようなコメントを出しただけである。
 この度「節約生活のススメ」の著者、山崎えり子さんが刑事事件の被疑者として逮捕されましたことは、当社として、大変遺憾なこととして受け止めております。
当社より出版された「節約生活のススメ」は・・・、事実上の絶版状態となっております。
(中略)
 なお、山崎えり子さんとの連絡は、現在とれておりません。
2005年11月28日

 もう連絡は取れたのだろうか。「山崎えり子」と出版社の関係は、ちょうど姉歯とヒューザーの関係に等しい。あのヒューザー小嶋社長でさえ、弁償すると言っているのだが、本を売って儲けた出版社で返品・返金に応じると表明している社はあるのだろうか。
 「山崎えり子」の最後の本が、冒頭に掲げた「家計簿」?だ。2006年版だからこれを使って「節約生活」を送っている人はあるのだろう。「山崎被告は涙を流して偽名人生との決別を誓った。」と毎日新聞は結んでいるが、「偽装人生」にはまだ決着はついていないことには触れていない。こんなことでは、山崎えり子・姉歯秀次共著『偽装と節約のススメ』が出版される日も近いのではないか。

実の親探して銅メダル:韓国生まれの米選手

2006-02-16 16:44:42 | 快挙・怪挙
 冬季オリンピックが始まってから、毎深夜に日本選手の「活躍」についての”悲報”が母国に届く。冬季五輪史上最大の派遣選手112人。このままでは史上最低タイのメダルなしに終わる可能性も出てきて、早くも「戦犯」探しの論議が高まっている。「期待高すぎ?環境悪すぎ? 日本苦戦、届かぬメダル」と16日付朝日新聞の記事。

 何がいけなかったのか?もちろん原因は一つではないが、モチベーションの低さがその一つであることは間違いない。「オリンピックを楽しんで来ます」。もちろん、マスコミからのプレッシャーをごまかすための決まり文句だが、「冗談じゃない。このオレを見ろ。」と”母を訪ねて三千里”の選手がいる。

 米国の男子モーグル銅メダルのトビー・ドーソンToby Dawson選手(上写真向かって右)、「27歳」。読売新聞16日付は、「実の親捜す!米ドーソン、気迫の銅…男子モーグル」という見出しの記事で、「僕の顔をしっかり見てくれ――。15日(現地時間)のトリノ五輪フリースタイルスキー男子モーグルで、銅メダルに輝いた米国のトビー・ドーソンは、ゴールした瞬間、ゴーグルを外した。」と書いている。

 1978年11月30日が「誕生日」になっているが、実はこれは韓国の警察署前に捨てられていた幼い後の「ドーソン」ちゃんが児童養護施設に引き取られた日付だ。「ドーソン」君は「4歳」の時に、米・コロラド州でスキー教師をしていたドーソン夫婦の養子になった(その時の写真が上左)。アメリカに連れていかれる直前に施設で最後に写真を撮った。「この子が将来この写真館の壁に飾られるよう」と夫妻がアメリカでトビーを撮影するため連れていったときに、ひどく怯えて泣きわめいた。「今度もまた飛行機で遠くに連れていかれると思った」。

<14歳まではアルペンスキーやアイスホッケーをしていた時期もあった。1メートル68という小柄な体格を考え、モーグルに専念するようになり、頭角を現した。
 「実の両親を捜したい」。世界を転戦するワールドカップ(W杯)に出場するようになって、ドーソンはそう思うようになった。「だから、絶対に五輪に出たい」。>(読売)

 確かにオリンピックは自分の顔を世界に、ドーソン選手の場合は韓国に見せるまたとない機会である。「ぼくの顔と同じ人を知りませんか」というわけだ。ドーソン選手が施設に入る前の唯一の記憶というのが、母親が自分のために誕生会を開いてくれたことだという。レンガの上に外したドアをおいてその上に韓国料理を載せたというから、貧しかったには違いない。そして恐らくこの時にすでに父親はいなかったのではなかろうか。
 あのジョディー・フォスターJodie Fosterのように「父親なし」で二人の子供を育てている人もいるが、70年代末の韓国では女手一つでは経済的に不可能だと思ったのが、"foster parents"に子供を託さなければならなかった理由だろう。

 「有名人-”親戚”増加の法則」の通り、韓国では<「実は、たくさんの人が、自分が親だと名乗り出てきた」とも明らかにした。>(読売)という。しかし恐らく本当の親(たぶんいるとしても母親だけ)はまだ出て来ていないような気がする。今ではDNA鑑定が使えるので、親子関係の確認はほぼ絶対的だ。イタリアでの「捨て子ボックス」開設の話を取り上げたばかりだが、一度捨てた我が子に対面しやすくするシステムも必要なのかもしれない。

 全く思いがけないオリンピックの「利用法」だが、こういうことはあっていい。将来のオリンピック選手にするためには、我が子を捨て子にせよというのは論外だが、あまりにも「幸せすぎる」アスリートは結果も感動も残せないのは間違いない。

母親が息子の交通事故の身代わりに

2006-02-14 12:05:12 | 珍事件
 子供が友達の家でおもちゃを盗んで帰りました。お母さんは叱るどころか「うまく盗んで来たね」と褒めました。この子供は長じて大泥棒になり、捕まってとうとう刑場へ引かれるその時に、野次馬の中に自分の母親を発見しました。「お母さん、お話があります」と母親を呼び寄せました・・・

 このイソップの寓話を思い出した。
 母親が自分の息子を庇ってひき逃げ犯として出頭して罰金刑を受けていたが、事件から三年後、真犯人はその長男であることが判明。長男はひき逃げ容疑で、母親は犯人隠匿容疑で逮捕されたという事件。
 <当時、長男は大学進学を控えており、母親は「息子がかわいそうで、身代わりに自分が起こしたことにしようと思った」と供述しているという。>(朝日新聞2月13日) ある意味そんなに珍しい事件でない。この事件の特異性は、その発覚の経緯だ。

 事故を起こしたときにこの親子の他にその次男も同乗していた。<05年12月、事故車両に同乗していた次男が別の事件で警察の事情聴取を受けた際に「これを機会に自分でも悪いと思っていることを話します。03年に事故を起こしたのは母ではなく、本当は僕の兄です」と話し、身代わりが発覚した>(朝日)
 次男はいったい何の容疑で「事情聴取」を受けたのか、触れている記事は見当たらなかったが、とにかく次男の中にはずっと罪の意識がくすぶっていたことは間違いない。

 イソップの話では、息子の最後の言葉を聞こうと耳を近づけた母親の耳たぶを息子が噛み切ってしまう。母親は悲鳴を上げて、「この子はなんてことをするんだい」と叫ぶと、息子は「あんたはなんでオレが最初盗みをしたときに叱ってくれなかったんだ。そうすれば今日死刑になることもなかったのに」。
 どうも自分の悪行を母親に責任転嫁しているような気もするが、「悪」を認めない限り更生することはないという教訓だ。この長男も、このままではまた交通事故を起こして、同乗していた妻に、「おまえがやったことにしてくれ。飲酒運転がバレたら会社は首だ。そうなればお前も困るだろう」と罪を被ってもらうことを繰り返していただろう。

 このほかに気になることがこの事件であと二つ。
 ひき逃げにもかかわらず、この母親最初の刑は罰金40万円だけ。交通事故犯罪の刑が異常に軽いのは、すでに指摘した「副検事」制度の不都合から来るのだろう。
 もう一点は、最初この事件を捜査した富山県警魚津署が、「当時の捜査に問題はなかった」と全く反省していないことだ。日本の警察は捜査ミスがあったとき必ずこう言う。間違いや「悪」を決して認めないのだ。まさにあのイソップの母親だ。警察が大泥棒養成場になってはいけない。耳を食いちぎられる前に、批判の声に耳を傾けなければ。

僧侶が労組を結成:長野

2006-02-13 14:28:47 | 快挙・怪挙
 「自由民と奴隷、貴族と平民、領主と農奴、ギルドの親方と職人、つまり抑圧するものと抑圧されるものとは、つねに対立し、ときには隠然と、ときには公然と、たえまない闘争をおこなってきた。」と『共産党宣言』(1848年)は言う。この対立の図式に「住職と一般僧」を加えるべき時代になったのかもしれない。

 長野の善光寺・大勧進で僧侶らが労組を結成したというのである。「組合員」は9名(僧侶5人と職員4人)。1月に全労連系の「長野県一般労働組合」の分会として「善光寺大勧進分会」を発足させた(読売2月11日)。もちろん重要なのは「賃上げ交渉」。
 坊さん労組というのは、<労働団体の中央組織も「以前は大阪にあったが現在はない」(連合)、「聞いたことがない」(全労連)などと話している>(読売)というから、今後燎原の火のように拡がるかもしれない。葬式の時に坊さんがストでは困るので、これからは春闘のシーズンには死なないように気をつけなければならないだろう。

 「坊主丸儲け」というフレーズが当たり前のように思われるほど、僧侶というのは不当に儲かる商売だと世間では思われている。その価格体系が不透明なお布施や戒名代も原因ではあるが、「宗教法人」として税制上の優遇措置を受けていることが大きい。
 仏教寺院は法人としては優遇されていることは間違いないのだが、個人として考えた場合は、大部分の住職(寺のオーナー、医者で言えば開業医)でない僧侶は通常のサラリーマンと同じで、宗教法人から定められた給与を受け取るわけで、その給与所得に対しては所得税がかかることは通常の労働者と同じである。

 サラリーマン僧侶の場合は、私有する「生産手段」としては自ら手にする数珠くらいしかないわけで、袈裟だって「会社」から貸与される「作業着」だ。結局自らの「労働力」を「商品」として売ることでしか生きていけない(自分のためにお布施を集めてはいけない)典型的な「プロレタリアート」でしかないという認識から労組の結成に踏み切ったのだろう。自分たちのことだけを考えるのでなく、日本の「同志」達のためにも宣言文などを公表して欲しいものだ。
 ちなみに「労働組合法」では<この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう>(第三条)とあるので、僧侶を「労働者」から排除する理由は全くない。

 それにしても「法人」としての日本仏教界の堕落はどうだ。先日の大阪府教委No2逮捕事件の贈賄側の学園元理事長は坊主である。つまり宗教法人と学校法人という「公益性」で税制が優遇されている組織を経営して、年間1億円もの「交際費」を捻出していたというからこれこそ丸儲け坊主だ。

 宗教法人が税制上優遇されている措置の是正案というものは、憲法上の疑義もあり長年論議されてきたが、法案の提出には至っていない。しかも今は純粋な「宗教政党」が与党の一員であるので、宗教団体が不利益を被る法案の提出は夢にも考えられない。

 日本の仏教の堕落の原因は中学生でも知っている。寺を役場の戸籍係と思想警察に貶めた徳川幕府の「寺請制度」である。檀家制度は寺にとって安定的な収入が得られるようだが、逆に新たな顧客を開拓する可能性を奪っているわけで、人口減の時代には「檀家」に負担増を迫るしか生き残れないという不合理な制度だ。
 日本の仏教は”魂の救済”などどこ吹く風の「葬式仏教」と蔑まれて久しいが、その「葬式」関連の費用さえ全く透明性を欠いた価格体系のため、”消費者”からは強い不信感を抱かれている。

 「宗教法人」を隠れ蓑にした「オウム事件」が起こったときには一部で仏教界の改革なども言われたが、具体的な動きは世間的には坊さんの髪の毛ほどもなかった。

 日本に今必要なのはまさしく「宗教改革」なのだ。この坊さん労組が、仏教界の新たな”マニフェスト”を明らかにするのかどうか。
 仏法のプロレタリアは自らの髪の毛を含めて失うものは何もない。彼らの得るものはピンハネされたお布施である。仏法のプロレタリア団結せよ!

おとり捜査猫ニセ獣医師逮捕

2006-02-10 13:43:56 | 動物・ロボット・植物
 「猫の手も借りたい」という表現は、猫というものがいかに役に立たないペットであるかということを逆説的に表現している。麻薬犬や警察犬など犯罪捜査に戦力として投入されている犬とは正反対だ。
 ところが「三毛猫ホームズ? いえ、おとり捜査猫」という朝日新聞2月10日の記事。これには仰天した。

 獣医師免許なしに手術をしていた男を逮捕するのに猫が活躍したというのだ。「囮捜査猫フレッド 8ヶ月」。「捜査陣はブルックリンのアパートに録音、撮影装置を仕掛けたうえで、去勢手術のためにフレッドを引き取りに来るよう男に要請」。まさに「猫に鰹節」。「男は135ドルで去勢手術を請け負い、現金を受け取ってフレッドを連れてアパートを出たところで逮捕されたという。」(朝日)
 そもそも捜査官がこの男を内偵したのは、「5歳の犬が開腹手術を受けた後、縫合部分に感染症を起こし、安楽死を勧められたという飼い主からの通報」だった。「猫も杓子も」手術して荒稼ぎしていたようだ。命を助けられた犬バートは、記者会見で恩猫フレッドをペロペロなめて感謝の気持ちを表している(上の写真)。

 「フレッドは生後4カ月で市動物保護管理事務所に保護された迷いネコだった。片方の肺が機能せず、衰弱が激しく、たまたま検察官事務所の職員が養育を買って出た。その後、健康は回復したため今回のおとり捜査官に任命された。」(朝日) 飼い主によるとフレッドは落ち着いた性格で、見事に「猫をかぶって」淡々と任務をこなし、記者会見でも堂々の対応をしていた。

 そう言えば、あの大西洋を渡った猫エミリーも動物愛護協会に保護されていた迷い猫だった。日本のようにまだペットを保護するNGOが未整備の国では、フレッドもエミリーも幼いうちに消えていて、世界中でニュースのネタになることもなかっただろう。日本では「猫を殺せば七代祟る」と言うが、命を助けられた猫フレッドは、多くの犬猫の命をニセ獣医師から救うことになったのだ。