ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「待ち疲れ」

2015-04-08 | エッセイ
2015年4月8日(水)

朝、外を雪が舞っていた。斜め横に流れていく。
強いビル風に流されているんだろうなあ。
桜の季節になっての雪は、儚い感じだわ・・。

午前中、図書館に予約した本を取りに行って、それから、スーパーへ。
わさび、からし、しょうがのチューブ、全部、買い忘れてきたわ。
気がついたら、どれも賞味期限切れで処分したんだ・・・。
一人暮らしだと、期限内に使い切れないよ・・。

さて、今日は、先月のエッセイサークルに出したエッセイを・・

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「待ち疲れ」               
 家を売りに出して十ヶ月、やきもきさせられたが、ようやく無事に売ることが出来た。
すると、家を売った経験者の友人に、「後は、税務署に申告に行かなくちゃならないんだよ」
と、教えられた。税務署と聞くと、「何かミスをして押しかけられたら怖い」と反射的に思って
しまうので、ここはきっちりやらなくてはならない。ただ、売値は三十数年前の購入額の半額以下
なので、税金はかからないとも聞き、心にやや余裕が出来た。
 確定申告のシーズン前に申告を済ませようと、私は、一月末の月曜日に電車とバスに乗って、
税務署に出かけた。受付で相談すると、申し込み書の「譲渡」という項目に○印をつけてくれた。
「譲渡というとまるでタダで譲ったような感じ」と違和感を持ちつつ、廊下の順番待ちの椅子に
座った。右隣りの男性がスマホを弄っているので、私も時間つぶしに丁度よいとバッグに手を
入れたが、スマホは無い。持ってくるのを忘れてしまった。後から来た左隣の男性は、
ファイルを取り出し、中の書類を確認している。私も事前に問い合わせて持って来た書類の確認を
した。住民票、法務局の登記関係の書類、売買契約書のコピー。
後はもう、ひたすらぼ~っと待つだけだ。時々、相談係の人たちがやって来て、
「譲渡関係の方~」とか、「譲渡以外の方~」と、呼びかける。それぞれ担当分野があるようだ。
そのため、まるっきり順番どおりとはいかないが、概ね前のほうから人が流れていった。
少しずつ前の椅子に進む間も、次々に人が来て、後ろにも長く並ぶ。仕事中に来たらしい作業着の
男性。子供連れの若夫婦。背広の初老の男性。大きな鞄を持った中年の女性は、女性起業家かしら
と、周りの人たちをぼんやり眺めるしかすることも無い。その間も、「譲渡以外の方~」と声がする。
あれ?さっきから、譲渡以外ばかりじゃない?そして、又、「譲渡以外の方~」だ。
何か、いやな予感がする。そして、とうとう私が列の先頭になったというのに、
「譲渡以外の方~」。
係り員は、私にちょっと失礼というように片手を上げて、私の次の男性を連れて行った。
それからも、「医療費の還付です」という女性、退職してなんたらという男性、申告がどうたら
という男性……。どんどん抜かされていく。とうとう、「ここに並ぶんですか?」と私に聞いて、
列の最後尾に並んだはずの女性にまで、追いつかれ、そして、抜かされてしまった。
いったいどうなっているの!
こういう時、マスクって、本当に便利だ。抜かされる度に、顔がどんどん強張っていく。
ただ、そんな顔を周りの人に晒したくは無く、マスクは私の顔の大部分を優しく覆ってくれていた。
譲渡関係の担当者の人数が少ないのは分かるけれど、それにしても遅すぎる。前の人の相談が
長引くとしても程度というものがあるし、午後のお茶でもしているのでは無いかしら?
それとも、相談よりもっと重要な仕事をしに行ってしまったとか?との推測が脳内を駆け回って
いるので、マスクの外に出ている目つきも鋭くなっていたのだろう、やってくる係員がいかにも
申し訳なさそうに頭を下げたり手を合わせたりして、次の人を案内していく。
突然、「譲渡関係の方~」という声がして、目の前にやや太めの男性が立った。
「はい!」と、私は立ち上がり、相談室へ向った。
「だいぶお待たせしたみたいですが、何時ごろいらっしゃいました?」
 と、まずは雑談風に聞くので、時計を見たら、もう三時半。
「二時前でしたから、もう一時間半待ちました」
「譲渡関係は、担当が少なくて……」
 話す間にも、私は、「長く住んだ家を売りまして」と、ささっと書類を机の上に広げた。
担当者は、ゆっくりとその書類に目を通し、
「あなた個人の名義ですね……。購入した時の売買契約書は…?う~ん、購入額より安く売って
いますね。これは、申告の必要は無いですね」
 と、言った。
 税金はかからないとは思っていたけれど、申告の必要も無かったなんて、事前の問い合わせで、
言ってくれなかった!
 この一時間半待ちは、なんだったんだ。
 がっくりしながら部屋を出かけたとき、何か言い足りない気がして、私は振り返り、
「え~っと、一時間半も待ちましたけれど、申告の必要は無いとはっきり言ってもらえたから、
来て良かったと思います」
 と、思わず、冷静ぶって言ってしまった。担当者は、曖昧に頷いていた。
来ずに分かるのが一番良かったけれど、無駄足では無かったからと、自分に言い聞かせつつ、
私は、空気の冷え始めた道をバス停へと急いだのだった。
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昔より、税務署の担当者は、丁寧になったとは思うけれど、
あの日は、本当にもやもやしたっけ。
エッセイを載せ、思い出して、また、ぷ~っと膨れてしまったわ。(^^;)

コメント
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