2012年4月12日(木)
ウィステの家の(あまり手入れのしていない)花壇には、今、パンジーと
クリスマスローズが咲き誇っている。
春だなあ・・・。
そこで、だいぶ前の春の話・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「エスケープ」
二月に納骨をした夫の墓は、東京の寺にある。夫の墓参りの折りには、そこのご住職が
開かれる法話会にも出てお話を聞こうと、三月の法話会の日に合わせて夫の墓参りに出かけた。
埼玉から来る娘と十一時半にお寺の待合室で落ち合った後、他に人のいない気楽さで、
私たちは勝手にお茶を淹れ、持参のサンドイッチをつまみながら話し込んでしまい、
気がつけば十二時半。法話会の午前の部は一時までで、午後は二時からと聞いていた。
「今から入って行ってもね……」
「二時まで待つっていうのも、どうもね」
と、夫の墓参りをするや、私たちは、初っ端から法話会をエスケープして、それならと、
湯島天神の梅祭りに行くことにした。
春三月、湯島天神の境内は、時節柄「お礼参り」の学生やその親御さんで賑わっていた。
手を合わせている中年男性の背中に眼が引かれがちになりながらも、鈴なりの絵馬の脇を抜けて、
梅園に来てみれば、肝心の梅は、もうほとんど咲き終わっていた。
「一週間早かったら、綺麗だったでしょうね」
と、言いつつも、青い空の下、網の目のように織り成す梅の枝振りの良さに見惚れ、一巡りした後は、
屋台の甘酒を買って、娘とベンチに座ってのんびりとした気分に浸った。
しばらくすると、近くの桟敷に、赤い着物の若い女性が上り、薩摩琵琶の演奏を始めるという。
演目は、平家物語から「敦盛」と聞こえた。なんということだろう。謡を趣味とした夫の好きだった
「敦盛」とは。人垣の間から、琵琶のジャーン、ジャーンという音色に合わせて、やや甲高い声の
語りが流れてくる。謡とは異なる調べだけれど、節々の言葉には覚えがある。娘と二人、じっと聞き入った。
思いもしなかった「敦盛」との出会いに、演奏が終わるや、娘は和らいだ表情で言った。
「偶然とは思えない。お父さんの意思みたい。お父さん、絶対、ついて来ているよね」
「うん。きっと、敦盛、聞きたかったのね」
――膝が悪かった夫。身を脱ぎ捨てて、軽やかに動けるようになり、今一緒にこの日溜りの中にいるーー
「あんまり、法話会にこだわらなくていいんじゃない」と、娘が言い出し、私も、
「そうだね。お墓参りの後、お父さんも連れて、東京をぶらぶらとしたほうがいいのかも」
「東京のこの辺りの散策マップでも、探すか」
と、早くも次回のお墓参りの後へと、エスケープ組の心は弾む。
出口へ向かう石段の傍らに、日当たりが悪いのか遅咲きらしい梅の木数本が、満開の花を咲かせていた。
その石段を降り、春日通りを上野へと、私たち三人は歩き出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日は、洋裁教室のIさんの古希のお祝い。だから、マスクをして、Iさん宅にお迎えに行った。
途中の道には、桜が満開・・。(^^)
和食レストランで、みんなから可愛いピンクの花束を差し上げました。
夜は、Iさんの田舎から送られた筍の煮物で、春の味を楽しんだわ。(^^)
ウィステの家の(あまり手入れのしていない)花壇には、今、パンジーと
クリスマスローズが咲き誇っている。
春だなあ・・・。
そこで、だいぶ前の春の話・・・
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「エスケープ」
二月に納骨をした夫の墓は、東京の寺にある。夫の墓参りの折りには、そこのご住職が
開かれる法話会にも出てお話を聞こうと、三月の法話会の日に合わせて夫の墓参りに出かけた。
埼玉から来る娘と十一時半にお寺の待合室で落ち合った後、他に人のいない気楽さで、
私たちは勝手にお茶を淹れ、持参のサンドイッチをつまみながら話し込んでしまい、
気がつけば十二時半。法話会の午前の部は一時までで、午後は二時からと聞いていた。
「今から入って行ってもね……」
「二時まで待つっていうのも、どうもね」
と、夫の墓参りをするや、私たちは、初っ端から法話会をエスケープして、それならと、
湯島天神の梅祭りに行くことにした。
春三月、湯島天神の境内は、時節柄「お礼参り」の学生やその親御さんで賑わっていた。
手を合わせている中年男性の背中に眼が引かれがちになりながらも、鈴なりの絵馬の脇を抜けて、
梅園に来てみれば、肝心の梅は、もうほとんど咲き終わっていた。
「一週間早かったら、綺麗だったでしょうね」
と、言いつつも、青い空の下、網の目のように織り成す梅の枝振りの良さに見惚れ、一巡りした後は、
屋台の甘酒を買って、娘とベンチに座ってのんびりとした気分に浸った。
しばらくすると、近くの桟敷に、赤い着物の若い女性が上り、薩摩琵琶の演奏を始めるという。
演目は、平家物語から「敦盛」と聞こえた。なんということだろう。謡を趣味とした夫の好きだった
「敦盛」とは。人垣の間から、琵琶のジャーン、ジャーンという音色に合わせて、やや甲高い声の
語りが流れてくる。謡とは異なる調べだけれど、節々の言葉には覚えがある。娘と二人、じっと聞き入った。
思いもしなかった「敦盛」との出会いに、演奏が終わるや、娘は和らいだ表情で言った。
「偶然とは思えない。お父さんの意思みたい。お父さん、絶対、ついて来ているよね」
「うん。きっと、敦盛、聞きたかったのね」
――膝が悪かった夫。身を脱ぎ捨てて、軽やかに動けるようになり、今一緒にこの日溜りの中にいるーー
「あんまり、法話会にこだわらなくていいんじゃない」と、娘が言い出し、私も、
「そうだね。お墓参りの後、お父さんも連れて、東京をぶらぶらとしたほうがいいのかも」
「東京のこの辺りの散策マップでも、探すか」
と、早くも次回のお墓参りの後へと、エスケープ組の心は弾む。
出口へ向かう石段の傍らに、日当たりが悪いのか遅咲きらしい梅の木数本が、満開の花を咲かせていた。
その石段を降り、春日通りを上野へと、私たち三人は歩き出した。
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今日は、洋裁教室のIさんの古希のお祝い。だから、マスクをして、Iさん宅にお迎えに行った。
途中の道には、桜が満開・・。(^^)
和食レストランで、みんなから可愛いピンクの花束を差し上げました。
夜は、Iさんの田舎から送られた筍の煮物で、春の味を楽しんだわ。(^^)