前編のからの続き…
異変は今年6月に起こった.新たな夏が近づくにつれて,だんだんメインマシンの挙動がおかしくなってきたのだ.その原因を探るためにある日,WindowsXPのシステムログをイベント・ビューアで確認したところ,愕然とした.クリティカルなエラーを示す「赤丸に白バツ」アイコンが,ズラリと並んでいたのだ!そしてそのエラーとは…
「デバイス Device¥Harddisk1¥D に不良ブロックがあります。」
ちなみに「Device¥Harddisk1¥D」の部分は,NT 内部デバイス名であり,「2台目のHDDのパーティション」という意味.それはまさに,Deskstar 7K250の1台を示していた.すぐさまS.M.A.R.T.の値を確認すると,何と!Deskstar 7K250のReallocated Sectors Countの値が,20近くになっている!(注:ちなみにこのDeskstar 7K250は,主にOS以外のアプリのインストール用として使用してきたの.おもしろいことにファイル倉庫として使用してきたもう一台のDeskstar 7K250の,Reallocated Sectors Countには変化がみられなかった.)
こうなれば一刻も早く新規HDDを購入し,崩壊を予感させるDeskstar 7K250からファイルを救出し,一件落着したいところだが…身に染みついた貧乏性のおかげで,そこまで即座に踏み切れなかった.まだ1年しか使用していないHDDあったし,重要なファイルも少なく,さらに言えば引越自体が非常に面倒だったからだ.
そこでとりあえず,「chkdsk /R」によるHDD復旧を試みた.これで不良セクタの分だけ,HDD容量は減るものの,継続使用ができるかもしれないと思ったからだ.しかし今思えば,その認識は甘かった.確かに,この処置によりその後しばらくの間,さきほどのイベントは記録されなくなった.嵐は過ぎ去ったかのように見えた,ところが.Deskstar 7K250のReallocated Sectors Countは,その後徐々に上昇していたようで,ある日気がつけば,その値は40台に突入していた.
「崩壊が進んでいる…」
この時点で,私はDeskstar 7K250の継続使用を断念し,新規HDD(MAXTORのMaXLineIII,スペックシート,ベンチマーク)の購入を決意した(注:購入したMaXLineIIIについては,また別の記事にする予定).
さっそくドスパラ静岡店でMaXLineIIIを購入.すぐにメインマシンに取り付け,引越作業を開始した.とりあえずパーティション管理ソフトであるPartitionMagic7.0で,Deskstar 7K250からMaXLineIIIへパーティションコピーを行おうとした.ところが,コピー元のDeskstar 7K250のチェック時にエラーが発生し,コピーが行えない.そこで再び,かなりの時間をかけて「chkdsk /R」によるエラー修復を行い,その後先ほどと同様にPartitionMagicによるコピーを試みたが,やはりエラーチェックではじかれてしまう.ということで,再び「chkdsk」を……と地獄のループを何度か回ることになった.しかしこの作業の一方で,このHDDのReallocated Sectors Countの値はさらに上昇し,もはや70台にまで達していた.
「このままでは『chkdsk』に殺されてしまう…」
そこで,PartitionMagicの使用はあきらめ,WindowsXPの「ディスクの管理」により,手動でMaXLineIIIのパーティションを切り,エクスプローラでDeskstar 7K250のすべてのファイルを手動コピーした.1度だけCRCエラーにより,コピーが中断したが,不要ファイルだったため,それは削除し,再度コピーを実行したところ,コピーに成功した.このような場合は,本来ならばxcopyコマンドを使用するべきだろう.xcopyコマンドならば,CRCエラーは無視して,コピーが続行される.ちなみに後から知ったのだが,この手の作業の定番フリーソフト「Fire File Copy」を使用すれば,静かに,高速に,コピー作業をしてくれるようだ.
以上のレスキュー作業の後,このDeskstar 7K250は,メインマシンから切り離され,他のマシンによりHDD診断定番ソフト「Disk Fitness Test」にかけられた.最悪の場合でも「ローレベル・フォーマット」によって,再生できると思っていたからだ.ところがテストの結果は,意外にも「0x70 Corrupted Sector」.ユーザーズガイドによると,「一般的なHDDの問題で,ローレベル・フォーマットを行う必要がある.またそれでもこのエラーが出る場合は,故障と見なされる.」とのこと.とりあえず,「Repair(修復)」が選択できたので,フォーマットの前に,修復を試みた.ところが残念なことに,修復後に自動的に開始されるテストで,再びエラーが出た.しかも今度はエラーが異なり,「0x75 Defective Hard Disk Drive Component」.つまり「壊れているHDD」と判断されてしまった!
まさかと思い,手動でローレベル・フォーマットを実行したが,やはりフォーマット後のテストで同じエラーになってしまう.もしかしたら,室温のせいかとも思い,涼しい時間に扇風機で風を当てながら,十数時間をかけて,何度も同じ作業を執拗に繰り返してみた.涼しい方が幾分良いようで,一度は以前引っかかっていたチェック部分を突き抜けて,チェックが進んでいったが,やはり最後にはエラーを出して,止まってしまった.
「完全に死んだ…」
こうして,死体に鞭打つ行為を終え,ついにDeskstar 7K250の死亡が確定された.今回は突然死ではなかったため,95%以上のファイルが無傷回収でき,なおかつ,傷付きながらも回収された重傷ファイルについては,再インストール等により復旧できる見通しがある.すなわち,「ファイル損失」という意味での被害は,少なかったと言えるだろう.これは先ほども述べたように,今回死亡したDeskstar 7K250が,主にソフトのインストール用として使用されていたためだ.ただ…,たった1年で,万円以上の価格のパーツが死んでしまったことは,確かな痛みだ.しかも以前からメインマシンに住んでいるDiamondMax Plus 9が,いまだにピンピンしている(注:リアロケーションは0)のだから,なおさらだ.根性があればRMAと言う手段もあるのかもしれないが,確かHGSTにはそれがなかったと記憶している.
これだけの事件から,「他社製品よりも,HGSTが熱に弱い」と断言できないのは当然だ.実際,同時期に購入したもう一方のDeskstar 7K250は,現在のところReallocated Sectors Countの値は7で踏みとどまっており,健康面に不安はあるものの,まだ死の兆候は見られない.Deskstar 7K250はスペック上でも,動作環境温度は「5~55℃」となっており,他社のHDDとほぼ同じになっている.スペック上では特段,熱に弱いわけではない.ではこの2台のDeskstar 7K250の運命を分けた要因はなんだったのか?
「単なる個体差」と言えば,それまでかもしれない.ただ,両者を比較した場合,死んだDeskstar 7K250の方が,もう一方(ファイル倉庫)に比べて,(ランダム)アクセス頻度が高かったのは事実だ(注:IEのキャッシュフォルダやスワップファイル専用パーティションが存在していたため).だとすると「累積アクセス量」が,この2台のDeskstar 7K250の運命を分けたのかもしれない.つまり,「消耗されて死んだ」というわけだ.それが本当だとすると,この両HDDは2MBバッファ製品だったが,8MBバッファ製品ならば,キャッシュヒットにより,ディスクへのアクセス頻度が減り,2MBバッファ製品に比べて,寿命が長いという仮説も成り立つのかもしれない.バッファ量とHDD寿命の関係については,まったく聞いたことがないが…
現在,2ch自作PC板「【日立】HitachiGST製のHDD友の会【HGST】」では,HGSTの発生する「ブーン」音が話題となっている.かつてここで,HGST製のHDDの熱耐性(注:発熱量ではない)の話題が,何度か登ったと思う.その希有なレスの中に,「温度が上がると,すぐにリアロケーションを起こす」などと書いてあったと記憶している.その後,そのレスを袋だたきにするレスが続いていたのが……さて,真偽は?