日々記

ひびき

ピカピカの靴

2021-10-14 | Weblog
先輩が亡くなって早ひと月が経った。思い出さない日はなかったが一度もお参りには行かなかった
「薄情なひと」とカミさんに言われたが、心の中を一々説明するのも面倒なんで「そうかもな」と答えた
明日は月命日で、お参りに行こうと思ったがいろいろ用事があって今日お参りに行ってきた
義理堅い人だったから、カミさんと同じく「やっときたか薄情もん」と線香の向こうにある遺影から
そんな声が聞こえた気がした
しかしやっぱり先輩にも心の中は説明しづらいんで「久しぶり!」みたいな調子で手を合わせた
おばさんはもうすぐ四十九日なんで時間があるなら納骨を手伝って欲しいと行ってきた
心の中で、仕事が忙しくって多分行けないとだろうと思いながら「行けそうなら行くね」と言ってしまった
死んだ先輩が何だか言ってるような気もしたが、死んだ先輩なら心の中も読めるだろうし
そういうわけだから、たぶん無理かもと手を合わせて拝んだ
娘さんから、お父さんのお古だけどと衣類や靴を数点貰ってきたがサイズはともかく何だかどれもパッとしない
ピカピカの靴が一足あって「これは娘のバージンロードを歩くときに一度履いただけ」と説明を付けた
足を合わせてみたが、ちょっと小さくて履くにはつま先か踵に負担を感じるだろうと思った
それでもおばさんは「履いているうちに伸びるから」とどうしてもオレに貰って欲しいらしかった
先輩の形見は生前に指輪を貰っているので、あとは思い出だけでいいと思っている
指輪を貰った場面も時間もしっかり記憶に刻まれている
あんな場面こんな場面が思い出されれば、今も先輩は自分の中で存在しているのと同じことだと思った
だって昨日のことなんて記憶の中にしかないんだし、記憶の積み重ねの中に生きているんだなとふと思った
先輩から貰ったピカピカの靴は誰かピッタリサイズの合う人に履いてもらうのがいいだろうと思っている
飾っておくだけの靴くらい勿体ないものはない
先輩なら「質屋に持ってけ」って笑って言うだろう
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