断章、特に経済的なテーマ

暇つぶしに、徒然思うこと。
あと、書き癖をつけようということで。
とりあえず、日銀で公表されている資料を題材に。

The Development and reform of the modern international monetary system の話(4)

2016-03-02 20:59:57 | MMT & SFC
先日、このブログで、
「L. R. Wray(あるいはMMT)は国際通貨問題については
関心があんまりなく、ワーキングペーパーもない」みたいなことを
書いてしまったが、先日自分のフォルダを整理していたら、
Wrayの開放体系理論のワーキングペーパーがまとめて出てきた。。。。
つまり開放体系モデルについて関心がなかったのはMMTではなく、
おいらだった、というわけだ。一応、コピーだけは取っておいてあったのだが
読みもしないですっかり忘れていた、というわけだ。。。いや、お恥ずかしい。

というわけで、とりあえず今進めている粗訳のほうが一段落したら
そちらの方に話を進めるつもりではある。とはいっても、
すでに書いている通り、MMTの開放モデルというのは
要は為替自由化、資本移動自由化というのが基本線なので、
その結論自体には面白味はないが、しかし
その結論に至るまでの論理展開が独特で、その点は面白い。
とはいえ、やはりほとんどの日本人(おいらを含む)には
やっぱり釈然としないものが残るのではないか、と思う。


さて、その一方で、
現在粗訳を進めている"The Development and reform of the modern international monetary system"
であるが、こちらは、ケインズのバンコールおよびP.デヴィッドソンのICMUを題材としてる。
したがって、MMT流の変動相場制推奨のような議論は出てこない。
むしろ変動相場制の下では不確実性が高まり、
国際的な経済活動水準を低くしてしまうことが強調されている。ところが、その結論へと
導くものは、やはりMMT流のネオ・カルタリズムなのである。

この論文を所収しているFoundations of International Economics
1999年に出版されている。Wray の単著Understanding Modern Money
出版されたのはその前年のことであるので、基本的には
この論文が書かれた時点ではすでにMMTの理論の概要は
整っていたとみていい。ただしUnderstanding Modern Moneyには
国際経済や開放マクロについてのまとまった叙述はなく、
この時点ではまだどちらにつくべきか――変動相場制か固定相場制か――、
本人が決しきれていなかった可能性もある。ただ、
この"The Developument and …"論文のほうには「ネオ・カルタリズム」という言葉は出てきているが
「MMT」という言葉は使われておらず、「ポスト・ケインズ派の国際通貨理論」というような言葉が
多用されている。実際、議論されているのは上記のとおり
ケインズとデヴィッドソンの理論だけであり、MMTに関するものは参照すら
されていない。この種の書物が編集されるとき、どのような手順が踏まれるのか
おいらは知らないのだが、もしかしたら、ここでは編集者の依頼で
あえてMMT的なものは抑制して、より「ポスト・ケインジアン」として知られている
議論に限定したのかもしれない。2年後にはA New Guide to Post Keynesian Economicsという
書物が出ており、これはもしかしたら翻訳がでてたんじゃなかったっけか?という気がするが
こちらではWray は"Money and Inflation" という章を担当しており、
国際通貨システムについては、やはりネオ・カルタリストである
John Smithin が書いている。このSmithinの論文のほうは、
固定相場制/変動相場制のどちらが推奨されるべきであるかについては、
先のWrayの前書の論文に比べると、ややあいまいな書き方がされているように思う。

と、言うわけで、現在粗訳を進めている当論文はMMTの国際通貨理論というわけにはいかないが
しかし、ネオ・カルタリズムの理論からどのようにして固定相場制が推奨されることになるのか、
という一つの視点がみられて面白い。読めばわかるとおり、この論文では、世界各国政府に対して
レンダー・オブ・ラストリゾートとして行動する国際的な中央銀行の
設立が提唱されている。しかし、多分ほぼすべての人が同意することだろうけれど、
我々の生きている間にそのような組織が実現する見込みは全くない。
おそらく、Wrayやその他MMTerの頭の中にあるのも同じではないだろうか。
各国政府に対してレンダー・オブ・ラストリゾートとしてふるまうことのできる世界的中央銀行の
設立の見込みがない以上、次善の策として国際貿易・決済安定化のため、
最も有効な手法が変動相場制であるという結論に至った、ということがあっても
不思議ではない(その結論に共感できるかどうかは、また別問題)。

また、本論文が重要性を持つとしたら、現在のユーロ問題との関連であろう。
ヨーロッパ中央銀行ECBはなぜユーロを安定させることができないのか。
ECBは、ユーロおよびヨーロッパの経済を安定させるために何をしなければいけないのだろうか。
これは、Wrayその他、多くのMMTerの関心事項となっていることでもある。
Wrayは、すでに2003年には"Is Euroland the Next Argentina ?" というかなり不吉なタイトルの
ワーキングペーパーを書いている。その後も繰り返し、ユーロに言及しているが
タイトルを見ただけでも、あまり肯定的なものとは言えないようだ。そして
ユーロ危機が始まってからは、それ見たことか、という感じである。
もっともそれら一連のワーキングペーパーを見ても、本ワーキングペーパーが
参照されていないのは、粗訳を始めてしまったおいらとしては、
ちょっとさみしい。。。。

んまあ、そんなわけで、本日もちょっとだけ
粗訳を進めてみる。

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※2020年1月10日全文削除

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今日も短いけど、ここまで。


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