《高校の希望者全入はすでに成立していた!?》 (その1)
私は数字やお金の計算が苦手で、数字に関してほとんど考えないできました。
でも、ようやく私にも、その「からくり」がはっきりと分かるようになりました。
高校の「希望者全入」は、とうの昔に「成立」していました。
そこでは「定員」も「予算」もまったく度外視して推進されています。
私たちが二十数年闘ってきた『定員内不合格』も、そこにはありません。
校長が「誰ひとりとして切り捨てない」という理念のもと、「行き場のない子どもを作らない」という方針に応えて、「無理な受け入れ」をしてがんばっているのです。
つまり、行政的には、15歳の子どもの後期中等教育の希望者全入はすでに「実現」しているのだから、普通高校の「受験制度」を変えるつもりはないのです
それこそが「特別支援教育」の要だったような気がします。
◇ ◇ ◇
1.【高校の進学率】
高校に「入れてもらえず」、行き場をなくした子どもの問題。
それは、「定員」や「建物」「予算=お金」の問題などではありませんでした。
3月末の最終の追加募集まで受験して、高校に行けない子どもは、全国で1000人あまりです。
たった1000人あまりです。
05年度1098人、
06年度1007人、
07年度1005人、
08年度1222人、
09年度1174人。
その原因は二つでした。
A:「定員」が「足りない」場合。
B:「定員があいている」のに不合格にされる場合。
「定員が足りない」のなら、全国で1000人分の「定員」を増やせばすみます。
2010年、4月、東京都は300人の追加募集を行いました。2009年4月には、大阪府が追加募集で不合格になった人数167人分の追加募集を行いました。教育行政とは、こうした「救済策」「支援策」を行うことができるのです。
そうであれば、最初から、中学卒業生の数から、あらかじめ1~2%の子どもだけに「足りなくなるのがわかっている」「計画進学率」(進学率の推測値)を、あらかじめ策定するのが、間違いなのです。
さて、それでも、愚かな私は、その「計画進学率」を100にする壁は、高く堅いものだと思っていました。しかし、話はまたぜんぜん違いました。そんな壁は、はじめから「ないも同然」でした。
◇ ◇ ◇
2 【特別支援学校の生徒増加】
その証拠が、特別支援学校の生徒増加への対応です。
(※ ここで下記の提言書にそって神奈川の数字で話を進めますが、千葉でも状況は同じです。)
【養護学校過大規模化に関する提言】という文書があります。
これは、特別支援学校の校長会が県教委に出した要望書といえるものです。
平成20年12月25日
神奈川県教育委員会教育長殿
神奈川県立特別支援学校校長会 会長 鈴木文治
(略)
知的障害教育を行う特別支援学校への入学希望者の急増は…全国的な傾向となっています。
本県でも平成10年度から19年度までの⑩年間で、盲・ろう・養護学校全体の児童生徒数は4561人から6356人(139.4%)と1795人増加していますが、その大部分は知的障害養護学校への入学者の増加と見ることができます。
この間県は、…新設養護学校の建設に着手し、…しかし新設4校と新設知肢併置校の児童生徒数を合計しても657人と、前記の増加分を吸収するにはほど遠い状況です。
そこで窮余の策として平成16年度より県立高校等の教室を借りて「分教室」を作り対応を図りましたが、これも1学年15名の募集人員では平成19年度現在5校設置で実質137人にとどまり、結局この差の約1000人あまりの子どもたちは各養護学校が小中高ともに受け入れ枠を広げることにより、かろうじて入学希望者が行き場を失う事態を回避してきました。
◇
ここに書かれていることは、「特別支援学校の生徒の増加」という視点からだけ見れば、何が問題か見えなくなります。
朝日新聞の「教室が足りない!」「障害児がプレハブにつめこまれて、かわいそう」みたいな記事が書かれるのは、「そこ」だけを見るからです。
では、なぜ、こんなにも「障害児」が増えるのか?
「特別支援学校」も「教室」も増えているのです。それなのに、その数に追いつかないほど生徒が増えているのはなぜか?
答えは、そこが、いつのまにか「希望者全入」になっていたからです。
「普通高校」ではありません。「特別支援学校」、がです。
考えてみれば、新潟や山形の高校進学率が99%といっても、障害児の高校進学はぜんぜん進んでいないのです。つまり、「進学先」は「高等部」または「高等養護学校」なのです。
先の「提言」では、さらに次のような言葉が続いています。
「誰ひとりとして切り捨てない」という理念のもと、「行き場のない子どもを作らない」という方針に応えて、「無理な受け入れ」」をしてきたと。
私たちは、教育委員会に完全にだまされてきたようです。
普通の高校には「定員」があり、入学許可の決定は「校長」だと、言う言葉を信じてきました。
その「定員」は、「計画進学率」と呼ばれている数字は、「中学卒業者の人数」にあわせて、97%とかで「抑えて」設定し、高校に行けない生徒をあらかじめ準備してきたのです。
ところが、その一方で、この10年、いつのまにか「養護学校の高等部」は、「定員」を越えて(定員を無視して)、空き教室を使って、よその高校の空き教室まで間借りして、生徒を「受け入れて」きたのです。
中学の先生が、障害のない生徒を、養護学校の高等部に送り込む勢いは加速するはずです。
「普通高校」が難しい生徒を、そこに送り込めば、「進路指導」もOKで、しかも留年の心配もないのです。
そうして、じわじわと上がってきて、進学率が100に近づいてきたのでした。
◇ ◇ ◇
3 【お金がいくらかかっても、分ける】
ここで、不思議なのは、お金の問題です。
いわゆる普通の小学校、中学校の生徒一人あたりの教育費は60万から90万円です。
そして、養護学校の生徒には、一人900万あまり、(東京では1000万)なのです。
高等部でも、それに近い費用がかかっているはずです。
つまり、「予算」「お金」の問題など度外視しても、養護学校の新設にいくらお金を使ってでも、「普通高校を希望者全入」にだけはしたくない、という「力」が働いているのです。
そう、普通高校の「定員」を、中学卒業生が希望者全入できる程度の「定員枠」を設定し、予算をつけるよりも、莫大な予算が必要であっても、そうはしないで、「普通高校校の定員枠」を守っているのです。
そこまでして守りたいものはなんでしょう。
障害児が小学校の普通学級で、介助員一人つけるという話のときには、「一人のためにそんな予算はつけられない」というはなしがあるのに、その一方で「高等部」には、障害のない子どもが「養護学校」の高等部なら「希望者全入」で、「行き場のない子どもを作らない」というのです。
そこまでして「守りたいもの」はなんでしょう。
「普通教育のじゃまにならないように」
話はやはり、そこにつながってきます。
子どもの数は、減る一方なのです。
何万人、何十万人、何百万人の高校生徒が減っても、
どうしても1000人余りの「犠牲者」にいてもらう制度。
それが、「高校入試」でした。
その使える予算を、教育委員会はどこも、「普通高校を希望者全入」にすることよりも、もっとお金がかかってもいいから、普通高校に入れない生徒を作り出して、それを養護学校で引き受けて「予算」を使い果たしているのです。
なんて、ばかげたお金の使い道でしょう。
こうしたことを、この国は、全国各地で実施しているのです。
それは、「高校受験」という制度と、「養護学校」という分離教育の、行き着く先が、「いま」だということを表しています。
この文章を、私はいま思いつきで書いています。
あとで、きちんと整理して書き直したいと思いますが、これは間違いないと思います。
どうして、今まで分からなかったのだろう。
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