ワニなつノート

ワニなついろはカルタ(7)



≪な≫
「何かしなければ」にこだわると、
「してはいけないこと」が抜け落ちる。


≪してはいけないこと≫とは何か。

できない約束をしない。子どもにうそをつかない。
子どもを性別や人種や国籍や障害や、そして能力で分けてはいけない。

『子どもの虐待とは、子どもの大人に対する信頼の裏切りである』
(森田ゆり)


☆   ☆   ☆

「ここはどこ? ぼくはここで何をすればいいの?」
「ここはあなたに合った学校よ。
あなたに必要な教育ニーズはこの学校にあるのよ」

「ほんと。じゃあ、ここでがんばったら、ぼくは認めてもらえる?」
「もちろん、がんばれば、みんなほめてくれるわ」

「もうみんなにバカにされない?」
「そうね、だから、がんばりましょうね」

「ここでがんばれば、高校生になれる?」
「ええ、ここにも高等部があるわ」

「高等部って高校?」
「ええ、同じよ」

「ほんと。高校でもがんばったら、高校卒業したら、仕事もできるかな」
「そうね、就職できるようにがんばらなくちゃね」

「仕事がんばったら、みんなもうバカにしないね。
 シンタイとかヘンなヤツって言われなくなるね」
「そうよ、そんなこという人は相手にしなきゃいいのよ」

「相手にしなきゃいい…」
「そうよ。そんな人には言わせておけばいいのよ。」

「みんな、だよ」
「みんなって?」

「先生も、1組のみんなも、近所の子たちもみんなそういうよ。
 お父さんもなんでこんな簡単なことできないんだって、
 おばさんもこんなんじゃ仕事もできないからろくな人間になれないって」
「…」

「みんな相手にしないことにしたら、誰もいなくなっちゃうよ。」
「……」

「そうじゃなくたって、1ねんのときから、
 だあれもぼくを相手にしてくれないんだから」
「…」

「そうだ、6な人間って、どういう意味?
 ぼくはやっぱり1な人間?
 1ってだめな子の通知表だってお父さんが言ってた。」
「そんなことないわ。それは、お父さんがちょっと間違ったのね」

「お父さんだけじゃないよ。中島先生だって、加藤先生も、
 お前はみんなと違うからだめなんだって。」
「そんなことないわよ。学校の先生にも、間違ってる先生がいるのよ」

「でも、そしたら、どうしてぼくはここにいるの?
みんなとは違うから、ぼくはみんなと別れて、ここにきたんだよ」
「それは…」

「加藤先生は、おまえはみんなとは違うできそこないだから、
できそこないにはシエンが必要なんだって。
だから、おまえはコベツに行けって言ったよ」
「…」

「ぼくはデキコソナイなの。ぼくはやっぱりみんなとは違うの?」
「そんなことないわ。みんな一人一人違っているのよ。
同じ人間なんて、この世に一人もいないんだから。」

「……」
「いいのよ、違ってたって」

「……ほんとに?」
「そうよ、みんな違うんだから、違ってたっていいのよ。
 違うのが当たり前なのよ」

「……違っててもいいの?」
「いいのよ。あなたはあなたのままでいいのよ。」

「……ぼくのままで?」
「そうよ。自分らしくがんばればいいのよ」

「どうしてぼくはここにきたのかな。
 加藤先生とお父さんが間違ったのかな」
「それはあなたのために、あなたが自分らしくがんばれるように、
ちゃんと教えてもらえばできることがいっぱいあるからって。
あなたにはその力があるからって、
あなたのことを思ってそうしたんだと思うわ」

「ほんと? ぼくもがんばればちゃんとできるようになるの?
 みんなみたいに100点とれるかな」
「そうね。がんばれば、きっと100点も取れるわ。
 昨日だって、10までのたしざんのテスト、100点だったじゃない。」

「そうだね。ぼくもがんばれば、きっとみんなみたいになれるかな。
 そしたら、みんな仲間にいれてくれるかな」
「そうね…」

「ほんと。じゃあ、ここでがんばったら、ぼくは認めてもらえる?」
「もちろん、がんばれば、みんなほめてくれるわ」

「もうみんなにバカにされない?」
「そうね、だから、がんばりましょうね」

……………
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