トラウマとフルインクル(その80)
《ふつう学級では「授業」の他に、子どもたちは何をしているか》
どんなに障害が重いと言われる子でも、ふつう学級で日々「成長している」ことを、私たちはいつも実感してきた。
北村小夜さんの「いっちゃん」の話を思い出す。
たっくんもゆうりちゃんもけいちゃんもそうだった。
「目も見えていない、耳も聞こえていない、だからふつう学級に行っても意味がないですよ」
子どもを見ないで、脳波だけを見ていた医師たちは同じようにいう。
でも、見えていない、聞こえていない、感じていないはずの子どもが、「ふつう学級のみんなと一緒の生活」に耳を傾け、首を回し、微笑み、「みんな」へ向かう姿があり、その子の「主体感覚」が確かにあった。
それは毎日一緒にいる子どもたちには当たり前のことだった。
なにより、その子の息を確かめながら、その子の日々の輪郭でその子の人生を感じ続けてきた母親にとって、その子の主体性の成長は疑いようのないものだった。
◇
それは、一年生になったその日から明らかに見えていたことだが、いまは「その子」たちが大人になり、どのような生活を送ることができるのか、
子ども時代が彼らの人生にどのような役割を持っていたのかを、見せてもらうことができる。
学校を終えて数年、十数年、24時間の生活介助を受けながら、「自分の体を使い、人生において自分の居場所」で、自分の人生の主導権を持ち、人のつながりの中で生きるということを教えてくれる人たちがたくさんいる。
今のゆう君の生活や、歩さんたちの活動を見ているとよく分かる。
また、たこの木の岩橋さんたちが取り組んでいることの意味を改めて思う。
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