卒業アルバム
あなたが私のもとに生まれきてくれたことを感謝し、私にできることを考えてみる。
あなたが地上で出会えるものすべてに、巡り合わせてあげたいと思う。
あなたが見るべきものを、一つ残らず見せてあげたい。
出会うべき人に、迷わずに、いいえ迷い道の途中にこそたくさんの人に出会ってほしい。
あなたは、生きるために受け継がれ、ここに生まれてきてくれた命。
あなたは命であり、受け継がれ受け継ぎゆく命としてここにいる。
だから、あなたが出会うべきものにすべて出会うことは、あなたが生きることそのものだと思うの。
見るべきものを見ること。
出会うべき人に巡り合うこと。
向かい合うべきものに、向かい合うこと。
そこであなたが見て聞いて感じることすべてが、この世界。
そこではあなたが苦労することがあり、私が守ってあげられないことがある。
見るべきものを見、聞こえるものに耳をすます。
人の声、ものの聲、歌う声、泣き声、すべてのここにいるよとささやく声に、耳をすます。
出会うものに心を開き、差し出された手を握り返すこと。
この世界で、あなたが夢見るものやあこがれを、まぶしいくらいに見せてあげたい。
夢は一人でつかむものじゃない。
夢は引き継がれてこそ夢であり、はかなくても夢だから。
かなわない夢にこそ意味はある。
同じ夢をみる誰かを、応援する力は、同じ夢を見る者にこそ宿るもの。
時代が違っても、顔も知らなくても、同じ夢に惹かれあうことが、生きる支えにもなるのだから。
かなう、かなわないという、目に見える姿に囚われる限り、見えない世界がそこにある。
夢見る力、しかもそれが誰かのために夢見ることであるとき、それは、一世代の時間にかなうものとは限らない。
そして、夢は本来、そういうものだから。かなうために、かなえるために見るのではなく、大きな夢に向かう人生を生きるための大いなる動機となる。
子どもが二十歳を過ぎて振り返って分かること。
たとえば卒業アルバムのなかのそこここにちりばめられているありふれた日常の一コマ一コマに、どこにでも写っているみんなといっしょのあたりまえの歳月の意味。
そのことは、通り過ぎた人に分かることでもあり、no-miさんやヒロさんのように、子どもがそのアルバムに一歩踏み出す前から、見えることもある。
「思い出」を、「親」が欲しいのではない。子どもにその思い出をもってほしい。なぜなら、親自身が、それが一番大事なものとして、自分の中の大事なものであることを知っているから。
それが一番大事な生き方のひとつだと思って生きているから。
そこでの人との出会い方をしてきた、そのやり方しか知らない、といってもいい。
「思い出」は、自分の人生の肯定なのだ。
我が子にどんな障害があろうと、そのことで他の子のしない苦労をするのだとしても、それも含めて肯定する覚悟をもっていたい。親がどんなに守っても守っても、守りきれないことはあると、忘れないでおく。
この子への信頼。この子と出会う子どもたちや大人への信頼こそが、この子を確かに守るものだと心から思う。
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