ワニなつノート

《不法滞在といわれる4才の子ども》



《不法滞在といわれる4才の子ども》



――無国籍、無戸籍の状態の子ども――



昨日、東京入国管理局に行ってきた。

私の家で暮らしたことのある4才の子どもが、「不法滞在者」であると言われた。

これから「入国警備官の違反調査」をし、「入管審査官の違反審査」を受け、「特別審理官の口頭審理」を受けた上で、「法務大臣の裁決」により、「在留特別許可」を与えるか、あるいは「退去強制令書発布・送還」の手続きを始めると説明を受けた。


その子は赤ちゃんのころ、私の家で暮らしていた時期がある。

始めは生後半年のころ二カ月くらい。
その時は親が離婚せずに家に帰ったが、その子が一才になったころ正式に離婚し、私の家で3カ月あまり一緒に暮らした。

その子が生まれて初めて「歩いた」のは、私の家のリビングで、そのときその場にいたのは、私と娘だった。だから私と娘にとって、その子は家族のように感じている。

先日、4才の誕生日を迎えた。


その子が、「不法滞在者」であると、言われる。

その子が、もう4年も「不法滞在」の状態にある、と言われる。

生まれてきたことが、「不法」なことのように聞こえる。


      ◇


その子の「母親」は、日本国が発行している「在留カード」を持っていて、入国管理局で、一年ごとに「更新」の手続きを行っている。

「母親」は不法滞在者ではない。


4年前、日本人の男性と結婚し、その子は生まれた。
一週間後に、市役所に「出生届」を出し、受理されている。

それから4か月後に、市役所は「出生届」と「婚姻届」と「胎児認知届」が、「不受理」と郵送されてきた。

理由は、「妻となる者の国籍が確認できず」、とある。


しかし、市役所の「住民票」には、母親の「国籍」がちゃんと記載されている。
「中長期在留者」という記述も記載されている。

しかし、その子が4才になった今も、その子は無国籍で、無戸籍で、無住民票で、無保険の状態に置かれている。


       ◇


母親も私も、何もしてこなかった訳ではない。

船橋市役所と習志野市役所と、児童相談所と、千葉の入国管理局と、東京入国管理局と、母親の国の大使館には相談してきた。

なかには、ずっと気にかけてくれている人もいるが、どうしたら、この子が、「国籍」と「戸籍」「住民票」をとることができるかは、誰も教えてはくれない。


その子は、4月には保育園に入園できることになった。

無国籍で、無戸籍で、無住民票で、無保険の4才の子どもの、入園を認めてくれたことには心から感謝している。

だが、母親とその子が、「無国籍」な状態は変わらない。


     ◇


もともとは、二十数年前に、その「母親」が生まれたときに、その両親がなんの手続きもせずに放置していたことが原因だ。それは分かっている。

だが、そのことを知る術は、その子にはなかった。

その子は幼稚園にも学校にも行けないまま、9歳くらいまで家で過ごした。
近所から児童相談所への「通報」で、「学校にもどこにも行けていない状態」が分かった。

それから、市役所で「住民票」を作り、入局管理局で「在留特別許可」を得て、小学校・中学校・高校に通った。その間に、児童相談所から私の「ホーム」にきて生活した。


だから、その子に「国籍がない」=「本国での出生証明がない」ことに、気づいた人は誰もいなかった。

もちろん、その子が自分で気づくわけがない。

なぜなら、日本の学校に通い、日本の市役所に住民票があり、年に一回の入国管理局での「外国人在留カード」の更新では、毎年、その「外国の人間」としての「認定」をされてきたのだから。


そんななかで、4年前に生まれてきた4才の子どもに何の罪があるのだろう。

何の「不法」「違法」があるのだろう。

どう考えても理不尽だ。


    ◇


もちろん、入国管理局の人も、その事情は理解してくれて、彼女への対応もとても丁寧で敬意あるものだ。いまは、そのことだけが救いだ。


だが、その子の無国籍、無戸籍、無住民票、無保険、を解消するには、まだ、時間がかかりそうだ。
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