ワニなつノート

ランドセルと高校と老人介護 (その1)

ランドセルと高校と老人介護 (その1)



3月11日を境に圧倒的な自分の無力感を抱えながら感じてきたこと。

大地震で人は死ぬ。
津波で人は死ぬ。
火事で人は死ぬ。
原発の事故で人は死ぬ。
そこで助かっても、避難所でも人は死ぬ。病院でも人は死ぬ。
寒さで、疲労で、病気で、家族も家もすべてを失ったショックで、そして、暖かい食事もなく、満足な治療もなく、薬もなく、明日どころか今日の安心もなく、人は死んでいく。

原発事故の避難で、障害者施設がまるごと千葉に移ったという記事が4月初めにありました。県の青年の家の今年度の予約数万人分をすべてキャンセルし、施設まるごとの人たちが避難できるという記事を読んで、良かったと私は思いました。

その二十日後、そこに避難していた11歳の女の子が、近くの海で溺れて亡くなりました。
特別支援学校の6年生の女の子。新聞には「重度の知的障害」があったと書かれています。
千葉の海から、福島の海へ、そして家に帰りたかったのだろうかと思いながら、先の「避難できた」記事にほっとした自分の鈍さを恥じるしかありません。

http://kids.ap.teacup.com/alicemiller/270.html


            


3月31日の読売新聞に、ままへの手紙を書きかけたまま眠ってしまった愛海ちゃんの写真がありました。「ままへ。いきてるといいね。おげんきですか」
http://kids.ap.teacup.com/applet/alicemiller/20110401/archive?b=1

5月10日、愛海ちゃんの記事の続報が載っていました。
5月10日が愛海ちゃんの誕生日で、5歳になったとありました。

3月の写真に写っていた手紙には「続き」がありました。


「ままへ。いきてるといいね。
おげんきですか。
おりがみとあやとりと
ほんよんでくれてありがと」

ままの名前は由香さん。32歳。


「ぱぱへ。
あわびとか 
うにとかたことか 
こんぶとか 
いろんなのお とてね」

パパの名前は文昭さん。39歳。

4月24日には、3本のろうそくを立てて、おばあちゃんと一緒に、妹の誕生日を祝った。
「あお、たんじょうび おめでとう」
妹の名前は、蒼葉ちゃん。

3月11日の地震と津波から2カ月が過ぎて、愛海ちゃんはいまおばあちゃんと二人で暮らしています。

【サクサクと、母譲りの器用な手つきでキャベツを刻む。ひざの悪い祖母に代わり、トイレットペーパーなどを配給所から自宅に運ぶ。一生懸命手伝いをしていれば、パパとママとアオに会えるのだと信じているように。
「ママ、かわいいね」。
時々取りだして見る写真を、胸に寄せた。
旅行先で撮ったスナップの中で、由香さんがほほえみかけていた。】 


          


多くの子どもたちが、親や家族を失い、人には分からない悲しみや不安や孤独を抱えながら生き続けていく。

私に「できること」を考えている、と書くのは違う気がする。その子どもたちの生きているこの社会で、私がどう生きていけばいいのだろうと、考えている、と書く方が自分の気持ちに近い、のかな…。

また、ブログを書こうと思う思いのなかで、何度も浮かんでくるのは、やっぱりどうしたって、地域の学校が子どもを、人を、分けてはいけないという思いです。
やっぱり、地域の学校の何より一番大事な仕事は、地域の子どもを分けない役割だと、心の底から思います。そのことが、大震災の時にも、津波の時にも、そして原発の事故の後にも、そこにいる様々な立場の人の生活を支える元になります。

        


先日、「高校はランドセル」だと気がつきました。その言葉の意味を、自分で考えています。そうして、さっきふと、老人介護も「ランドセルと同じ」だと気がつきました。
(つづく)
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