ワニなつノート

高校と、自分の居場所 (その9)

高校と、自分の居場所 (その9)


わたしがこだわっているのは、
「少数」の子どもを「助けたい」ということではありません。
その少数の子どもが、弱くて不幸で、
社会が守るべきだというのではありません。

うまく表現できないのですが、
中卒でも、高校中退でも、
立派に堂々と生きている人はたくさんいます。

自立支援ホームでの仕事は、
中学を終え養護施設から社会に出ていく若者を
支えるという仕事でしたから、
わたしはそうした若者と正面から向き合いました。

だから、高校を選ばずに生きることを、
支える仕組みがもっとあるべきだとも思います。


わたしが高校の定員内不合格にこだわるのは、
「少数者」の問題であるよりは、
「わたしたち大人としての多数者、
高校教育まで受けることができた境遇の多数者」
としての問題です。

うまく表現できないと、文章がややこしくなるので、
一言で言ってみます。

0.0006%の子どもを見捨てる「高校教育」が、
残りの99.994%の子どもたちを
本当に大事にする教育であり得るだろうか。

わたしが疑っているのは、そこのところです。


   □     □     □

みんなと同じように高校に行きたい。
みんなと同じ高校生になりたい。
そして中3の2月、3月、数回の受験に臨み、不合格。
同級生は全員、高校が決まる。
学年全員が高校が決まる。
自分一人がどこに行き場がないままの卒業式。
卒業式の後の2次試験も不合格。
3月末の定時制の追加募集に、一縷の望みをかけて、
14、15歳の子どもが受験に臨む。
3回も4回も受験するということが、
どれほど必死の思いであることか。

それでも、不合格にする。
席が空いていてさえ拒む。

席があるのに、なぜ自分だけ座らせてもらえないのか。
せめて、その理由を知りたいと思っても、
だれも説明してはくれません。
席が空いているのに座らせてもらえない理由を、
だれも教えてはくれない。


……
前回のトリアージの説明に、次のようなものがありました。

「負傷による苦痛について、
訴える体力・能力を喪失している重傷者よりも、
軽傷者の方が訴え自体は激しいため、
重傷度の迅速な判定が重要となる。」


本当に助けを必要とする者の中には、
自分ではそれを訴える力がないこともあるのです。

0.0006%
756人という数字は、そういう数字ともいえます。

一番、教育を必要としている子どもを見捨てる学校が、
本当に子どもを大事にする教育ができるわけがありません。

   □     □     □


その証拠の一つが、高校中退の数です。

高校中退者の数が10万人を超えたのは、
1982年です。
1985年には11万人を超え(2.2%)、
1989年には12万人を超えています(2.1%)。
2007年には7万台ですが、
それは子どもの数が減ったからであって、
2.1%という数字は変わりません。

一定の子どもを入試で選別する高校は、
さらに中退と言う選別をする場所です。

毎年、10万人、10年で100万人を、
退学させる「制度」が、
このままでいいはずがありません。

0.0006%の子どもを見捨てる高校だから、
2~3%の子どもを簡単に切り捨てるのです。

もちろん、外見上は、勉強ができない、単位が足りない、
出席日数が足りない、やる気がないと、
いくらでも「生徒個人の責任」にする理屈は
用意されていることでしょう。

言葉や理屈を持っているのは、いつだって大人の側です。
学校の側、先生の側です。

でも、大事なことは、言葉や理屈では、
未熟であるからこそ、
もっとも教育を必要としているとも言えるのです。

「負傷による苦痛について、
訴える体力・能力を喪失している重傷者よりも、
軽傷者の方が訴え自体は激しいため、
重傷度の迅速な判定が重要となる。」



   □     □     □

今日の最新ニュースです。

12月7日 (毎日新聞)

<虐待>17歳以下の死亡例、疑い含め387件
目立つ3歳児以下

大学の法医学教室や監察医機関が
00~06年に手掛けた17歳以下の解剖例で、
虐待による死亡か、その疑いの強い死亡が
計387人に上ることが、
日本法医学会の調べで分かった。

うち113人は繰り返しの暴行や
育児放棄(ネグレクト)による死亡で、
約8割は0歳児を中心とする3歳以下だった。

学会は
「社会とのかかわりが薄い3歳児以下の子どもを、
社会がどう見守るかが課題だ」
と指摘している。


   □    □    □

いつも、本当に援助を必要としているのは、
「助けて」と言えない子どもたちだということ。

その少数の子どもたちに、手を差し伸べること。

一番、人の手を必要としている子どもに、
手をかす大人が当たり前にいる社会、学校だけが、
すべての子どもたちにとって、
安心できる居場所になり得るのだと思うのです。
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