ワニなつノート

「分ける教育」から「捨てる教育」の完成(その4)

「分ける教育」から「捨てる教育」の完成(その4)


21世紀日本の、「高校選抜制度と特別支援教育」の連携は、
もっとも「愚かな教育」として、評価されるようになります。

もっとも愚かなお金の使い方をし、
もっとも愚かな教育を実施し、
毎年ごく少数の子どもを捨てるための数字を
計画している時代が、いま、です。

そのことを証明するために、一つの資料を紹介します。
面白くもなんともない文章です。
中身は支離滅裂な文章です。
特別支援学校の校長の考えていることは、
こんな程度のことだと分かります。


    □     □     □

養護学校過大化に関する提言

平成20年12月25日
神奈川県教育委員会教育長殿

神奈川県立特別支援学校校長会 会長 鈴木文治



1 養護学校を適正規模に戻すための問題提起


◇ 平成22年度に向けた高等部入学選抜より、
各県立養護学校の高等部の募集人数は原則として
高等部使用可能教室×1学級8名を受け入れ可能上限とし、
それ以上には設定すべきでないと考えます。

◇ 同じく義務教育段階の児童生徒の入学希望者については、
養護学校本来の設置目的から、養護学校でなければ
指導や支援が困難な児童生徒に限定するものとし、
市町村就学指導委員会と調整を図るべきと考えます。



2  提言の背景


知的障害を行う特別支援学校(以下、知的障害養護学校といいます。)
への入学希望者の急増(本県では課題規模化と呼んでいます。)は
平成10年頃を境に大都市圏を中心に起こり、
今では全国的な傾向となっています。

本県でも平成10年度から19年度までの10年間で
盲・ろう・養護学校全体の児童生徒数は
4561人から6356人(139.4%)と
1795人増加していますが、
その大部分は知的障害養護学校への入学者の増加
と見ることができます。
(平成19年度版神奈川の特別支援教育資料より、以下同じ。)

この間県は、児童生徒の通学負担の軽減を当初の目的として新設養護学校の建設に着手し、平成11年度に茅ヶ崎養護学校、16年度に津久井養護学校、18年度麻生養護学校、19年度金沢養護学校を開校し、肢体不自由養護学校2校に知的障害部門を新たに併設するなどの対応をとってきました。

しかし19年度までの新設4校と新設知肢併置校の児童生徒数を合計しても657人と前記の増加分を吸収するにはほど遠い状況です。そこで窮余の策として平成16年度より県立高校等の教室を借りて「分教室」を作り対応を図りましたが、これも1学年15人の募集人員では平成19年度現在5校設置で実質137人にとどまり、結局この差の約1000人あまりの子どもたちは各養護学校が小中高ともに受け入れ枠を広げることにより、かろうじて入学希望者が行き場を失う事態を回避してきました。

ちなみに平成5年度の「新たな養護学校再編整備検討委員会」の提言によると、本県養護学校の適正規模は小中高あわせて知的障害単独校は100~130人程度、知肢併置校で130~160人程度とされています。事実多くの養護学校における設置時の想定児童生徒数(学校規模)はおよそこの人数に対応しています。ところが平成20年度現在もっとも児童生徒数の多い瀬谷養護学校では全校生徒323人と、想定人数の3倍を超えており、その他にも児童生徒数300前後の養護学校が保土ヶ谷(295)、麻生(293)、など2校を数え、その他200~250人の学校が鶴見(263)、相模原(262)、座間(234)、みどり(217)、金沢(216)、小田原(212)、伊勢原(201)、150~200人の学校は茅ヶ崎(191)、武山(179)、平塚(174)、高津(164)、湘南(161)、と適正と考えられる規模をはうかに超えた児童生徒を受け入れている現状があります。

各校においては想定規模に倍する児童生徒を受け入れるため教室数の不足に苦しみ、特別教室をつぶして普通教室に転用する、余剰スペースをすべて教育の場に振り向ける、中には廊下で授業を行うなどの無理を重ねてきました。

さらに現状では本来1学級8名以下であるはずの高等部における指導学級の定数を10人、11人と水増しする以外、受け入れの方策がなくなっています。一方、同じくここ数年、義務教育段階の児童生徒が養護学校に入学を希望する傾向が顕著となり、小中学部では1学級定数6名であるため、ますます教室が不足します。

各校とも義務教育でも高等部教育においても「誰ひとりとして切り捨てない」との支援教育の理念を踏まえ、また「行き場のない子どもを作らない」という県の方針に応えて無理な受け入れを重ねてきました。

ところがこうした度重なる過剰な受け入れのため学校環境は荒廃し、教室だけではなくトイレ、水道、給食といったライフラインも十分対応できていないまま、養護学校の教育環境は最悪の事態を迎えています。

この結果、過密化による影響や余裕のない施設のため一部の子どもたちが感情のコントロールがうまくできなくなり、自分自身や他児、教員を傷つけたり、ものを破壊するというような事故も頻発しています。かくして本来きめ細かく、手厚い教育を提供する場としての養護学校の教育の根幹が大きく揺らいでいます。


3 課大規模化の今後の展望

平成18年度の以降の高等部への入学希望者の推移を見ると、
知的障害の高等部生徒だけで年に100人から150人ずつ増加

傾向が見られ、課大規模化は解消するどころか、
ますます悪化することが危惧されています。

現在小中学校特別支援学級(個別支援級)に在籍する児童生徒の数の推移や人口動態などを勘案すると、平成28年度には本県の特別支援学校児童生徒数は合計9332人と推計され、10年後の平成30年には1万人の大台に近づく見通しです(子ども教育支援課調べ)。

それに対して前記養護学校再編整備計画では平成5年度から順次11校の特別支援学校を新設する必要があると答申しました。ところが実際には神奈川力構想実施計画によると平成22年度に高等部のみの養護学校が横須賀に1校開校、23年度に総合養護学校的な構想の養護学校が相模原に1校開校の予定があるだけで、それ以降の計画は示されていません。

また、分教室は平成19年度の「特別支援教育プロジェクト会議」の方針により継続・強化の方向は出たものの、年に3校の開設ペースでは課大規模化の緩和・解消には大きな影響は期待できません。そうなると現状より10年間で4000人近く増える見込みの入学希望児童生徒を、新たに開校される新設養護学校、分教室だけで吸収することはまったく不可能であると断定せざるを得ません。

一方繰り返し述べるように、既存の養護学校はもうすでに適正規模の2倍~3倍の児童生徒を受け入れ、飽和状態を越えていて教育環境は最悪の状態にあります。

したがってこれ以上の無理な受け入れはとうてい不可能であるばかりか、早急な課大規模化の緩和もしくは解消を図らないと、大きな事故につながりかねない大きな危険を絶えずはらんでいるような状況です。

そこで、県立特別支援学校校長会(県特長)でも繰り返し協議を重ねてきた結果、残念なことですが、現在の県立養護学校の規模だけでは、これまでの「すべての子どもを受け入れる」という基本方針を維持することが不可能になったと判断し、今後徐々にでも適正な学校規模を取り戻すために以下の提言を表明することといたしました。


4 既存の養護学校のこれ以上の教育環境悪化を阻止するための提言および要望


◇ 高等部入学選抜に対する提言

・ 今後各校において現時点で設定している以上の教室確保が不可能である以上、これまで行ってきたような過剰な入学者募集はするべきではないと考えます。

・ さらに過密化を徐々にでも解消するため、今後入学定員を各校ごとに定めることも考慮に入れて検討する必要があります。

・ 最近の傾向として療育手帳を持たない、あるいは発達障害、不登校など、通常の教育の狭間にある(グレーゾーンなどとも呼ばれることがあります)子どもたちが手厚い教育を求めて養護学校(特に分教室)を希望してくる傾向があります。これらの子どもたちは後期中等教育全体の課題としてとらえるべきと考えますので、養護学校本来の設置の趣旨、教育内容、方針に立ち返り、入学資格を療育手帳の保持を条件とするほか、一定の選抜条件を設定することが必要と考えます。

・ 県立高校においては、神奈川の支援教育の理念に沿い、クリエイティブスクールや新構想高校などの教育内容の工夫により、必ずしも養護学校への進学が適切とはいえない、行き場を失っていた多様なニーズのある生徒達の進路を幅広く確保し、県民の後期中等教育の充実への期待に応えるべきと考えます。

・ このことに関連し、中学校の進路指導にあたっては、個々の生徒の実態に合わせた進路指導をきめ細かく進める中で、養護学校の存在意味や過密な状況を考慮いただきながら、十分に教育相談を実施してほしいと切望します。


◇ 義務教育段階の児童生徒の養護学校への就学に対する要望

・ 市町村就学指導においては、適正就学とインクルージョンの理念に沿って、義務教育段階では基本的には地域で学ぶことをめざし、障害のある子どもの小中学校への受け入れをこれまで以上に推進することを要望します。

・ 市町村教育委員会および小中学校においては、通常の学級における特別支援教育のいっそうの充実を図るとともに、特別支援学級(個別支援級)の環境整備・充実に努めていただくことを希望します。


5 今後の課大規模化の緩和に向けての提言および要望

◇ 県教育委員会に対する提言

・ 繰り返しになりますが、既存の養護学校における教育環境の悪化はすでに限界を超えています。さらなる課大規模化の緩和・解消を図るとともに、既存養護学校の施設設備の改修や近代化に着手する必要があります。

・ 新たな養護学校(特別支援学校)の設置を進めるにあたり、県有施設や市町村施設等の積極活用を図ることで迅速な設置を実現し、高等部養護学校、川崎市の例などにもある中高一貫養護学校など、具体的で多様なニーズに対応できるよう柔軟な発想で企画する必要があると考えます。

・ 分教室は交流的要素があり、新たな後期中等教育における支援教育の形態として期待が持てますが、現状では組織運営、施設設備等に大きな無理があります。借用教室数などの見直しを図るとともに早期に分校化等の検討に着手すべきと考えます。

・ 高校における多様な生徒の受け入れをこれまで以上に研究し、高校管理下における支援教育のシステムを早急に実現することが必要と考えます。

・ 各市町村、および各政令指定都市に対し、今以上に積極的に支援教育を充実させ、地域で学ぶ子どもたちのニーズに応えるよう働きかけてください。

・ 一方県立養護学校等では地域のこうした支援教育を推進するための支援機能を充実させて積極的に連携を図り、小中学校、高校を障害児教育のノウハウを持って支援する体制を整えます。


◇ 市町村教育委員会への要望

・ 市町村における就学指導委員会のあり方やそのシステムの充実、就学相談および就学指導のなお一層の充実を図り、適正な就学指導に努めるとともに市町村教育委員会にあっては、傘下の各学校の教育を支援し、誰もが地域で学ぶ教育環境を実現してほしいと願っています

・ 小中学校における支援教育担当者の専門性の向上、人材確保、補助指導員の配置の拡充など教育の条件整備を図っていただきたいと考えます。

・ あわせて、多様な児童生徒の教育的対応を充実させ、不登校や学校不適応など可能な限り地域で問題解決を図ってほしいと思います。

・ 特別支援学校を持つ市町村にあっては、市民への責任としてその発展充実に努め、設置者を同じくする小中学校等と連携して地域における支援教育の中核として拡充させてほしいと思います。

・ 一方県立養護学校等では市町村立の養護学校や特別支援学級と連携し、地域支援機能を充実させることによって多様なニーズに応える教育を積極的に支援する体制を整えます。

(神奈川県立特別支援学校校長会)
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