「定員内入学拒否」
先生が子どもを学校から追い出すということ(その1)
この国で、21世紀に生まれた子どもたちが、次々と15歳になる。
進学率99%の無償化の公立学校とは、子どもが無条件に「学べる学校」だ。
中学を卒業したら、同級生のみんなが行くところを、高校という。
「後期中等教育」の保障は、子どもの教育を受ける権利の世界標準でもある。
「高校は義務教育じゃない。受検がある」
そのことは、子どもたちも知っている。
だから、受検は受ける。
友だちみんなが同じ学校に行ける訳じゃない。
だけど「高校生」になりたくない子はいない。
だから、夜の学校でも従う。逆らいはしない。
そこで、「定員」が空いていても、「入学拒否」するということ。
それがどういうことか。
高校の先生たちは、心底、「分からない」らしい。
空いている席に、子どもを座らせないということ。
それは、空いている机と椅子を壊して燃やすということ。
あなた方が、21世紀に生まれた子どもたちに、何をしているのか。
82歳のボンちゃんが教えてくれる。
□
私がこの病気になったのは、昭和22年、ちょうど小学校六年生の時。疑いがかかっちゃって、一人残されました。
…家に帰る途中、農業用水のところで「休む」と父親が言うんです。「一緒にここで死のう」って。私は、急に言われたって良く分からないし、「いやだ」と言って拒否しました。
夏休みが明けて、…「石山、おまえもう帰れ」って言うんです。なんでかって聞いたら、「汚い、病気」って言ってたね。もう汚い病気だから、学校に来る必要はないから、即刻帰れ、と言って。…言われてもわけが分からないですからね…。
「明日から来るな」と藁草履が脱げそうになるくらい突き飛ばされました。手をつこうとすると「建物に触るな」と追い打ちをかけました。屈辱だったねぇ…。
その日は家に帰ったんだけど、ひどい目にあったことは家族にも言えなかったの。
次の日、父親が「おまえ、学校は今日休め」って言う。…
父親は、わけを言わないで「休め」って言うけど、僕は学校が楽しかったから、行ったんです。
それで、遠巻きに教室を見たら、僕が昨日まで座っていた席。
椅子もなけりゃ、机もない。
「なんで席がないんだろう」って言ったら、女の子が「そういや、昨日の夕方、校庭で先生が机と椅子を壊して燃やしてた」って言うのよ。「なんで先生が机や椅子を燃やしていたのか、昨日は分からなかったけど、石山くんの机だったんだなあ」って。…
そしたら一人が、「じゃあ、いいや、僕のところ座れよ」と言って、お尻を半分こに座って…。
そこに先生が入ってきて、僕を見るなり、すごい真っ赤な顔してねぇ、「なぜ来た!」。
いきなり棒を持ってきて、「立て」と言って、触ろうとしないんです。
「お前は、もう来るな。汚い。汚い」ってしきりに言うんだよ。…
「二度と来るなよ」と言われて、それが、学校を追い出された時の最後でした。
※ 『ボンちゃんは82歳、元気だよ! あるハンセン病回復者の物語り』石山春平 社会評論社 2018年10月5日発行
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