ワニなつノート

勝手にワニなつ翻訳・『技法以前』(2)

勝手にワニなつ翻訳・『技法以前』(2)

さっそく「翻訳」につまずいています(>_<)

昨日の定例会で、ちょうど同じような「相談」がありました。
詳しくは書けませんが、子どもがいじめにあっていて
転校させてあげたい…。
ただ、いまの中学を選ぶときに、
特別支援教育を勧められたこともあり転校が可能かどうか…。
という感じの話でした。


転校そのものは、難しくはありません。
特別支援教育を断ることも、親の覚悟さえあれば簡単です。
でも、私たちは少しためらいました。
「子どもの声」が聞こえなかったから。

「転校させてあげたい親の気持ちは分かったけれど、
子どもはなんて言ってるの?」と聞くと、
「子どもは今の学校にいたい」のだと。

それじゃ、まだ入学して3カ月…、
いろんな経緯があって、本人がいまのところを選んでいるのだから、
気をつけて様子をみるしかないんじゃないかな。
転校を決めるのは本人なんだから。

そんなふうに話すと、
「でも、子どもはまだ未熟だから」と返ってきます。

でもね、どんなに未熟でも、
今の苦しみを自分で引き受けてがんばっているのは、
その未熟な子どもなんだから、私たちは可能な限り、
その未熟さを見守りながら考えていきたいと、
そんなことを話しました。


      □    □    □

「技法以前」向谷地生良 医学書院 (P35)

彼は高校のときから「きもい」という幻聴や、
人の視線が気になりはじめた。

数回の入退院を経ながらも家庭内での爆発がおさまらず、
壁に穴があき、家族への暴言も繰り返され、
そのたびに薬が増えるという悪循環に苦しんでいた。

家族は「母親の顔を見たらムカムカする」という
彼の言葉を真に受けて、主治医とも相談のうえ、
必死の思いで爆発予防の手段をとった。

それが「話をしない」という対処方法だった。

私が相談を受けたのは、爆発の芽を摘むために
そんな対処方法を家族がとりはじめて二ヶ月を過ぎたころだった。
彼が人を拒絶し自宅にこもってから、
すでに三年ほどが経っていた。

この手の相談で大切なのは、家族を含めた第三者からの情報は、
本人の印象も含めて参考にはするが、
「真に受けない」ことと、
「現場で考える」ということである。

案の定、人と会おうとしないという事前情報とは違って、
突然お邪魔した私を彼は意外なほどすんなり受け入れてくれた。
受け入れられたポイントは「相談にのる」ではなく、
「相談にきた」ところにある。


「はじめまして、向谷地と申します。
突然おじゃまして申し訳ありません。
じつは私はソーシャルワーカーをしていて
爆発に悩む人たちと当事者研究という活動をしています。

今日、相談にきたのは、爆発系の統合失調症をかかえながら
一生懸命に暮らしているあなたから、
いろいろと経験を教えてもらいたいからです」

そう言うと彼は
「ぼくに相談ですか?」と一瞬戸惑いながらも、
「そうですか、どうぞ」と茶の間に招き入れてくれた。

彼は、私をソファーの置いてある茶の間に案内し、
お茶の用意をはじめた。
わたしはその仕草をみて、
「これはいける!」という確信を持った。

その彼に、「いま、やりたいことはなんですか?」
と尋ねると彼は言った。

「親と話がしたいです」


私はこの言葉が今も忘れられない。
彼は爆発からの脱却と家族とのコミュニケーションの回復を、
家族の中でもっとも切望していたのである。

私が彼に伝えたのは、同じ苦労をしている仲間の経験からして
「打つ手はある」ということだった。
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