チェックリストメモ 学習と記憶(001)
むかし、大学で教育学を専攻しました。
でも、「学習」とは何か、というもっとも肝心なことを長いあいだ分かっていなかったようです。
同様に、「記憶」とは何か、についても、私は分かっていませんでした。
そもそも、「学習」や「記憶」について、自分の中に確かな定義がなかったのだから、「知的障害」とよぶ子どもたちの、「学習」や「記憶」についても、ずいぶんと間違った見方をしていたのだと思います。
自分は差別しない、自分は障害のある子どもたちの味方でいたい、と願ってはきたけれど、子どものころに刻み込まれた「偏見」は残ったままでした。
私が子どものころは、「精神薄弱」や「知恵おくれ」という言葉がふつうに使われていました。
それがいつのころからか、「知的障害」という言葉に変わったけれど、差別的な中身はまったく変わってはいません。
それは、「しゃべれない」「よめない」「かけない」=「学習能力がない」という理解であり、
「おぼえられない」「すぐにわすれる」=「記憶力がない」という理解です。
学習とは、あいうえお、か?
学習とは、漢字の読み書きができることか?
学習とは、算数ができることか?
記憶とは、ことばか? 名前や顔や地名を覚えていることか?
記憶とは、質問にことばで答えられることか?
記憶とは、テストで点数が取れるということか?
去年のある日、ふいに頭の中に浮かんできたのは、20年近く前に読んだ本の一節でした。
《学習とは経験によって生ずる行動の変化で、その経験の保持が記憶である。》 ※
その一言は、わたしのいままでの経験と了解と、子どもたちから教えられたことすべてを含んでうなずける、「学習」と「記憶」の説明でした。
子どもにとって、普通学級という「所属」と「経験」がどれほど大切であるか。
そして、「0点でも高校へ」という主張に、何の遠慮も迷いもいらないということを、その言葉は、わたしにふかく教えてくれました。
そのことを言葉にしたいと思ってきたのですが、かなわないまま年を越してしまいました。とりあえず、ここに今年の課題としてメモしておきます。
※『記憶を消す子供たち』 レノア・ティア著 草思社
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