ワニなつノート

就学相談カルタと工藤さんの詩

若いころ、工藤さんの書いたものが好きで、ほとんどの作品を読んでいたつもりでした。
貸出用に同じ本を二冊買ったりしていました。
でも、「花」を読んだ記憶はありませんでした。

本を取り寄せたら、2002年発行の詩集で「未発表」に分類されている詩でした。


未発表の詩は五つあるのですが、不思議なことに、どれも「就学相談カルタ」の世界に重なりました。

カルタは、障害のある子どもたちのことを、ことばにしているようにみえますが、工藤さんの詩と重ねると、ただの子どものことをことばにしているのだと改めて分かります。

という訳で、勝手に工藤さんの詩でカルタを解説してみます(>_<)



      ◇

《こ》『子どもはみんな「ふつうの子ども」』
《ふ》『ふつう学級とは、ふつうの苦労をするところ』

      ◇

わたし?
           工藤直子


うれしいのも たのしいのも
「わたし」
いたいのも つらいのも
「わたし」
それを
泣くのも 笑うのも


「わたし」のやること
……だな

          
          ◇

《き》『傷つくことも大事なものがたり』

          ◇

こころ
          工藤直子


「こころが くだける」というのは
たとえばなしだと思っていた ゆうべまで
今朝 こころはくだけていた ほんとうに


ひとつひとつ かけらをひろう
涙がでるのは
かけらに日が射して まぶしいから


くだけても これはわたしの こころ
ていねいに ひろう


         ◇


《わ》『分からない授業はかわいそう?』
《か》『かわいい子には ふつう学級を旅させよ』

         ◇

わからん
           工藤直子


手を のばしてみる
その手の 指さすむこうに
なにが あらわれるか……わからん


足を踏みだそうと 宙に浮かす
その足が 着地する世界は
わたしを どこに導くか……わからん


それが まったく わからんので
それが まったく わからんからこそ
まず 手をのばし 足を踏みだす

「わからん」が原動力



         ◇

《い》『いっしょがいいなら なぜ分けた』

         ◇

あいたくて
         工藤直子

だれかに あいたくて
なにかに あいたくて
生まれてきた
そんな気がするのだけれど

それが だれなのか なになのか
あるのは いつなのか
おつかいの とちゅうで
迷ってしまった子どもみたい
とほうに くれている

それでも 手のなかに
みえないことづてを
にぎりしめているような気がするから
それを手わたさなくちゃ
だから

あいたくて


         ◇

《む》『向かい合うものに応じて 育つもの』

         ◇

一粒

          工藤直子


風が背中を さっとなでていく
見あげると
あ、空が わたしを抱いてくれた


おおい 空
わたしも あなたを抱こう

空を抱いて
わたしも「景色の一粒」になろう



         ◇

《り》『理解は あとから ついてくる』

         ◇

時間
          工藤直子

はたけに 野菜の芽が出た
2センチほどの双葉でバンザイして
となりの杉に手をふっている

わたしの短い「じかん」と
あなたの長い「じかん」と
いま ここで であいましたね
というように
 

         ◇

《い》『いいところなど どこにもない。今いるここを いい所に』

        ◇



         工藤直子


わたしは
わたしの人生から
出ていくことはできない
  

ならば ここに
花を植えよう




※ 『工藤直子詩集』 ハルキ文庫 角川春樹事務所 680円
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