ワニなつノート

㊙定員内不合格根絶計画(其の十五)


㊙定員内不合格根絶計画(其の十五)


前回は、広島県教育長だった人の、
「高校は希望する生徒をみんな受け入れようと、
そういうふうに、入試も、高校現場も変えていこう」
という考えを紹介しました。

そうは言っても、それは「普通の子ども」の話であって、
「障害児」は別に考えられているのが、ふつうでした。

今年、大阪の定時制高校で、4月になってから、
異例の追加募集をして、
子どもたちの居場所を保障しようとしました。
それは確かにすごいことだと思います。
でも、大阪でも「知的障害児」の高校は「別枠」扱いです。

ところが、寺脇さんの話は違います。
前回の【高校入試は廃止できる】の次のページに
書かれているのが、障害児の高校進学についてでした。

(o|o)  (o|o)


【障害をもつ子も学校を選べる】


障害をもった子どもについても、
できるかぎり高校へ受け入れることを、
広島県では県民の皆さんにお願いしました。

認めてもらえたので、
障害をもつ子が一人でも入ってきたたらエレベーターを付け、
介助が必要な場合には、非常勤職員を
一人加配していくことにしたのです。

ただ、「加配した先生だけがその子の介助をする
なんてことはしないでほしい。
今まで30人の先生でやっていたのなら、
31人になるわけだから、
31分の1ずつその子の面倒をみるという
学校教育をしてもらいたい」と現場にはお願いしました。

実際は、広島県の高校もそれまでは、
重い障害をもった子どもはあまり受け入れてこなかったのです。
受け入れてみたら、他の子どもたちがその子の車いすを押したり、
助けてあげたりしていきます。
新しい学校の風景が生まれました。

ある高校に足の不自由な子が入ってきた時、
「手すりを設置しようか」と学校側が申し出たら、
その子は「僕は手すりがなくても歩きます。
僕のために手すりを作ってくれるのはありがたいけれど、
どうしても困ったら、お願いします」と言ったそうです。

私もその学校に行った折に見かけましたが、
次の授業へ移る時に、教室の移動には、
他の子どもたちが荷物を全部持ってあげて、
その子は自分の力で前に進んでいきました。

その子は学校では少林寺拳法部に入っているのです。
少林寺拳法部で発表会があって、
皆、少林寺拳法の形を披露するのを、
彼は椅子に座って見ているだけだけれど、
こうして参加することで仲間だと思えるから
うれしいのだそうです。
他の部員も、彼を仲間だと思っています。

こういう教育の仕方もあるのです。
型にはまって考えないことが大事です。
文部省も教育委員会も、先生もこれまでは
型にはまって考えていたのです。
大事なことは、子どもが何を望んでいるのかということです。

逆に、障害をもった子を高校で受けいれるようになったら、
来る子がいなくなってしまうのではないかと
障害児学校の先生が心配しました。
「みんな高校にいってしまうだろう」と。
そんなことはありません。

高校は高校で、障害児学校は障害児学校で、
それぞれの最高の教育をめざしたら、
障害児学校にいきたいという子どもも出てきます。
普通の高校に行きたいという子どもも出てきます。
それぞれの希望をかなえていくことが大事なのです。

広島県の場合は、95年度から制度を変えたわけですが、
やっぱり障害児学校で学びたいという子も出てきました。

広島県では、学習する側の希望を、制度や予算が許す限り、
なんとか叶えていこうとしているのです。



『なぜ学校に行かせるの?』
寺脇研 日本経済新聞社 1997年発行
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