ビバ!迷宮の街角

小道に迷い込めばそこは未開のラビリント。ネオン管が誘う飲み屋街、豆タイルも眩しい赤線の街・・・。

瀬戸内の城下町(丸亀市)

2010年07月14日 | 赤線・青線のある町
 瀬戸内に面した香川県は琴平市金毘羅宮参りの帰りに、予讃線の丸亀駅に降りて、散策してみました。


 丸亀駅の北側は湾沿いの港町で、関西との流通はもとより、江戸時代東のお伊勢参りと西の金毘羅参りで人気を二分した参拝客を乗せた金毘羅船が停泊し、大いに賑わった名残として、古い宿が今も沢山軒を連ねます。また駅の南側は、日本一高く築かれた石垣で有名な丸亀城がそびえ、戦火に煽られなかった城下町が江戸時代からの、町並みの面影を留めています。ただ残念なことに殆どがシャッター通りで、空き店舗の老朽化も著しく、観光地としての魅力を欠いています。
 
 和風、洋風の建物を持つ、古いお菓子屋さんの洋館部分。右の建物は眼鏡屋さん。

 黒いタイルの大きな商店は現在NPO法人によってイベントスタジオとなっているようです。

 今回の散策の目的は丸亀駅、北側にある新町のカフェー街(遊郭街)跡を見る為です。丸亀のカフェーの存在を知ったのは、もう20年も前の事。たまたま見た新聞の記事で、「港町に残る古い洋館のアールデコ様式のステンドガラス」と書いていたのに興味を引かれて、わざわざ遠出をして見に行きました。その当時はカフェーを、前掛けした女給さんが銀のお盆でお茶を出す場所だと思っていました。それはカッフェーで、カフェーではありません。しかしステンドグラスのはまった洋風のカフェーを数軒、撮影してもはや満足。ついでに今度は駅の反対側、洋館や「うだつ」という火災よけの漆喰の装飾がある町屋作りの店舗が並ぶ商店街の中にある、古めかしい不動産を撮影していると、中からちょび髭の自由業種の二人組が出てきて脅された事など思い出します。
 
 

この光景にはドキっとします。カフェー街跡にある「厳島神社」ですが、鳥居と玉垣の中にバラックが建って集落を築いています。ここでも客を引く女性がいたのでしょうか?露天商がそのまま居ついてしまったような、なんとも説明がつかない光景ですが、瀬戸内には狭い境内に民家が立ち並ぶこんな場所が他にもあるようです。

 今回、久々に丸亀に訪れて、犬にすら会わない町の静けさに仰天し、悲しくなってしまいました。遊郭町だった海沿いの新町も、開発はなく、やはりカフェー跡は減っていました。




 崩れかかっていますが、華やかな手すりの装飾が遊郭のようでもあり、また芸者を呼ぶお茶さんのようでもあり・・・。

 戦後は、遊郭町(赤線)の整備にあたり、格子戸越しに女給さんが客に媚を売る、和風建築での営業は人道的でないと廃止され、1階に洋風のホールとカウンターを持つ開放的なカフェー(特殊飲食店)を構えていたようです。こちらの遊郭町は関西方面の建物の業者さんが内装外装を担当したのでしょうか?とても華やかなアールデコのデザインです。あまりにも洒落ているので本当に大正時代からあったのかと思ってしまいます。


 津坂洋服店です。丸窓に施されたアールデコの意匠、すすけていますが色違いのステンドグラスの入った出窓などこのように優美な店舗は再現不可能なのではないでしょうか?惜しくも現在取り壊しになったとか。

 20年前に中に入ってお邪魔したとあるクリーニング店では、葡萄模様の建付けのしっかりしたステンドグラスが一階の奥に何枚も入っていました。お店の人は、「そういうものが好奇の対象になっても今の商売には関係ない。」と呟くように言っていましたが、そのお店は無くなってしまったのか、今回見当たりませんでした。次訪れた時には、この町がどう様変わりしているか気になる所です。 こちらの建物はしっかりリフォームされていて目を楽しませてくれます。
  


春駒の恐ろしいまでに鮮やかな青いタイルに衝撃を受けました。
今日の実が明日の虚と入れ替わる時代を乗り越えた花が、港町の水際にその幻影を移したようなそんなインスピレーションを得た旅でした。




 

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