ビバ!迷宮の街角

小道に迷い込めばそこは未開のラビリント。ネオン管が誘う飲み屋街、豆タイルも眩しい赤線の街・・・。

秩父ロマン

2012年10月14日 | 赤線・青線のある町
 山に囲まれた埼玉県の秩父は、市街地を流れる川の周辺に形成されたひな壇状の街です。34箇所観音霊場を始め、市街地には秩父総鎮守の「秩父神社」、山間には「宝登山神社」、「三峯神社」などがあり、見所は豊富です。この3つの神社には江戸時代から伝わる社殿に破風を飾る豪華絢爛な木彫の装飾(懸魚)が施されています。

秩父の長瀞にある「宝登山神社」は白地に極彩色の龍の木彫。
 

秩父神社は、家康公によって建てられているので、日光東照宮の木彫の装飾で名高い左甚五郎による「つなぎの竜」の彫刻などを見る事ができます。江戸時代のこうした寺院における彫刻は、様々な、なぞ賭けを見るものに与えます。鎖で繋がれた竜…川を中心とし、一筋縄ではいかない修験者達が山間部に居たと言われるこの秩父は、幕府にとってまさに繋ぎの竜そのものだったのかもしれません。
 

 町並みは普通に古ぼけた町ですが、50年前にタイムスリップしたようだ・・・と言っても大げさではありません。西武秩父線の終点、西武秩父駅の近くには34箇所観音霊場の13番「慈眼寺」があります。本堂の観音様の隣にはお薬師様の眼病治癒のお堂が奉られています。こじんまりとしたお寺ですが、これが市街地のお寺かと驚く程のひなびた佇まいに驚かされます。明治時代に建てられた本堂には、秩父独特の懸魚が施されています。琴の名手応婦人と龍の模様は、秩父の名物「夜祭」の主役、華麗な山車を飾る懸魚でも見ることができます。
  

 慈眼寺の裏側の路地はとても怪しく必見です。古くからの宿場がある大通りには、木造建築の旧遊郭(赤線)があるようですが、それとは別の青線が駅やお寺の傍に出来たと仮定すれば、だいたいこのあたりではないかと思うのですが、推測の域を出ていません。ただの民家だとしたら御免なさい。
  

狭い路地に所々にある不思議な作りの建物や色っぽい意匠などに、もしかしたら・・・と思いながらの散策でした。
 
 
 白壁の蔵造の本堂がモダンな風情を漂わせている「少林寺」の近くには小規模のスナック街がありました。ここも青線ストリートだったようです。
 
 
 小さな路地に不思議を極めた、「クラブ湯」がありました。男湯と女湯が扇形の意匠で、鮮やかな豆タイルの装飾がとても怪しい感じです。卓球場のようでもあり、カフェーのようでもあり・・・。
  

 
 
 番場通りと昭和通りの交差点には、誰もが足を止める、大正~昭和初期の見事な看板建築が現存しています。その周辺にも華麗な洋館が立ち並び、その保存状態の良さなどから、まるで建物のミュージアムに居るような気さえしてきます。俗に言う大正ロマンの退廃的な雰囲気がここまで残された場所は、本郷や千駄ヶ谷の古書街かこの秩父の通りと言ったところでしょうか?
 
 
 埼玉の山奥にパリ出現。大衆食堂「パリー」。なんてデカダンス!
 

 ネオン管がまだ残っていて、お店の横にはかわいい屋敷神様が・・・。
 
 
 パリーもこちらの「小池煙草店」の看板建築も、登録有形文化財になっています。看板建築は表面は木造モルタルですが、あたかも西洋の石作りのビルで、3~4階建てに見せかけるのが特徴で、中の家屋よりも路面側の天井高は相当高めに作ってあります。裏側をつっかえ棒などで立てているものまであって、まさに看板なのです。


 お寺や神社巡りもいいですが、近代建築を巡る楽しさも秩父にはあります。