ビバ!迷宮の街角

小道に迷い込めばそこは未開のラビリント。ネオン管が誘う飲み屋街、豆タイルも眩しい赤線の街・・・。

瀬戸内国際芸術祭の思い出その二(瀬戸内)

2010年12月30日 | 瀬戸内の名所・旧跡
 直島の続きです。「木村エリア」を堪能した後、島の反対側の宮浦港にある「宮浦エリア」へ向かう事にしました。標高は低いですが、行きは、港から木村エリアまでバスでの山越えでした。帰りは何を血迷ったか、炎天下の中徒歩での強行軍を自らに強いたのです・・・が迷子ちゃん。アスファルトの道を行きつ戻りつ、地図を逆さにしたり回したり、そうこうしているうちに、熱中症で意識が朦朧としてきて、ようやく分かりやすいバスの一本道を見つけて、ヨタヨタ歩くうちに出会った横断歩道を渡るこのぼくちゃん。




小学校の前とは言え、車といってもバスが一時間に数本・・・。この人形、本当に必要なのか・・・頭が煮えたカニ味噌になりそうになりながら、ようやく宮浦港へ到着。

 
 古びた食堂のある小さな路地に、見えてきた直島の銭湯。こちらは銭湯自体がアート、入浴できるので究極の体感型アートです。「Iラブ湯」の正式表記はラブの部分がハートです。

 直島銭湯「Iラブ湯」大竹伸朗
  

 目を奪う、女性が座ったシルエットのネオンサイン。これを見た父は「遊郭だ」と言っていました。戦後のある時期、遊郭はタイルとネオンサインで入り口を飾りたてられていたのでさもありなんです。私は、昭和に開催された神戸や筑波の博覧会や今はもう閉園してない奈良や横浜のドリームランドを見たときに感じたある種のものを感じました。「体が浮遊するほどのワクワク」・・・最近のイベントや建物にはこれがありません。子供の頃いろいろなものを見聞きして、感じたものは思い出の中で美化されているわけではなく、やはり造形が力強かったからだと思うのです。田舎のデパートの屋上にもささやかな遊園地があって、お城にモノレール、鬼にボールをぶつけるゲーム、ウルトラマンショー・・・全て子供だましですが、克明に覚えています。

    
 壁面は湘南の海の家のような、廃材アートの数々。汚れているような壁面は丁寧に色づけされていて、不思議なオブジェの置き方にも相当気を配っているようです。
   

 もう何処を切り取っても面白い造形の花畑。上も下も、縦横無尽にコラージュされたオブジェの博覧会、機知と冗談が交じり合う夢の遊戯場・・・けれど用途は島の人も入りに来る銭湯なのです。
      
 近隣の民家にまで不思議なオブジェは飛び火してます。屋根の上には船まで・・・。ラブホテルやアミューズメント系のレストランでたまに見かけるおかしな内装や看板も5分も見れば見飽きます。しかしこの銭湯の概観、見飽ることはありません。
      

 中の浴室では、泥だらけの素足でウロウロしたり、撮影禁止なのに撮影したりの無法者達にゲンナリさせられましたが、そこそこ楽しい空間でした。カランには小さな日活ロマンポルノのポスターがアクリルで閉じ込められていたり、窓の外はジャングル風呂のような観葉植物の傍にエマニエルチェアー、半透明の浴槽には春画がコラージュされていて、性と欲の博物館のようでした。不謹慎の象徴として、とある秘法館の入り口にあった象さんのオブジェが、男湯と女湯のちょうど間に鎮座しています。浴室にあの世感漂う電子音楽も流れていて、半透明の天蓋からはやさしい光が注いで、日中熱中症になった事もあって、しばらく浴槽から出れませんでした。

   

 
 入り口のタイルも色とりどり。銭湯が派手な破風を構えた寺社のようだったり、浴槽のタイルがド派手であった時代、楽園は人々の生活の身近にありました。さて現代の楽園はいずこへ・・・パソコンの中の仮想現実やキャバクラだけだとしたら悲しいですよね。直島に現れたお湯の流れる竜宮城は艶やかでありつつも、楽園不在の世の中を憂いているような気がしました。

  


  
 宮浦港にあるカボチャのオブジェは物凄い違和感・・・だけどこの異物がここから無くなってしまったらどうしようと思わせる・・・いい造形にはそんな力があります。太陽の塔、エッフェル塔、そしてこの港のカボチャ。このカボチャを見つつ、直島からフェリーで岡山の宇野港へと向かい帰途につきました。

 瀬戸内国際芸術祭2010

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