重低音のBlue Canary

♪ 思いつくままを、つたない文と photo で …

最初で、最後に。

2007-10-08 | つれずれ
静岡・御前崎の灯台から程近い海岸の高台に、
そのカフェは建っていました。



今週末も所用で静岡方面へ出掛けなければならなくなりました。
目的地から次の目的地へ移動する途中、
オレンジ色の屋根のお洒落な建物が目に止まり、
時間調整を兼ねて、車を停めたのです。


エントランスを通り、入口のドアを開けようとした時、
その横に立て掛けられた何かのポスターらしきパネルに、
1枚の小さな紙がクリップで留められているのに気付きました。

 

「お別れの予感
 H19.10.30で閉店いたします。
 ながい間ありがとうございました。
       Cafe Welcom tea 」

あとしばらくで閉店する、というお知らせ――。
(こんな店に、入っちゃっていいのかな……)と少し不安に思いながらドアを押し、
店内に入って、驚きました。

外観と同様、店内もお洒落で、清潔で、落ち着いていて、
予想外に、と言っては失礼ですが、とてもいい雰囲気だったからです。

 

 


そして、
南に面したガラス戸の向こうに見えるのは、



海――。



店内にも、少し色褪せかけたポスターがもう1枚、貼られていました。



メゾン・ド・ヒミコ」。2005年公開。
監  督・犬童一心
脚  本・渡辺あや
キャスト・オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯 …
音  楽・細野晴臣

▽卑弥呼(田中泯)はゲイバーのママだった男。
彼はゲイのための老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を作り、自らも他のゲイたちとともにそこで暮らしている。
彼は癌の末期であり、死期が迫っていた。

▽卑弥呼には沙織(柴咲コウ)という娘がいる。
彼女は、母親と自分を捨ててゲイとしての生き方を選んだ父親を許せないでいた。
卑弥呼の恋人である春彦(オダギリジョー)はそんな二人の関係を修復しようと、老人ホームでの高額なバイトを沙織に持ちかける。……(「Wikipedia」から引用)


偶然入ったこの店「Cafe Welcom tea」が、
映画「メゾン・ド・ヒミコ」の舞台――ゲイの人々のための理想的な老人ホームとして使われた店だったことを
私は知りませんでした。





そのお店が、
なぜ今月末で閉店するのかの理由も、もちろん知りません。
お店の方にも、あえて聞きませんでした。

でも、
もしもっと前にこの店を知っていたなら、
ここが「メゾン・ド・ヒミコ」のロケ地だということを知らなくても、
また、
この場所が私の普段の行動範囲外にあって、立ち寄るのは多少不便でも、

きっとこれまでに何度か、足を運んでいたに違いあるまい――と
そんなふうに思ったカフェでした。

 




初めて行って気に入り、
けれども、
この店でお茶を飲むのはたぶんこれが最初で最後になるはずの「Cafe Welcom tea」
――いや、「メゾン・ド・ヒミコ」でしょうか。

 

それはそれで、
かえって良かったのかも知れませんね。



この日、
海は少し、
荒れていました。




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