日常

NHKハートネットTV『医心方』

2016-05-10 08:34:54 | 
NHKハートネットTVにて、
5/11水曜 20時-20時30分
『医心方』(日本最古の医学書)
が取り上げられます。


NHKハートネットTV「心悩むあなたへ 古の東洋医学からのヒント」
2016年5月11日(水曜)再放送2016年5月18日(水曜) 20時-20時30分


自分も病院内の外来診察室で取材を受け、ほんの少しだけ出演します。
名作番組を数多く作っているNHK。
このハートネットTVは、病や障害というものを、まったく別の角度から光をあてる番組。
前から応援しています。


「生き抜くという旗印 ―筋ジストロフィーの詩人・岩崎 航の日々―」
「アウトサイダーアートに魅せられて」
「ブレイクスルー File.23 僕にしか見えない”感動”を写す―写真家 齋藤陽道―」


毎週月曜日の「ブレイクスルー」は、
『困難や絶望的な状況に直面しながらも、その壁を破り前に進もうとする人たちを見つめることで、“新しい幸せ、生き方”を探ります。』
というシリーズで、これも素晴らしい企画です。




『医心方』は丹波康頼(912年 - 995年)が984年に、当時の全アジアの医学知識を集めて編集した日本最古の医書です。

当時の日本は平安時代。
菅原道真(845-903年:天満宮の祭神)、紀貫之(872-945年:『古今和歌集』選者)、平将門(-940年:武士時代のはじまり、神田明神の祭神)、安倍晴明(921-1005年:陰陽師・天文博士)、空也(903-972年:浄土教の先駆者)、源信(942-1017年:『往生要集』)、藤原道長(966-1027年)、清少納言(966-1025年:『枕草子』)
などの方々と同時代です。

貴族から武士に時代が移り変わる間、激動の時代でした。安倍晴明の陰陽道も当時の最先端科学でしたから、医学とも当然交流があったはずです。

ヨーロッパで神聖ローマ帝国が成立したのも962年ですから、時代背景を夢想しながら感じてもらえるときっと面白いと思います 。


日本最古の医学書である『医心方』は、将軍や天皇のための医学書だったため、多くが暗号化されており、誰も現代語訳できませんでした。
その中で在野の研究者である槇佐知子先生は、40年かけて、まさに人生をかけて現代語訳されるという大偉業をなされました。生きることが創造であり学問のプロセスというのは素晴らしいです。


槇先生も現在83歳。
自分は『医心方』を学びたいという真摯な思いと、槇先生の偉業への敬意から、医心方の寺子屋を開催しております(みなさんのボランティアの力により運営しています。いつも本当にありがとうございます。ご興味ある方はFbグループありますのでお声かけください。)

今回は<心悩むあなたへ 古の東洋医学からのヒント>というテーマの中で槇先生と医心方が取り上げられるわけですが、自分が勉強会を開催していることもあり、今回NHKの方に少しだけ取材していただいたわけです。
本当にありがとうございます。



『医心方』(丹波康頼、984年)をご存じない方も、槇先生の偉業を知らない方も、是非ぜひご覧ください!(^^



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心悩むあなたへ 古の東洋医学からのヒント

2016年5月11日(水曜)再放送2016年5月18日(水曜) 20時-20時30分

 
悩みごとやストレスにあふれる現代社会。ちょっと疲れたなぁと思ったときに、参考にしたい古文書があります。
現存する日本最古の医学書『医心方』。
針灸、耳鼻科、妊娠出産、美容まで・・・平安時代の宮廷医・丹波康頼が、古代以来の東洋医学の英知を集めて編さんした、全30巻に及ぶ医学書です。
そこには、アルコール依存症や不眠症など、現代の人々も悩む「心の病」についての記述もあります。
番組では、この『医心方』を読み解いた、作家の槇佐知子さんを、山田賢治アナウンサーがインタビュー。
ストレスとどう向き合ったらいいのか、病気を未然に防ぐためにどうしたらいいのか、古の東洋医学の智恵をじっくりと伺います。

NHKハートネットTV「心悩むあなたへ 古の東洋医学からのヒント」
2016年5月11日(水曜)再放送2016年5月18日(水曜) 20時-20時30分






『医心方』完結に寄せて 槇佐知子(筑摩書房)筑摩書房 PR誌ちくま

<年間スケジュール>
【第1回目】(2016年1月30日)
医心方 巻一A 医学概論篇
医心方 巻一B 薬名考
【第2回目】(2016年3月13日)
医心方 巻二A 鍼灸篇1  ─孔穴主治
医心方 巻二B 鍼灸篇2 施療 
巻三 風病篇
【第3回目】(2016年4月23日)
巻四 美容篇
巻五 耳鼻咽喉眼歯篇
巻六 五臓六腑 ─五臓六腑気脈骨皮篇
【第4回目】(2016年5月14日)
巻七 性病・諸痔・寄生虫篇
巻八 脚病篇
巻九 咳嗽篇
【第5回目】(2016年6月12日)
巻十 積聚・疝瘕・水腫篇
巻十一 痢病篇
巻十二 泌尿器科篇
【第6回目】(2016年7月24日)
巻十三 虚労篇
巻十四 蘇生・傷寒篇
巻十五 癰疽篇 悪性腫瘍・壊疽
【第7回目】(2016年8月20日)
巻十六 腫瘤篇
巻十七 皮膚病篇
巻十八 外傷篇
【第8回目】(2016年9月25日)
巻十九 服石篇Ⅰ
巻二十 服石篇Ⅱ (薬害治療)
巻二十一 婦人諸病篇
【第9回目】(2016年10月16日)
巻二十二 胎教出産篇
巻二十三 産科治療・儀礼篇
巻二十四 占相篇
【第10回目】(2016年11月19日)
巻二十五 A 小児篇Ⅰ
巻二十五 B 小児篇Ⅱ
巻二十六 仙道篇
【第11回目】(2016年12月3日)
巻二七 養生篇
巻二十八 房内篇
巻二十九 中毒篇
【第12回目】(2017年1月14日)
巻三十 食養篇
まとめ

<各巻 解説>(ちくま書房リーフレットより)
【第1回目】(2016年1月30日)
●医心方 巻一A 医学概論篇
→「ヒポクラテスの誓い」をそのぐ東洋の医の倫理、古代オリエント医学と薬学の基礎と心構えを、29文献から選出・編集した書。『医心方』の医心方たる由縁の巻である。
●医心方 巻一B 薬名考
→本書は他の巻とは違い、大半は不明となっている当時の動植物・鉱物の薬名を訳者が中薬大辞典や証類大観本草ほかを訳しつつ探索。同薬異名、異薬同盟などを解明する。

【第2回目】(2016年3月13日)
●医心方 巻二A 鍼灸篇1  ─孔穴主治
→紀元前から唐代までの鍼灸書から撰出した当巻は『医心方』30巻中唯一、鍼博士康頼の自序がある入魂の巻。孔穴名や壮数、禁鍼・禁灸のツボや为治の対象が現代とは微妙に異なる。タイムカプセル『医心方』に、進化を続ける現代鍼灸をかさねた温故知新の書である。
●医心方 巻二B 鍼灸篇2 施療 
→来診者の徒歩・乗り物の種類に応じた待ち時間、感情の起伏や消化時間と鍼灸の是非、男女・年齢・体質による鍼灸の工夫、灸の点火法の貴重なデータ等の実用例から鳩摩羅什が医書を訳した証明まで。陰陽道、天文、易と鍼灸、九九の歴史に新たな資料となる記述があり各分野必見の書。
●巻三 風病篇
→本来、風病は病名ではなく病因を指し、中風は邪風による損傷、癩は邪風による皮膚の異常だった。インドの原始仏教や道教、神道、密教、陰陽道とのかかわり、祭祀や習俗の原点がみえ各分野の研究に新たな視座を与える。

【第3回目】(2016年4月23日)
●巻四 美容篇
→髪に関するさまざまな悩みや美肌への願望は昔も今も同じ。洗髪剤、養毛剤、毛生え薬、白髪対策。シミ・ソバカス、イボ・ウオノメ、ナマズ肌、ワキガの治療法。現代人も驚く美肌パック。魏や隋の後宮の秘方等々『長恨歌』や『源氏物語』を読む上でも参考になる。
●巻五 耳鼻咽喉眼歯篇
→蓄膿症・血膜炎・虫歯など七十一章に渡って耳鼻科・眼科・歯科に関わる当時の理論や治療法を載せる。
●巻六 五臓六腑 ─五臓六腑気脈骨皮篇
→胸・心・脇・腹・腰・腎・肝・脾・肺・大腸・小腸・胃・胆・三焦・膀胱・筋・骨・髄・肉・皮・脈・気病など、症状のある部位別に分類。現代に生きる湯薬、丸薬、薬酒のルーツや僧の治療法が目立つ。

【第4回目】(2016年5月14日)
●巻七 性病・諸痔・寄生虫篇
→男性の性器にかかわる諸病と痔疾、寄生虫症の理論と治療法を収める。痔には仏典からの抄録もある。今昔物語に登場する寸白の正体と治療法など古典や衛生史の研究資料としても貴重な巻である。
●巻八 脚病篇
→脚気・中風・リューマチから瘭疽・アカギレまで。現代の脚気と同定されていた古方の脚気は、『枕草子』の「あしのけ」に該当する手足の病状の総称であった。唐代を代表する医学者でもある鑑真の処方も含み、書誌学的にも重要な巻。
●巻九 咳嗽篇
→今日の医学では咳はカゼの徴候だが、古代中国医学では風病と咳は全く別なものと考えられていた。風病は巻三にあるが、巻九は咳嗽や喘息のほか、呼吸器、胃病、シャックリなどが十八章におさめられている。本書には咳の薬として現代でも著名な処方が見られる。

【第5回目】(2016年6月12日)
●巻十 積聚・疝瘕・水腫篇
→種々の結石による激痛のほか、心筋梗塞、潰瘍、穿孔、浮腫、腹水、胃炎、肝炎、黄疸さらに癌を含む重篤な病症や条虫、住血吸虫、回虫など寄生虫症に関する理論と約二百の治療法(温熨法・灸法・洗滌薬・塗布薬・内服薬・薬酒)が、千年のタイムカプセル、国宝「医心方」から初めて蘇る。
●巻十一 痢病篇
→これまで暑気あたりや日射病とされてきた霍乱(カクラン)はどんな病気だったのか。疫病も含む下痢を便の色や症状で分類し、薬方やツボを発見した古代人。現代の処方や灸の源流や生活史の資料などもぎっしり。
●巻十二 泌尿器科篇
→口渇を伴う多尿と尿閉、錬金術の石薬の副作用による類似症状など、従来の消渇の定説を覆えす理論のほか、泌尿器系の諸症、大小便の便秘と失禁、血尿、血便、下血、結石などについての諸説とユニークな治療法を収める。

【第6回目】(2016年7月24日)
●巻十三 虚労篇
→唐王朝の権威を示すスーパー・メディスンや雅楽最大の曲《蘇合》となった秘薬など、煎薬・湯薬・丸薬・散薬・生汁・薬酒・薬粥・食物・浣腸・灸・摩擦等、疲労回復法を収録。

●巻十四 蘇生・傷寒篇
→古典に登場する蘇生法や薬法には、現代の習俗や年中行事にかかわるものもある。王朝人を脅かしたもののけは、中国からの外来思想であった。傷寒では著名な張仲景の説は載せず、他の多くの文献の学説や治療法を紹介、従来の傷寒=チフス説が覆える。

●巻十五 癰疽篇 悪性腫瘍・壊疽
→古代の癰疽(悪性腫瘍・壊疽)には、現代病といわれる糖尿病、癌、結核、性病など重篤な病気が含まれている可能性がある。その原因がストレスや食生活のほか錬金術による薬(水銀・砒素)の服用にあると指摘し、状況に応じた治療薬、方法を呈示。現代医学の基本をここに見る。

【第7回目】(2016年8月20日)
●巻十六 腫瘤篇
→生命にかかわる根の深い疔や、口中のできもの。結核性の瘰癧がつぶれて瘻管となったものや、潰瘍、瘤、さまざまなできもの、腫れもの等々の治療法を四十一文献から転載している。

●巻十七 皮膚病篇
→現代医療でも治療困難な皮膚病と、古代人は如何に戦ってきたか。0.3 ミリのヒゼンダニの存在を裸眼で確認したり、洗浴、瀉血、排膿、切断、灸、罨法、塗布薬、内服薬など工夫をこらした。現代医療に通じるものや『ヨブ記』の灰治療に共通するもの、梅毒の定説を覆す記述等々を満載。

●巻十八 外傷篇
→湯火によるヤケド、打ち身、くじき、骨折、毒虫・毒蛇や獣による咬傷、狂犬に咬まれたときなど、古代の人々は、どのような知恵で手当てをしてきたのだろうか。

【第8回目】(2016年9月25日)
●巻十九 服石篇Ⅰ
→古代中国の道教の人々は金石玉丹で製薬した。いわゆる錬金術で草薬より薬害が劇しく、誤れば死を招く。そのため超人的な修行をした者にだけ製法が伝えられた。本書には服石の禁忌と薬害の治療法や唐招提寺の開祖鑑真の秘方がある。

●巻二十 服石篇Ⅱ (薬害治療)
→紀元前から不老長寿薬として、極秘に製法が伝授された錬丹術(錬金術)。その薬は賢者の石とか仙薬と呼ばれたが、百種以上の薬害があった。現代にも通じるその治療法を初めて明らかに。

●巻二十一 婦人諸病篇
→乳房や子宮のポリープ、人には言いづらい多様な症状についての治療法が網羅された『婦人諸病篇』。国文学に精通する筆者が「医心方全訳精解」に 30 年を費し、遂に著わす本書は、王朝文学や人間学、社会史、女性史、宗教など各分野に新しい視座を与える。

【第9回目】(2016年10月16日)
●巻二十二 胎教出産篇
→妊娠月別針灸禁止のツボ及び諸注意、胎教、ツワリの治療法、妊婦と胎児のための養生法、流産防止と妊婦の諸病の治療法ほか、胎児と母体保護のための三十七章より成る。国宝半井本の中で流転の運命をたどった貴重な巻。

●巻二十三 産科治療・儀礼篇
→既刊の巻二十二に続く産科篇。穢れの思想の源流を始め、出産時・産前産後の禁忌・呪法・儀礼のほか、難産・逆児・死産や産後の諸症に関する理論と治療法を五十章にわたって収める。仏典からの抄録、奇想天外な薬剤等、考古学・歴史・古典・民俗学に役立つ。

●巻二十四 占相篇
→不妊の悩みの解決法、男女の生み分け方、生年月日、時刻、星宿、七神、人相、体形等による占い、父母兄弟姉妹との関係、わざわいを避けるための命名法、孔子や伍子胥の人相もあり、歴史や古典が面白くなる必見の書。

【第10回目】(2016年11月19日)
●巻二十五 A 小児篇Ⅰ
→儀礼、命名、育児、治療など八十八章。出生児の大半が六歳前に死亡した古代の命名や儀礼・呪術にこめた切実な祈り。知恵熱、疳疾、先天的疾病、皮膚病ほか小児特有の治療法を網羅した「小児篇」は二分冊で刊行。現代人が学ぶべき育児法も数多あり、各分野の研究者必携の書。

●巻二十五 B 小児篇Ⅱ
→小児特有の夜泣きやひきつけ、種々の疫病、皮膚病や腫瘍、運動機能障害、言語障害、過食症、けがや誤飲の応急処置等々にみる古代人の驚くべき知恵と工夫。現代中国で癌治療に生かされている薬の記述もある。『源氏物語』の解釈や民俗学、動植物、土石鉱物の研究にも役立つ貴重な書。

●巻二十六 仙道篇
→何日も飲まず食わずで耐える術や丸薬、虎・狼・鬼を避ける術から、火遁水遁の術まで、これまで架空の人物とされてきた仙人たちのさまざまな処方―忍法虎の巻とは、この巻のことを言ったのでは、と思われるおもしろさ。

【第11回目】(2016年12月3日)
●巻二七 養生篇
→健康や養生に対する老荘哲学の理念、精神衛生、未病対策などが盛り込まれ、さまざまな分野の研究者に役立つ。健康に適した日常の坐臥・歩行・姿勢、衣食住や罪に対する意識など、興味深い知識が満載されている。インドのバラモンの秘方や吐故納新術、ヨーガや太極拳、五禽戯のルーツ、庚甲信仰、ひなまつりの起源にもふれる。

●巻二十八 房内篇
→かつては性愛の秘本として医心方の代名詞にされ、"発禁の書"となった「房内篇」。国文学に精通する筆者が「医心方全訳精解」に 30 年を費し、遂に著わす本書は、王朝文学や人間学、社会史、女性史、宗教など各分野に新しい視座を与える。

●巻二十九 中毒篇
→食事・酒・水に関する諸注意、飲食・飲酒による諸症の治療法、断酒法、食べ合わせと食中毒、誤って異物を呑みこんだ場合の救助法など、古代ならではのユニークなものから現代に通じるものまで五十一章に収める。

【第12回目】(2017年1月14日)
●巻三十 食養篇
→天地陰陽の交わりによって五行の気を享けて生じた穀物 24 種、果物 41 種、肉類 45 種、野菜 52 種を収める。その効能だけでなく、なまだと害のあるもの、多食してはいけないもの等の指摘もある。食文化を知る上で必見の巻。