日常

「スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり」

2015-08-31 16:19:41 | 芸術
渋谷区立松濤美術館でやっている「スサノヲの到来 いのち、いかり、いのり」という展示、ほんとうに素晴らしかった!
(川村記念美術館の方が展示の説明はよく書かれています)




日本神話のスサノヲという多面的な神様を、多面的な方向から光を照射している展示。

荒ぶる神でもあり、和歌の始祖でもあり、文化創造神、農耕神でもあり、さすらう漂流の神でもあり、英雄神でもある。そんなスサノヲ。

この展示では、縄文土器にはじまり、芭蕉、円空、平田篤胤、出口王仁三郎・・・、、
この世とあの世と霊界とあちらこちらを行ったり来たりするバランス感覚が素晴らしかった。

自分が私淑する鎌田東二先生が『神界のフィールドワーク―霊学と民俗学の生成』(1985年)『翁童論-子どもと老人の精神誌』(1988年)という本を書かれ、その鎌田先生の思索が30年のときを超え、江尻潔さん(足利市立美術館)のVisionとSparkして、この展覧会という形で、このスサノヲ曼荼羅が具体化したようです。




鎌田先生に直接伺ったところ、
足利市立美術館:江尻潔さん
DIC川村美術館:赤松祐樹さん
北海道立函館館:大下智一さん
山形芭蕉記念館:相原一士さん
渋谷区立美術館:平塚泰三さん
この5名の学芸員の方々が本展覧会の巡回を担当し、推進されたとのこと。
すごい展示で感動です。ありがとうございます。



本展覧会で初めて知った収穫。

平田篤胤が霊界の情報を得たとされる勝五郎という不思議な少年。
勝五郎は神隠しにあい、あちらの世界を色々と探索。そこでいろいろなものを見聞きしています。
そんな勝五郎が自分と同じ上野池之端に住んでいて、神隠しから戻ってきて見つかったのが、上野五條天神社というのも、この展示で初めて聞いて驚きました。自分はその目と鼻の先に住んでいるもので・・。

平田篤胤(著),子安 宣邦『仙境異聞・勝五郎再生記聞』(岩波文庫)



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それはともかく。

スナオヲの多面的精神をたどりながら、最終的には現代美術としての表現に着地させていた展示構成が素晴らしかった。

藤白尊(たかし)さんの作品。
天津金木・天津神算木(あまつかなぎ)という日本最古の占術があります。
青は天、赤は日、緑は海、黄は地、陰陽の黒と白を意味します。
幕末の古神道家の大石凝真素美(おおいしごりますみ)などが使っていたものですが、これをアートにして藤白尊(たかし)さんが表現されていたのもすごく面白かったです。


他にも、
金井南龍、岡本天明、南方熊楠、出口なお・・・、明治から昭和の激動期に見えない世界と見える世界をつなげようと奔走していた人の痕跡を紹介していたり、表と裏をつなげようとする野心的な試み(それがまさにスサノヲスピリットなのかもしれません)に、ただただ敬服しました。


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東京都内で行われているのは9月21日までですので、残りわずか。是非行ってみてください!
渋谷からもBunkamura経由で歩いていけますが、最寄駅は神泉駅(井頭線)という、これまた素敵な駅名です。