日常

●名言集 その13

2009-10-16 15:46:31 | 名言集シリーズ
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●名言集 その13
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『一日一日を、たっぷり生きていくより他は無い。
明日のことを思い煩ふな。
明日は明日みずから思ひ煩はん。
今日一日を、よろこび、努め、
人には優しくして暮らしたい。
青空もこのごろは、ばかに綺麗だ。
舟を浮かべたいくらい綺麗だ。
山茶花の花びらは、桜貝、音立てて散っている。
こんなに綺麗な花びらだつたかと、
ことしはじめて驚いている。
何もかも、なつかしいのだ。』
   
太宰治「新郎」より
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太宰は悲観的で否定的な人生を生きた人だと思われているが、必ずしもそうではない。 「新郎」は、『ろまん燈籠』(新潮文庫)の中に収録されている。

明日や未来のことばかり考えるのは、肥大した脳と意識を持った人間の長所であると同時に短所でもある。

ありふれた日々を大切にし、そこにある日常を当たり前のように愛する。
そんな日常には、自分の意識や記憶を越えた、膨大な名も知らぬ人やモノがあるのだ。それらのものに気づくとき、そこに心遣いや気配りがおのずから生まれる。
そういう相互反応により、周囲に潜む無限のディテールが初めて見え出し、記憶に上がってこない古く原始的な記憶(なつかしさ)が呼び起こされる。

それは、自分を存在せしめている根拠である。
それは、存在の神秘そのものなのである。
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【追記】
NHKの知る楽で、「女(わたし)が愛した作家 太宰治」を10月に全4回(水曜22時25分~22時50分)でやってますね。角田光代、辛酸なめ子、西 加奈子、田口ランディって豪華ゲストです。
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2 コメント

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うわわ (H.P.)
2009-10-17 09:47:56
久かたぶりに拝読しましたら
どんぴしゃの作家の世界で湧き立ちました。

太宰治を好きだと言うことに恥じらいがあってなかなか話題できませんが、
その思いを語り合える作家さんたち、やはりすごい方なんでしょうね。

音感にしろ、まことに見入る性質にしろ、
希代な物書きだと思う。
勝手に、並はずれた本の虫だったのじゃないかと想像します。
また、浪曲に通じていた彼には、自分を含めた目の前のことが、表現すべきすべての対象だったと想像します。浪曲きかなければと、ずいぶん前から義務に負っているのですが、CDになっちゃうんだよなあ
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浪曲・・ (いなば)
2009-10-18 09:40:08
》》》》》》》》H.P.様
太宰治ってやっぱり色々オリジナルな人なんですよね。人間失格とか入水自殺とか、そのキーワードを軸に語られすぎることが多いから。
僕は、この『ろまん燈籠』(新潮文庫)なんて、ほんとうにいい作品集だと思っていて、なんとなく思いついてもう一度読み直しています。

浪曲って確かに聞いたこと無い。YouTubeで見ていると興味深いですねー。音楽と物語の融合というか。いつか、本物見にいかんとダメだなぁ。東京は、そういうときはほんと便利な場所です。東京って何でもあるけど、自分が何も気付かなければ、何もない空っぽの都市みたいに感じちゃうんですよね。不思議な都市です。
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