行きかふ年もまた旅人なり

日本の歴史や文学(主に近代)について、感想等を紹介しますが、毎日はできません。
ふぅ、徒然なるままに日暮したい・・・。

『ワルキューレ』鑑賞

2009-03-29 13:11:51 | Weblog
 「ワルキューレ」、久々に考えさせられた映画を観た。1944年に実際に起こった、ヒトラー暗殺未遂事件の顛末を映画化したもの。
 第二次世界大戦勃発後、ヒトラーが民衆の前に出てくることは殆ど無くなり、1943年のスターリングラードでの敗北以降、総司令部に引籠もり状態となったため、民衆による単独犯的な暗殺は不可能となり、可能性として、ヒトラーの側近が為し得る僅かな可能性だけであった。ナチスの狂気への反発と、誇りある祖国ドイツの名誉を護ることに信念を通したドイツ将校の心情が描かれている。
 ワルキューレ作戦は結果として失敗に終わるが、ナチスへ反発するドイツ人が、ヒトラーの側近として終戦間際まで存在し続けた事は、ドイツ国民全てがナチスへ参加していた訳では無かった事がはっきり分かる。ドイツが大戦中に犯した大罪の中で、一筋の清流が浮き出た感があり、政治的意図など、この際、考慮したくない。同じように全体主義に走った日本やイタリアの人々は、これを観た感想をどう抱くのか、少し気になった。

 この作戦失敗後に「砂漠の鬼将軍」と呼ばれたロンメル元帥は自決を強要され自決している。ワルキューレ作戦に関与していた可能性は無かったようだが、ナチス党員ではなく、優れた戦略家で北アフリカ戦線では、連合国軍を連破し、その名を轟かせた。捕虜にしたユダヤ人虐殺命令書を焼き捨てて命令を無視、他の捕虜を丁重に扱うなど、ヒトラー以上に人気も実績もあり、ナチス中枢は危険に感じていたのかもしれない。神出鬼没の用兵は、「幽霊師団」と呼ばれ、兵を率いれば負ける事の無いロンメルをイギリスの首相チャーチルは、「ロンメルは神に護られている」言った。ドイツ軍だけでなく、イギリス軍やフランス軍内でもロンメルを信奉する者までが出、イギリスは前言を撤回し、人間である事を強調している。現在でも、大戦中のドイツ将校に対する評価は低いが、ロンメルに対してだけは今もなお、ドイツ国内はもとより、戦勝国側や戦場になった中近東においても評価は高い。

 ワルキューレは、ワーグナーの楽劇である。ワルキューレ作戦は表向きは、ドイツ国内に労働力として連行した捕虜が反乱を起こした際、予備軍がその鎮圧に当たるという作戦名である。

 『銀河鉄道999』第44、45話に『ワルキューレの空間騎行』というエピソードがある。その次に『エルアラメイン』という題名が続く。作者松本零士氏が『ニーベルングの指環』に、ワーグナーの楽劇を基に物語を展開した4部作、『ラインの黄金』、『ワルキューレ』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』というキャプテン・ハーロックを主人公にした作品があったのを思い出した。
コメント
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