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法月綸太郎編『法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー』角川文庫

2005年11月06日 | reading
ネタバレ注意。

タイトル通り、法月綸太郎チョイスによる短編十二編のアンソロジーです。有栖川のにも北村のにも触手が伸びなかったのに、法月は新刊で出た瞬間に読むとはこれいかに(あまりにも明白)。
クイーンやノックス、さらには西村京太郎(ド本格)といったスタンダードな本格も収められているのですが、それよりもウディ・アレンやボルヘスといった畑違いの作家のものの方が、「奇妙な味」が出てて読んでて面白かった(ミステリ読み失格)し、そのようなチョイスが法月っぽいなあ、と思うのでした。でも本人の実作では、『パズル崩壊』の後半の作風はあまり感心しなかったりするんだよなあ…。
スタンダード寄りのものでは、「誰がベイカーを殺したか?」が、バカなんだけど謎解きがシンプルで良かったです。
印象的だったのが小泉八雲と大平健。前者の亜愛一郎シリーズみたいなオチの付け方、後者のリアルドグラマグラみたいな雰囲気の中、展開されるスリリングなカウンセリングの情景(精神科医の臨床記録です)。共に新鮮な驚きがありました。特に後者は著作を探してみたいと思います。

《「ちがうよ、ベイビー。きみはまんまと汎神論者になりすました。そうすれば、神に近づける――もちろん存在すればの話だが、《彼》は存在していたのだ。《彼》はきみといっしょにシェルビーのパーティに出かけた。そのパーティで、ジェイスンが目をはなした隙に、きみは《彼》を殺したのだ」
「シェルビーとジェイスンというのは、だれなのよ?」
「話してどうなる? どっちみち人生は不条理なものさ」》(ウディ・アレン「ミスター・ビッグ」27p)

作品の評価はB。

404380301X法月綸太郎の本格ミステリ・アンソロジー
法月 綸太郎

角川書店 2005-10-25
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2 コメント

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追記 (urt)
2005-11-08 00:35:43
書くの忘れてたんだけど、頁の肩には、章題じゃなくてタイトルを入れて欲しかった。不便でしょうがねえ。
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追記2 (urt)
2005-11-14 13:04:50
「触手」て。「食指」です。失礼。

コメントで直すのは、本文直すとリンクの表示が崩れてしまうからっす。残しといても面白いしね。
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