urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

映画『嗤う伊右衛門』

2006年01月07日 | movie
最初に言っておきますが、僕はこの原作大好きです。誰一人知らない者のいない有名怪談を、哀切極まる悲恋譚に仕上げた手腕は、京極夏彦の非ミステリ作品では間違いなく随一の完成度かと。

で…この映画…グダグダ。
脚色がうまくいってなくて冗長極まる。画面構成にも監督の自慰的な前衛性が見えて邪魔くさい(てかなんだあのラスト)。これはある程度仕方ないけど、京極流の台詞回しが実際に役者に喋らせてみるとどうにも浮ついて、滑稽にすら感じられる。唐沢も小雪も、それぞれの愚直さ、気丈さを体現するいいキャスティングだと思うだけに、残念でした。「うらめしや」なんてその典型で、原作ではあんなに哀切な台詞なのに、正直聞いてらんなかった。こういうところにこそ脚色・演出は気を回すべきなのに…。ジャジーだったりクラシカルだったりする多彩な音楽だけはなかなか面白かった。あと、散々言い尽くした感があるけど、「Eternal Love」ってどうしようもない副題なんとかしてくれ。
姑獲鳥にしても巷説のシリーズにしても、京極作品は映像化に恵まれない。なんか雰囲気だけ掬い取ろうとしてる印象があるんだよな…その根底にあるエンタテインメント精神に、製作側が忠実じゃないからだと思います…って偉そうにまとめてみました。

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2 コメント

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Unknown (ボノボ)
2006-01-07 18:38:58
京極のあのどんよりとした雰囲気は役者には無理なんですかね。

まぁダイジェストを見てる気分で映画は楽しませてもらいましたが。

それでも見ててちょっと恥ずかしかったです。京極の作品は映像化するとこういう風になるんだぁ。と思ってはらはらだったからだと思っていましたが、監督の自慰を見せ付けられていたからだったのですね。

でも椎名桔平ら斬殺シーンは映像的にけっこう好きでした。
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Unknown (urt)
2006-01-07 19:58:01
巷説百物語のシリーズ…映画版では「京極夏彦 怪」ってシリーズかな、あれもひどい。前衛時代劇で遊んでる感じ。この映画にすごく似てると思う。なぜか去年の末にテレ東が昼間流しまくってたけど。

斬殺…不必要にポロリしまくってた梅がしまいに母乳垂らしてたのが笑えた。
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