urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

竹本健治『狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役』光文社カッパノベルス

2006年05月13日 | reading
ネタバレ一応注意。

同期K島くんにいただきました。あざっす。
竹本には珍しい、学園コメディ・ミステリの短編集。牧場智久の印象もいつもとちょっと違う感じ(類子は割と誤差ないが)。元々マンガの原作だった(ポシャったらしいが)ってこともあってか、ハウリングの轟音鳴り響く密室、衆人環視の演劇舞台上での殺人、キャトル・ミューティレーションを模して内臓を抉られた死体、と状況設定は派手で面白い。しかしそれがトリック・ミステリとして結実しているかと言うと…やや不満。
ぶっちゃけこの人、魅力的なイメージ喚起はあってもトリック考えるのあまり上手くないと思う。なによりの資質としての風情ある文章が、学園コメディに醸し出す「雰囲気」を楽しむのが吉、でありましょう。

《集団はたちまち水に落ちたでんぶのように散りぢりにほぐれていった。/僕もコソコソとその場を離れたが、そうなるとまるで大海に投げ出されたメダカの気分だ。》(164p)

なんて文章は風情のカケラもないけどね。

作品の評価はC。

狂い咲く薔薇を君に  牧場智久の雑役狂い咲く薔薇を君に 牧場智久の雑役
竹本 健治

光文社 2006-04-20
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools