思いやり予算:参院否決、来月発効へ 国会初、衆院優位
在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の根拠となる特別協定承認案が25日午前、参院本会議で採決され、民主党など野党の反対多数で否決された。特別協定は条約の一種で、条約承認案が国会で否決されるのは衆参通じて現憲法下で初。衆院では承認されているため、国会は25日午後、両院協議会を開催。憲法の規定で条約の承認は衆院の議決が優先されるため、特別協定も承認される見通しだ。新協定は5月1日にも発効する。前協定は4月1日に期限切れとなり、78年度の制度導入以来初めての空白期間に入っている。【古本陽荘】
(出所:毎日新聞 2008年4月25日 東京夕刊)
参院委
「思いやり予算」否決
在日米軍特別協定 条約不承認は初
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在日米軍への「思いやり予算」に関する日米特別協定を三年間延長する新協定が二十四日の参院外交防衛委員会で、日本共産党、民主党、社民党の反対多数で否決されました。自民、公明の与党は賛成しました。
衆参両院のいずれかで、条約が不承認になったのは、現憲法下では初めて。
在日米軍の特権を定めた日米地位協定は、米軍の維持経費は米側が負担することを定めており、「思いやり予算」はこの規定にも反するものです。特別協定は、政府の立場でも地位協定上説明のつかない負担受け入れのために、日米両政府が一九八七年から結んでいるもの。今回は五回目の延長にあたります。
採決に先立ち、反対討論に立った日本共産党の井上哲士議員は、新協定について「地位協定の負担原則を重ねて踏みにじるもので、絶対に容認できない」と主張。政府が、次々と国民生活予算を削減し、今月からは後期高齢者医療制度を始めていることを批判し、「『思いやる』相手が違う。国民は到底納得するものではない」と強調しました。
最後に、不承認という歴史的な事態を政府と国会は重く受け止めるよう強く求めました。
民主党の喜納昌吉議員は「日米安保体制は非常に重要」としつつ、「思いやり予算」についての政府の見直しが不十分だと主張しました。
「思いやり予算」の歴史的否決
“湯水のように税金”に怒り
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在日米軍への「思いやり予算」に関する新たな日米特別協定の参院外交防衛委員会での歴史的否決―。政府・与党は、この重みを正面から受け止めるべきです。
総額5兆円超
参院であれ衆院であれ、条約が一院で不承認になるのは、現憲法下で初めてのこと。しかし、「思いやり予算」の特別協定の異常さに照らせば、不承認となるのは当然です。
「思いやり予算」は、▽在日米軍基地で働く基地従業員の労務費▽基地内の光熱水料▽米軍の訓練移転費▽施設建設費―からなり、一九七八年度の開始時から三十年間で日本が支払った金額は、総額五兆円を超えます。
在日米軍の特権を定めた日米地位協定さえ、米軍の駐留経費について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と定めており、「思いやり予算」はこの規定にも反するものです。
事実上の恒久化
日米特別協定は、政府の立場からも地位協定による説明がつかないほど際限ない米国の要求に応えるため、八七年から始まったもの。
政府は「暫定的な措置」と説明してきましたが、結局、二十年間も続いてきました。
その間に、当初、労務費と施設建設費だけだった「思いやり予算」は、光熱水費や訓練移転費にも拡大、労務費もほぼ全額、日本側が負担するようになったのです。
「暫定的」といいながら、いつまで継続するのか―。日本共産党の笠井亮議員の追及に、福田康夫首相は「今から予断するべきではない」と述べ、メドも示せませんでした。事実上の恒久化です。
この異常な実態が明らかになるなか、〇六年の特別協定の延長の際には「(「思いやり予算」の)歴史的意義を深く理解する」として賛成した民主党まで、政府の見直しが不十分だとして今回反対に回ったのです。
政府は今、「思いやり予算」のうえに、さらに米軍基地の強化をはかる在日米軍再編の経費負担にまで乗り出しています。米高官はすでに日本側負担が総額三兆円に達すると明言しています。
井上氏が、再編経費のなかに、米兵のための娯楽施設建設の費用まで含まれるのかをただしたのに対し、石破茂防衛相は、ゴルフ場を例にあげながら、部隊の移駐・施設の移転に伴う場合については「福利厚生施設は排除されない」と述べ、否定しませんでした。
いま国民の中で怒りが広がっているのは、国民生活に関する予算削減を強行しながら、米軍のためなら湯水のように国民の税金をばらまく政府の姿勢です。参院の否決は、この民意の表れにほかなりません。政府・与党は、今からでも、特別協定を撤回し、「思いやり予算」は中止すべきです。(田中一郎)
在日米軍「思いやり予算」特別協定
井上議員の反対討論
参院委
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日本共産党の井上哲士議員が二十四日、参院外交防衛委員会でおこなった在日米軍への「思いやり予算」特別協定に対する反対討論は、つぎのとおりです。
◇
私は、日本共産党を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定に反対の討論を行います。
理由の第一は、そもそも地位協定第二四条は、在日米軍の維持経費について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と規定しており、わが国に負担義務は一切なく、本特別協定は、この原則に反するものだからです。
政府は一九七八年、「思いやり」と称して、米軍駐留経費の一部負担をはじめ、一九八七年には、地位協定の解釈からも説明のつかない負担受け入れのために、特別協定を締結しました。それ以降、「暫定的、特例的、限定的」と繰り返しながら、基地従業員の給与本体・諸手当、光熱水料等、訓練移転費へと負担は拡大され、米軍人・軍属の給与以外の駐留経費は、ほとんどすべてわが国負担となり、「思いやり予算」の総額は、五兆円を超えます。
本特別協定の継続は、地位協定の負担原則を重ねて踏みにじるもので、絶対に容認できません。
第二に、政府の財政制度等審議会でさえ、「日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢は大きく変わってきており、従来どおりの負担の継続は適当ではない」と指摘しているように、政府が「米軍が困っているから」と始めた「思いやり予算」を続ける理由は、いまやまったく成り立たないからです。
しかも、訓練移転費や娯楽施設にかかわる人件費など、「思いやり予算」は、「至れり尽くせり」のものとなっています。
政府は、財政赤字を理由に、次々と国民生活予算を削減し、今月からは後期高齢者医療制度が始まっています。まさに「思いやる」相手が違います。「基地あるが故」の米兵による凶悪事件も繰りかえされています。「思いやり予算」を、これ以上続けることを国民は到底納得するものではありません。
さらに政府は、米軍再編を強行しており、米軍関連経費の新たな膨張が始まっていることも重大です。
今回の特別協定は、われわれの反対で参議院においては承認されないでしょう。一院において、条約が承認されないのは現行憲法下では初めてです。政府及び国会はこのことを重く受け止め、しかるべき対応をとられるよう強く望みます。
本特別協定を含む「思いやり予算」はやめるべきだと改めて主張し、反対討論とします。
(出所:日本共産党HP 2008年4月25日(金)「しんぶん赤旗」)
在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の根拠となる特別協定承認案が25日午前、参院本会議で採決され、民主党など野党の反対多数で否決された。特別協定は条約の一種で、条約承認案が国会で否決されるのは衆参通じて現憲法下で初。衆院では承認されているため、国会は25日午後、両院協議会を開催。憲法の規定で条約の承認は衆院の議決が優先されるため、特別協定も承認される見通しだ。新協定は5月1日にも発効する。前協定は4月1日に期限切れとなり、78年度の制度導入以来初めての空白期間に入っている。【古本陽荘】
(出所:毎日新聞 2008年4月25日 東京夕刊)
参院委
「思いやり予算」否決
在日米軍特別協定 条約不承認は初
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在日米軍への「思いやり予算」に関する日米特別協定を三年間延長する新協定が二十四日の参院外交防衛委員会で、日本共産党、民主党、社民党の反対多数で否決されました。自民、公明の与党は賛成しました。
衆参両院のいずれかで、条約が不承認になったのは、現憲法下では初めて。
在日米軍の特権を定めた日米地位協定は、米軍の維持経費は米側が負担することを定めており、「思いやり予算」はこの規定にも反するものです。特別協定は、政府の立場でも地位協定上説明のつかない負担受け入れのために、日米両政府が一九八七年から結んでいるもの。今回は五回目の延長にあたります。
採決に先立ち、反対討論に立った日本共産党の井上哲士議員は、新協定について「地位協定の負担原則を重ねて踏みにじるもので、絶対に容認できない」と主張。政府が、次々と国民生活予算を削減し、今月からは後期高齢者医療制度を始めていることを批判し、「『思いやる』相手が違う。国民は到底納得するものではない」と強調しました。
最後に、不承認という歴史的な事態を政府と国会は重く受け止めるよう強く求めました。
民主党の喜納昌吉議員は「日米安保体制は非常に重要」としつつ、「思いやり予算」についての政府の見直しが不十分だと主張しました。
「思いやり予算」の歴史的否決
“湯水のように税金”に怒り
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在日米軍への「思いやり予算」に関する新たな日米特別協定の参院外交防衛委員会での歴史的否決―。政府・与党は、この重みを正面から受け止めるべきです。
総額5兆円超
参院であれ衆院であれ、条約が一院で不承認になるのは、現憲法下で初めてのこと。しかし、「思いやり予算」の特別協定の異常さに照らせば、不承認となるのは当然です。
「思いやり予算」は、▽在日米軍基地で働く基地従業員の労務費▽基地内の光熱水料▽米軍の訓練移転費▽施設建設費―からなり、一九七八年度の開始時から三十年間で日本が支払った金額は、総額五兆円を超えます。
在日米軍の特権を定めた日米地位協定さえ、米軍の駐留経費について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と定めており、「思いやり予算」はこの規定にも反するものです。
事実上の恒久化
日米特別協定は、政府の立場からも地位協定による説明がつかないほど際限ない米国の要求に応えるため、八七年から始まったもの。
政府は「暫定的な措置」と説明してきましたが、結局、二十年間も続いてきました。
その間に、当初、労務費と施設建設費だけだった「思いやり予算」は、光熱水費や訓練移転費にも拡大、労務費もほぼ全額、日本側が負担するようになったのです。
「暫定的」といいながら、いつまで継続するのか―。日本共産党の笠井亮議員の追及に、福田康夫首相は「今から予断するべきではない」と述べ、メドも示せませんでした。事実上の恒久化です。
この異常な実態が明らかになるなか、〇六年の特別協定の延長の際には「(「思いやり予算」の)歴史的意義を深く理解する」として賛成した民主党まで、政府の見直しが不十分だとして今回反対に回ったのです。
政府は今、「思いやり予算」のうえに、さらに米軍基地の強化をはかる在日米軍再編の経費負担にまで乗り出しています。米高官はすでに日本側負担が総額三兆円に達すると明言しています。
井上氏が、再編経費のなかに、米兵のための娯楽施設建設の費用まで含まれるのかをただしたのに対し、石破茂防衛相は、ゴルフ場を例にあげながら、部隊の移駐・施設の移転に伴う場合については「福利厚生施設は排除されない」と述べ、否定しませんでした。
いま国民の中で怒りが広がっているのは、国民生活に関する予算削減を強行しながら、米軍のためなら湯水のように国民の税金をばらまく政府の姿勢です。参院の否決は、この民意の表れにほかなりません。政府・与党は、今からでも、特別協定を撤回し、「思いやり予算」は中止すべきです。(田中一郎)
在日米軍「思いやり予算」特別協定
井上議員の反対討論
参院委
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日本共産党の井上哲士議員が二十四日、参院外交防衛委員会でおこなった在日米軍への「思いやり予算」特別協定に対する反対討論は、つぎのとおりです。
◇
私は、日本共産党を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定に反対の討論を行います。
理由の第一は、そもそも地位協定第二四条は、在日米軍の維持経費について「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と規定しており、わが国に負担義務は一切なく、本特別協定は、この原則に反するものだからです。
政府は一九七八年、「思いやり」と称して、米軍駐留経費の一部負担をはじめ、一九八七年には、地位協定の解釈からも説明のつかない負担受け入れのために、特別協定を締結しました。それ以降、「暫定的、特例的、限定的」と繰り返しながら、基地従業員の給与本体・諸手当、光熱水料等、訓練移転費へと負担は拡大され、米軍人・軍属の給与以外の駐留経費は、ほとんどすべてわが国負担となり、「思いやり予算」の総額は、五兆円を超えます。
本特別協定の継続は、地位協定の負担原則を重ねて踏みにじるもので、絶対に容認できません。
第二に、政府の財政制度等審議会でさえ、「日米両国を取り巻く社会・経済財政情勢は大きく変わってきており、従来どおりの負担の継続は適当ではない」と指摘しているように、政府が「米軍が困っているから」と始めた「思いやり予算」を続ける理由は、いまやまったく成り立たないからです。
しかも、訓練移転費や娯楽施設にかかわる人件費など、「思いやり予算」は、「至れり尽くせり」のものとなっています。
政府は、財政赤字を理由に、次々と国民生活予算を削減し、今月からは後期高齢者医療制度が始まっています。まさに「思いやる」相手が違います。「基地あるが故」の米兵による凶悪事件も繰りかえされています。「思いやり予算」を、これ以上続けることを国民は到底納得するものではありません。
さらに政府は、米軍再編を強行しており、米軍関連経費の新たな膨張が始まっていることも重大です。
今回の特別協定は、われわれの反対で参議院においては承認されないでしょう。一院において、条約が承認されないのは現行憲法下では初めてです。政府及び国会はこのことを重く受け止め、しかるべき対応をとられるよう強く望みます。
本特別協定を含む「思いやり予算」はやめるべきだと改めて主張し、反対討論とします。
(出所:日本共産党HP 2008年4月25日(金)「しんぶん赤旗」)