うらくつれづれ

折に触れて考えたこと ごまめの歯軋りですが

維新の会の船中八策

2012-09-12 21:26:02 | 政治・行政

橋下市長の船中八策の最終案がまとまった。概要をざっと眺めただけだが、エネルギー政策と消費税の地方税化といった細部を除いては、概ね妥当な内容だと思う。これに対して、左右双方の既得権益の代表からは、反論が強力になされている。例えば、教師。バウチャー制度で、いままでのやりたい放題が許されなくなり、国民の学校選択による監視下に置かれる。責任不在のパートタイム教育委員会の廃止も、教育の責任明確化に資するだろう。生活保護も、現物給付の導入で、旭川から札幌までタクシーで治療するといった無法は許されなくなるだろう。年金制度改革も、既存政党が出来なかった抜本改革による積み立て制への移行という真に持続可能な制度を提案している。

しかし、維新の会のすばらしいところは、それらの個別の政策を貫く理念として。「個人、地域、国家の自立」を掲げていることだ。地方主権、首相公選、参議院改革と国家の統治構造改革の提案も、この理念にもとづくもので、この理念には、全面的に賛同する。

実は、この理念は、民主主義の理念そのものとも言える。民主主義とは、言い換えれば自治の精神だ。やっと、日本にも借り物ではない民主主義の動きが出てきたといえよう。逆に、いままでの既存の仕組みが如何に反民主主義であったかということだろう。

維新の会の政策は、従来の日本の常識から見ると一見荒唐無稽に見えるかもしれない。しかし、それぞれの政策は、奇を衒ったものではなく政策科学の王道に準拠している。例えば、バウチャー制度は、ノーベル賞学者のフリードマンにより提唱され、アメリカでは実践もされ、効果の程が確かめられている。年金の積み立制は、いかなる人口変動にも影響されないのは仕組み上あきらかだ。年金官僚の裁量に伴う無駄も原理上排除される。

首相公選制も、日本政治の宿痾とも言える総合調整の欠如に対する当然の制度的対処だろう。維新の会に対する根拠のない政策批判が溢れているが、むしろ、維新の会の政策は、グローバル・スタンダードに近い。

橋下氏のリーダーシップはすばらしい。ただ、解せないのは、みんなの党との関連だ。維新の会の政策は、みんなの党とオーバーラップしている。ブレーンも共通した人が多い。ところが、橋下氏が提携をしたのは、公明党。政策本位といいながら、政策的には極めて遠い公明党と協力する意図は何か。ここは。説明不足だろう。

日本は、いま衰退の危機にある。あかにまみれた明治以降の体制の総点検をしなければならない。まさに、坂本竜馬のような構想力が必要だ。ただ、竜馬の構想も、当時の欧米の制度を実現するための当然といえば当然の提案で、その底流は広く共有されていた。橋下氏の提案も、個々の提案自体は既にあるもので、構想自体は、新規性がそれほどあるわけではない。注目すべきは、それらの提案をまとめ実現にむすびつける変革力だろう。橋下氏は、これまでのところ順調にその動きを進めてきた。ただ、今後の抵抗は、激化が予想される。民主党のように腰砕けにならないことを、切に願う。

(なお、小生は、橋下氏の個別政策では、道州制、地方消費税、エネルギー政策に、賛同できない。道州制は財界も熱心な推進者だが、小生は、県を廃止し、一段階の300の広域自治体への再編を支持する。もっとも大阪都構想はその一環として支持することにやぶさかではない。反対の理由は、道州政府は、地域にとってあらたな国となる可能性が高いからだ。財界の提案もよんでみたが、なぜ、道州制が経済の活性化になるのか皆目理解できなかった。藩規模の自治体が、自主的に道州レベル相当の協議組織を設けるのがいいだろう。地方消費税は、徴税システムの原理上、地方政府にはそぐわない。地方は、あくまでも固定資産税に依拠すべきだろう。そして、地方の業務範囲も固定資産税でまかなえる範囲に限定すべきだろう。ただ、これらの欠点よりは、大きな自立理念の実現が重要だ。個別の欠点をあげつらい大道を見失うべきではないだろう。)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿