うらくつれづれ

折に触れて考えたこと ごまめの歯軋りですが

日本の道路改革

2007-08-28 14:38:38 | 政治・行政
2007/3/19(月) 午後 10:07

リッターあたり50円近いガソリン税などが原資となっている6兆円近い規模の、道路特定財源のありかたが問われている。本四連絡橋に対する赤字補填がなくなり、毎年5000億円ほどが余る想定という。財務省は、一般財政赤字補填、国土交通省は、使途を交通インフラ全般に拡大、環境省は、環境関連経費への充当、地方は地方配分の増額、自動車業界は減税、と意見が対立した。結局、昨年末、道路整備利用を拡大すると同時に余剰資金は一般財源に繰り入れることで決着した。

道路特定財源は、日本の総道路予算の約半分を占めている。そのうち、国は30%地方が20%使っている。他の半分は、財投と地方債等でまかなわれている。実は、国民負担はそれだけに留まらない。小泉道路公団改革で平成17年10月に発足した日本高速道路保有・債務返済機構(純資産約5兆円)は、約38兆円の負債があり、それを45年で返済していくという。

道路はインフラのインフラと言うべき際重要インフラです。電気、ガス、水道、通信、建物もすべて道路インフラに依存しています。道路が悪ければ、他のインフラも発展しようがない。日本の一般道は、舗装はほぼ100%に達したが、地方では道路と呼べない細い道が多く、とても整備が終了したとはいえない。一方、「こんなところに」と思うような場所に立派な農道が走っていたりする。また、東京の高速道路は慢性的に渋滞しているのに建設が滞り、車が少ない田舎の高速道路の建設が進められている。米国のフリーウエイと比較してもっとも実感として問題なのは、日本の高速は地域社会と分断されていることだ。米国では、数百M高速に乗ってすぐ一般道に下りることが普通にできる。一般道の補完、地域の足としての高速となっている。日本でこういうことができないのは、有料だからですが、さらにインターチェンジ間の距離が焼く10KMと長いのも原因です。米国ではニーズによりインターチェンジが自由にでき、当然パーキングエリアの業者による囲い込みもない。市場原理にもとづき、給油所と休憩施設が民間で供給されている。

日本の道路行政の問題の根幹は、国と地方の責任分担が時代遅れとなっていることです。地方に能力のなかった時代、国は国道整備により国土開発をはかりました。しかし、いま、従来の国道の整備を国が行う理由を見つけるのは困難となりました。一般国道整備は道路特定財源(プラス国土交通省省職員)ごと全面的に地方に移管すべきです。一般道整備が地方に移管されれば、農道との重複と言った事態は、地方の自主性により自動的に解決されるでしょう。また、市町村内の道路の整備は、これも全面的に市町村に移管されるべきでしょう。自分たちのことは自分たちでやる。これが、無駄を制御する究極の仕組みです。さらに、これは、用地取得にありがちな「ごね得」抑制にもつながります。

さて、国に役割は、一般国道から高速道に移るべきです。国土形成全体に影響するからです。現状、これが特殊法人化されています。そして、法人化されているがゆえに、地域社会との分断を引き起こしています。特殊法人を解散し、国土交通省自身が、国道としてただで国民に提供すべきでしょう(前々回の総選挙での民主党の考えに近い)。

道路が利用者にただで提供されるべきという考えは、経済学的根拠があります。初期投資が膨大となるインフラ事業については、建設固定費は税金でまかない維持管理費のみ利用者に課すのが、経済的厚生を最大にするとされています。道路特定財源は利用料見合いとされ、これを維持管理に充当すれば、利用者料金はただでいい。ただ、その場合、建設計画が議会で合理的に決定される必要があります。そうでないと、無駄な道路ができます。これを防ぐため、建設費を含めて道路特定財源でまかなうというのは、一定の合理性があるでしょう。(なお、経済学的厚生が最大となるのは、利用効率の向上を通じてなので、混雑が発生する場合、混雑料を課して需要抑制することは必要。この場合、混雑料収入は、混雑解消のための道路投資にあてるべきです。)

思えば、小泉・猪瀬道路公団改革は、ボタンを掛け違えました。本来、国のやっていることを地方に、特殊法人の仕事を国に移管すべきでした。やったことは、特殊法人を4分割して焼け太りさせ、必要性の疑われる道路の建設は継続し、道路建設計画の非効率を温存し、既存高速道路の効率的利用を阻害し、高速道路による地域の分断を放置しました。民営化という言葉のみに幻惑され、本来公共財の果たす効果と提供システムに配慮が不足していたいえるでしょう。公団の債務処理は、国家直轄という原理のもとで考慮すべきでした。そうすれば、高速料金の無料化実現のため道路特定財源の一部利用という考も出てきたでしょう。揮発油税等の税率は、あらかじめ決定するのではなく、毎年の必要額に応じて税率を毎年決定すべきでしょう。小手先の帳尻あわせでなく、経済の発展を考えた道路政策が望まれます。


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