うらくつれづれ

折に触れて考えたこと ごまめの歯軋りですが

地域経済活性化

2007-08-28 14:41:11 | 経済
2007/1/31(水) 午後 3:01

地域とは国に対する概念ですが、世界的な観点からは、日本国全体が世界の中の一地域です。理屈の上からは、国内の地域発展政策に対する考え方は、日本経済全体の発展政策と同様の枠組みが適用できる筈です。

国の経済発展戦略の中心にイノベーションをすえるのであれば、地域経済発展戦略の中心もイノベーションであるべきでしょう。

イノベーションに限らず、日本経済全般に対する政策提言はすべて、地方にひきなおしたときに、どういうことを意味するか、と言う観点から考えることができます。

また、時代認識としての、グローバル競争と地域、ワークライフバランスと地域といった観点も見逃せません。

経済の活性化または発展の目的は何か?これは、その国、地域の人々の生活水準(一人当たり消費)の向上です。それを支えるのが一人当たり所得=生産額(付加価値)の向上であり、これは、生産性の向上により達成される。生産性は、また、経済の国際的競争力の源泉でもあります。

本来、政策や経済活動の目的は、人々の幸福の最大化です。しかし、幸福は、個人の価値観に依存するものであり、政策目標として使い勝手が悪い。そこで、人生における不幸の原因は多くは収入に起因してことに着目し、一人当たり所得=生産の向上が通常代替目的となります。

国、地域を問わず、経済の発展とは、一人当たり所得=生産の向上を意味するもの捉えるべきで、それを達成する唯一の手段は、生産性の向上です。

シュンペータが明らかにしたように、生産性の向上は広義のイノベーション=新結合により達成される。そう言う意味では、イノベーション政策は、生産性向上運動と同義になります。

問題は、イノベーションというと、イノベーションを起こすこと自体が自己目的化して、生産性向上という究極の目的と乖離するおそれがあることです。イノベーションはあくまでも手段であり、その意味では、生産性向上が本来目的であることに注意が必要と考えます。

例えば、地域にヒト・モノ・カネ・情報を集めるために地域では、イベント企画が多く実施されますが、果たして生産性向上に資するものか、疑問があります。

イベントが生産性向上に資するのは、イベントを通じて地域に何らかのイノベーションが生
み出され、それを核として更なるイノベーションを誘発する場合に限られます。一過性のイベントは、地方を疲弊させるだけにおわるでしょう。

イベント実施の判断基準を生産性向上視点にするべきでしょう。イベントだけで日本経済の長期的発展を図るという考え方の愚は明確ですが、地域開発となると眼が曇ってしま
すのは残念なことです。

(アートやイベントを利用した地域振興は、小生は全面否定するものではありません。意見にも述べましたが、本来は、幸福の最大化が経済の究極の目的でその重要なエレメントの一つがアートです。京都ブランドは、日本最高の地域ブランドの一つでしょうが、過去の京都人のアート生活の伝統が地域経済のインフラとしても残存していることによるブランド形成の例でしょう。また、女性のファッシ
ョンブランドはアートと不可分ですね。

工業社会においても、日本の電気製品のデザインには、日本文化の簡潔性の伝統があり、それが世界にアピールした側面があります。むしろ、今後は、高付加価値生産活動には、アートやそこに表現する価値観を明示化する方向が不可欠と考えます。生産性は、アウトプットをインプットでわったものですが、インプットは(材料の質と)効率性が課題、アウトプットの方は、高付加価値化が課題です。高付加価値化に手段に一つとして、アートは大きな役割を果たすものではないか、と考えます。なぜなら、今後の需要は、物ではなく生活になるという大きな流れの中で、アートは、生活の質を考えさせる一つの契機だからです。(もっとも、これもアートを功利的に捉える考えで、アーティストの反感を買うかも知れませんが)。アートなどの文化的伝統も都市計画と同等の産業インフラとして積極的に発展させ活用することが必要でしょう。)

長期的に経済の生産性を向上させる源泉は、国も地方も、イノベーションの基盤となるインフラと人材です。従って、地域経済の発展の王道は、法制度などを含む広義のインフラ整備と人材確保です。

以上の考えからすれば、地域ですべきことは、まず、地域の生産性の現状理解、さらに、インフラ・人材における自己診断と評価でしょう。また、生産性向上のためのイノベーション促進システムの構築ということになります。

生産性競争において重要なのは、まずポーターのいうポジショニングでしょう。

いかなる分野において、その企業、地域、国が競争力を持つか、これを探ることです。地域が、あらゆる分野で競争力を持つのは不可能です。競争優位可能な分野を選択し、集中的の資源を投入し、生産性向上をはかる必要があるでしょう。

地域では、昔ながらの産業をそのまま維持しようとする強い慣性がありますが、大胆に社会の需要構造の変化を見通し、需要を先取りする決断が求められます。

一つの考え方は、日本社会が直面する様々な課題は、経済的に見れば、需要の塊とみなすことができるということです。課題解決に地域をあげて取り組むことは、地域開発のみならず日本経済のボトルネックの解消にも資することになります 。

地域イノベーション促進システムとして重要なものの一つは、地域間の競争と協調です。これは、企業の場合も同様ですが、競争圧力がイノベーションを生み出し、それを育てるのが協調でしょでしょう。例えば、都市と農村は相互補完関係にあり、各地域は独立しては存続しえないという認識が必要でしょう。

また、競争システムの前提として、評価システムの構築があります。日本では、あらゆる分野で評価システムが貧弱で、評価そのもに対する強い抵抗があります。

競争には、価格競争と品質競争がありますが、品質は、一見、目に見えないため、品質が明示されないと、価格競争と品質劣化のスパイラルに陥る恐れがあり、そうなると、中国製に対抗することは不可能になるでしょう。きちんとした付加価値を確保するためには、品質を眼に見える形にすることが必須です。

一部に試行されている地域ブランド政策は、ブランド・プレミアアム確保という側面もありますが品質保証の意味が大きいと思われます。

実は、大部分の財にかんしては、品質保証があればフェアな競争ができるのではないか、と推測します。また、ブランドも乱立するに従い、単なる品質保証になるものでしょう。それならば、品質保証による競争力の問題として考えた
ほうが適切と思われます。

品質保証をこえた真のブランド確立に資すると思われる方策の一つが、ネイションワイドでの品評会とその権威付けでしょう。コンテストに優勝するためには、必然として地域企業の努力が求められ、これがイノベーションをもたらすでしょう。このためには、世界にも認められるようなコンテストにおける公正な評価システムが必要でしょう。

インフラに関しては、ICTインフラの重要性に目おむけるべきでしょう。米国経済の最近の生産性向上には、ICTが大きく寄与してとの分析がされています。日本のICT活用レベルは、依然として世界とは格差があり、ICTによる生産性向上余地が大きいことは間違いない。問題は、企業、特に中小企業のトップにこの認識が薄いことでしょう。

需要を確定すれば、必要な人材も明らかになります。問題は、いかに確保するかです。基本は、人を引き付ける条件を整備するということですが、人口流出地域には、この条件がないということです。つまり、生産性低→所得低→人材流出のサイクルがあり、これを逆転する必要があります。

方策の一つは、限られた資源を特定分野へ集中投入することにより、イノベーションを体化した高生産性部門を創造し、そこを核に上記プロセスの逆流を起こしていくことです。

また、実は人材を引き付けるのは、実質生活水準であり、必ずしも所得金額ではないことも考慮すべきでしょう。地方には、金額に換算できない環境や生活スタイルがあり、これを考慮した人材誘致戦略が考えられるべきでしょう。

ワークライフバランスの実現は、中央より地方において実現が容易であり、地域社会とし てこれに率先して取り組み、実績を強調することが考えられます。国もこれを後押しすべきでしょう。

さらに、ICT技術は、距離をこえて労務等のサービスを提供する手段であり、この点でも有用でしょう。地域の人が、高生活水準を維持し、自ら生活楽しんでいる姿を見せる、これが地域に人材を引き付ける要件でしょう。

この地域の人が生活を楽しんで知ること自体が、実は、観光産業の振興にも必須の要件と考えられます。

むかし、旅行が贅沢品だった時代には、名所見学が観光目的でした。しかし、いまは、地域の人の楽しんでいる世界に参加し、それを垣間見ることが、目的となっているのではないか。

例えば、豪州に行って日本の旅館に泊まりたいと思う人はいないでしょう。豪州人がつくりあげた豪州ならではの生活スタイルが魅力的なのです。

基本的なインフラとしての宿泊施設は必要としても、ホテルに泊まること自体は観光目的になりえません。

観光のための観光開発ではなく、地域の生活そのものを見せることが重要でしょう。そのためには、他人があこがれるほど、地域の人自身が地域での生活を楽しんでいることが必要です。今後の地域インフラの整備もこの点を重視すべきでしょう。

最後ですが、自治体が地域振興に果たす役割は大きなものがあります。自治体のビジネス環境整備のあり方についても提言すべきしょう。

また、地方の経済団体に対し、地域イノベーション創出運動などの指針を提示することも有用ではないかと思われます。


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