岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

三十代の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月26日 01時19分13秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・足早に駆け抜けしわが三十代聖橋散る枯葉ボブ・ディランなど「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「モダンな心理詠」だ。作者は「かまくらもだぁん」という表題の歌集を上梓しているので「モダンな感覚」の持ち主だ。作者の美的感覚を表現した作品。佐藤佐太郎に学びながら、佐藤佐太郎とは全く異なる感覚。独自性とはこういう出方をするのだ。何も突拍子な作品が独 . . . 本文を読む

夕霧峠の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月24日 15時46分13秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・秋草の花みな濡れて霧になびく夕霧岬といふ道を越ゆ「尾崎左永子八十八歌」所収。歌集では「夕霧岬」これで作者は歌壇で最も権威のある賞を受賞している。その歌集の表題歌である。2015年の色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「秋草」の「個別具体的」な名称は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 「夕霧岬」は実際に石川県にある。斎藤茂吉の直弟子の梶井氏の住 . . . 本文を読む

透明の香の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月23日 16時57分14秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・光さへ透明の香を持つならんこの青豁(あおたに)に羊歯ほぐれゆく 「尾崎左永子八十八歌」所収 2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「光が透明の香を持つだろう」に作者の発見がある。独自性のある「感受」とも言える。「青豁」の「個別具体的」な場所は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 また、上の句から下の句への転換は「序破急」の . . . 本文を読む

夏炉冬扇の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月22日 18時13分41秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・夏炉冬扇といへどやさしき音に立つは蔵ひ忘れし冬の風船「尾崎左永子八十八歌」所収2015年開催の「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「場所」の個別具体的な「名」は「捨象」されている。佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 上の句と下の句への転換が「序破急」の「破」「起承転結」の「転」である。また「全体」が寂しさを「象徴」しているように感じる。 . . . 本文を読む

花芽幾千の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月22日 00時14分16秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・空渡る風の音して早春の闇にふくらむ花芽幾千「尾崎左永子八十八歌」所収。2115年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。思い出した。この「色紙展」に僕は行ったのだ。「色紙展」といっても「色紙」「短冊」「掛け軸」があった。岡井隆、岡野弘彦、安永蕗子が出品していた。岡井、岡野、安永、尾崎の短冊が即売されていた。尾崎左永子の短冊はいち早くなくなり、僕が行ったときは、他の作家の短冊しか残 . . . 本文を読む

薔薇の模様の傘の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月18日 23時59分25秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・濡るるといふ程もなき街角に薔薇の模様の傘を買ひたり「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「美しい都市詠」だ。 「街角」の個別具体的な場所は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」また下の句への転換は「序破急」の「破」。「起承転結」の「転」である。 . . . 本文を読む

夏椿の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月17日 17時48分08秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・たそがれに蕊伏せて散る夏椿散りてなほ浄し夏至の土の上「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」への出品作。この段階での代表作。 二句、四区に作者の発見がある。「歌が出来なかったら、メモ帳を持って外へ出ましょう」という作者だが。漫然と外出しても「歌」は詠めない。観察眼が必要だ。五感を鋭くして外出するのが肝要だ。 この作品では「個別具体的」な場所が「捨象」されている。佐藤佐太郎の言 . . . 本文を読む

春の雲の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月16日 23時35分44秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・路地曲がるたび相変ふる街空にどの部分にも春の雲見みゆ「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品。この段階での代表歌だ。「句またがり」があるものの気にならない。三句、四区、結句が定型だからだが、「春が来たよりこび」の心の揺らぎ表現する「必然性のある句またがり」だ。又。町、路地の、個別具体的な名前は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し . . . 本文を読む

白椿の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月15日 19時10分21秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・椿白し花には花の影ありて時の記憶を思ひゐるべし「尾崎左永子八十八歌」所収。 2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表作。「時の記憶」とは何か。「季節の移り変わり」と解釈した。世がかわり、時代が変われど「椿の白」は不変である。自然の普遍性を歌ったと解釈できる。「時の記憶」の個別具体は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉のそぎ落とし」。感動の中心を絞 . . . 本文を読む

電光のニュースの歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月13日 18時21分28秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・電光のニュース動ける夜の空に垂直に昇る文字の断片 「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌だ。「電光のニュース」とは都会の夜に流れる「文字で知らせるニュース」だろう。政治経済などの情報が「電光」で示される。これを「垂直に昇る文字の断片」と捉えた。「都会の夜の情景」が浮かぶ。ニュースの内容は「捨象」されている。吉報かもしれぬし、悲報かもしれぬ。 「 . . . 本文を読む

鎌倉山を歩む歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月12日 21時04分15秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・影のごと桜散りくる夕ぐれの鎌倉山を歩みゆきたり「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」への出品作品。その段階での代表歌である。 「美しい叙景歌」難解な言葉を使わずに「美しい世界」を表現した。初句、二区に寂しさが漂う。時刻は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉のそぎ落とし」。感動の中心を絞っている。 作者の「美的感覚」を表現した作品だ。 下の句へ . . . 本文を読む

冬の憂いの歌:尾崎左永子の歌

2022年11月11日 19時21分50秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・冬の憂ひといはばいふべし乾きゆく枯れあぢさゐの淡青を「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この段階での代表歌。「枯れアジサイ」の植えられた「個別具体的」な場所は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」作者の言う「言葉のそぎ落とし」。感動の中心を絞っている。美しい叙景歌だ。 . . . 本文を読む

ジョウビタキの歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月06日 19時00分37秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・黄鵲(原作は旧字体)が芝つつきゐる冬ひざし鳥はみづから呼ぶ名を知らず ジョウビタキは「呼ばれるその名を知らない」何だか「哲学的な匂い」が漂う。それ説明にならないのかろ「初句「二句」「三句」の表現があるかただ。また「芝」の「具体的な場所」が「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」    また、読んでいて心地よい「音楽性」の高い作品だ              . . . 本文を読む

炎のごとく生きる歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月05日 23時49分09秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・いざさらば炎のごとく生きんかな誰がためにあらずひとりわがため「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。作者のかなり知られた代表歌だ。 これほど凄まじく勢いのある歌はない。作者の生き方、人生観が表現されている。佐藤佐太郎の教えで「選者」は「作者」の歌境に合わせて指導するようにと言う趣旨の言葉を残している。佐藤佐太郎の直筆のコピーを尾崎主筆から送られたのは「星座」「星座 . . . 本文を読む

幻影の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月02日 21時04分03秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・頸ほそき少女のわれをいとしみし君逝きて幻影のわが像も消ゆ「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作品。この時点での代表作の一つ。「君」とはだれだろう。具体的の名前は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」作者の言う「言葉の削ぎ落し」作者は「起承転結」と考えよ。と言うが、それがハッキリしている。初「句・二句「起」三句は「承」、四句は「転」結句が「結」また下の句の . . . 本文を読む