草むしりしながら

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草むしりの幼年時代 その4

2018-11-20 15:04:34 | 草むしりの幼年時代
草むしりの幼年時代 その4
 
 卵を買いに

 私がまだ小さかった頃というよりは、世の中がまだ大らかだった頃といった方が分りやすいかも知れない。小学生だった私は、高校生の叔父と単車の二人乗りをして、卵を買いに行ったことがある。
 
 父の一番下の弟である叔父を私は「兄ちゃん」と呼んでいた。当時叔父が世話をしていた牛の餌やりを手伝ったり、代掻きの終わった牛を小川に洗いに連れて行ったりと、いつも叔父の後をついて回っていた。一方叔父のほうもそれをあまり嫌がりもせず、私の相手をしてくれた。
 
 前後の記憶がはっきりしないが、たぶん親戚の家かどこかに行ったのだろう。卵を入れた買い物カゴを片手に持ち、もう一方の手で叔父のズボンのしっかりと握り締めていた。
 
 まだ舗装のされていない道路のあちこちに出来た水たまりを除けながら走っていた。カーブを曲がる時は内側に単車が傾き、卵をいれたかごが外側に引っ張られ目の高さに卵が見えて、持ち手をギュッと握り締めた。
 
 ゆっくりと体勢が戻ると、今度は上り坂だ。アクセルを踏み込みグングン登り切ったとき、前輪が小さくバウンドして叔父の開襟シャツと、私のちょうちん袖のブラウスの裾がふわりと膨らみ、一瞬空を飛んだ。
 
 そして見事に着地、家に向かって一直線に単車を走らせた。叔父が転ぶわけがないから、怖くもなんともなかった。