つばさ

平和な日々が楽しい

世間に良い会社と見られているところが、40年後も優良企業である確率は高くない

2012年11月29日 | Weblog
天声人語11月29日
 イチョウの黄葉が舞う歩道には、さすがにくたびれた姿が交じる。ダークスーツに白のシャツかブラウス。大学生が最後の1年ほどを託す、会社訪問用の勝負服である▼来春の卒業予定者の就職内定率(10月1日現在)が、前年より約3ポイント高い63%と発表された。水準はまだ低いが、2年続けての上昇だ。学生は有名どころにこだわらず、自分を生かせそうな中小にも目を向けているらしい▼女子の内定率が男子を上回ったのは、17年間の調査で2度目という。先輩の苦労を知るだけに、企業研究などの準備を周到に重ねてきたようだ。男子は数社だめだとシュンとなる、との観察もある▼あさってには企業と大学3年生の接触が解禁され、学生の就職戦線は二本立てとなる。下の代が動き始めれば、4年生の追い込み組には「一周遅れ」の焦りが募ろう。〈就活にやや疲れたる夜ならん迎えし犬に娘(こ)の甘えおり〉安達三津子▼4年生の未内定者は推計15万人。採用意欲は上向きながら、選ぶ目はなお厳しい。数十社も回れば己を否定された気にもなる。しかし何ごとも縁。50社だめでも、51社目の面接者が隠れた輝きを見抜くかもしれない▼週刊ダイヤモンドの最新号で、産業史に通じる一橋大大学院の橘川武郎(きっかわ・たけお)教授が語っている。「世間に良い会社と見られているところが、40年後も優良企業である確率は高くない」。そもそも、同じ勤め先で全うする人生は珍しくなろう。思い詰めず、振り返らず、顔を上げて社会に踏み込みたい。

「ダメなものはダメ」?

2012年11月29日 | Weblog
【産経抄】11月29日
 「ダメなものはダメ」。平成元(1989)年7月の参院選で流行語となった、当時の土井たか子社会党委員長お得意のフレーズである。政府・自民党の消費税構想を激しく批判する、憲政史上初の女性党首の周りには、いつも大勢の聴衆が集まったものだ。結果は社会党が議席倍増の大躍進を遂げ、特に女性議員の進出が目立った。
 ▼滋賀県の嘉田由紀子知事は土井氏と、若き日に京都で勉学に励んだ共通点がある。大先輩の雄姿を、記憶にとどめているはずだ。その嘉田氏が、新党「日本未来の党」の代表に就任することになった。
 ▼表の顔が嘉田氏なら、裏で党を取り仕切るのは、国民の生活が第一を解党して合流する小沢一郎氏以外にはあり得ない。平成元年の参院選は、当時すでに自民党の実力者だった小沢氏にとっても、忘れられない選挙だろう。
 ▼嘉田氏が、「ダメなものはダメ」と決めつけるのは、原発である。きのう初めて、「10年間でゼロにする」と目標時期まで明言した。福島第1原発事故以降、「脱原発」に勝る政治スローガンはないといえる。
 ▼ただし、代替エネルギーの確立を待たずに強行すれば、国民生活と経済に与える影響は甚大だ。数日前の小紙コラムで、増田明美さんが指摘しているように、「電気代は○倍に、失業率は○%になります」などと、負担の大きさについても、議論を重ねるべきだ。
 ▼土井氏の主張が正しかったかどうかは、その後の社会党の退潮を見れば明らかだ。嘉田氏の「卒原発」はどうだろう。嘉田氏は、東海道新幹線の新駅の建設凍結を訴えて、知事選に勝利した。最近になって、新駅についての発言が一転したとの報道があっただけに、余計に気になる。

「このままでは大変な事態に陥る」

2012年11月29日 | Weblog
春秋
2012/11/29
 お隣の韓国では、一足早く選挙戦が始まっている。次期大統領を目指す争いは与野党の一騎打ちとなり、大接戦の様相だという。政権が代われば政府の陣容は大きく入れ替わり、退いた大統領の権威は地に落ちてしまう。いやが上にも選挙戦は熱を帯びることになろう。
▼経済規模を比べれば、東京は韓国一国をも上回るマンモス自治体である。有権者から直接選ばれ、強い権限を持つ知事はしばしば大統領にも擬せられる。きょうがその都知事を選ぶ選挙の告示の日だ。13年ぶりに首都の顔が交代するレースとなるが、衆院選と投票日が重なり、すっかり影が薄くなってしまった感じがする。
▼もっとも今回の都知事選は、現職の知事が自らのイスを放り投げ、国政を目指したことから始まったものだ。盛り上がりを欠いて当然かもしれない。首長が国政に奔走する流れはなお続き、今度は滋賀県知事が新党を立ち上げた。「10年後をメドに原発から卒業する」と訴え、衆院選に100人規模の候補者を立てるという。
▼諸藩から人材が集い、新たな国を造った明治維新の例はある。だが「ひょっとして首長は片手間でこなせるのか」と余計なことも考えてしまう。いずれ来るであろう首都直下の地震や急速に進む高齢化への備えなど、足元にも難問は山積している。「このままでは大変な事態に陥る」という点で、東京は国に負けていない。