春秋
12/17付
日立製作所は従業員教育を早くから始めた会社の一つだ。明治の末に創業者の小平浪平が、発祥の地である茨城県の日立村に、鋳物づくりや製図などを教える「徒弟養成所」を設けた。鉱山用の電気機械の修理からモノづくりに出ようと、試作を重ねていた頃のことだ。
▼修理の仕事を通じてモーターや変圧器の構造はわかっていても、自前でつくるには技術を一つ一つ身につけなければならなかった。徒弟養成所は2年目以降も生徒を増やし、製品がなかなか売れないなかでも寄宿舎まで建てて教育に力を入れた。その後の会社の成長は、こうした人材育成なしには望めなかったに違いない。
▼新しい仕事を始めるには、そのための知識や技能が必要になる。技術革新が速い今はなおさらだ。ところが気になるデータがある。企業が毎月支出する従業員一人あたりの教育訓練費は1990年代に入って低下傾向にあり、2011年は91年の6割強の水準。新製品、新サービスを生みだす力が落ちてはいないだろうか。
▼企業が競争力をつけて賃金を持続的に上げられるようにするためにも、人づくりに目を向けたい。政府や経済界、労働組合の代表らによる政労使会議でも議論を深めるべきテーマだ。徒弟養成所をつくった頃の日立は技能を磨くための機械設備に不自由した。環境に恵まれた今の日本なら、やりようはたくさんあるはずだ。
12/17付
日立製作所は従業員教育を早くから始めた会社の一つだ。明治の末に創業者の小平浪平が、発祥の地である茨城県の日立村に、鋳物づくりや製図などを教える「徒弟養成所」を設けた。鉱山用の電気機械の修理からモノづくりに出ようと、試作を重ねていた頃のことだ。
▼修理の仕事を通じてモーターや変圧器の構造はわかっていても、自前でつくるには技術を一つ一つ身につけなければならなかった。徒弟養成所は2年目以降も生徒を増やし、製品がなかなか売れないなかでも寄宿舎まで建てて教育に力を入れた。その後の会社の成長は、こうした人材育成なしには望めなかったに違いない。
▼新しい仕事を始めるには、そのための知識や技能が必要になる。技術革新が速い今はなおさらだ。ところが気になるデータがある。企業が毎月支出する従業員一人あたりの教育訓練費は1990年代に入って低下傾向にあり、2011年は91年の6割強の水準。新製品、新サービスを生みだす力が落ちてはいないだろうか。
▼企業が競争力をつけて賃金を持続的に上げられるようにするためにも、人づくりに目を向けたい。政府や経済界、労働組合の代表らによる政労使会議でも議論を深めるべきテーマだ。徒弟養成所をつくった頃の日立は技能を磨くための機械設備に不自由した。環境に恵まれた今の日本なら、やりようはたくさんあるはずだ。