つばさ

平和な日々が楽しい

「自分が表舞台に立てないから、ちょっと気の合ったもんで、党をつくろうよってえのがみえちゃった」

2012年11月20日 | Weblog
【産経抄】11月20日
 古今亭志ん朝さんは昭和37年、入門わずか5年、23歳という異例の若さで真打ちに昇進している。父親が「昭和の名人」志ん生だったゆえに、「親の七光」との陰口もたたかれた。終生のライバル立川談志さんからは、面と向かって辞退を迫られたそうだ。
 ▼もちろん雑音はすぐに消え、やがて人気、実力ともにトップに上り詰める。志ん生襲名の話が出たとき、誰よりも強く勧めたのが、談志さんだった。亡くなってから11年たつ今も、CDやDVDが売れ続けている。
 ▼民主党は、総選挙に向けた街頭演説で自民党に対して、「親の七光」、つまり「世襲」批判を繰り返している。民主党は、3親等以内の親族が同じ選挙区から立候補することを禁じている。確かに自民党の公認候補を見ると、かつて同じようなルールを検討したのを忘れたかのようだ。
 ▼もっとも民主党にだって、政権交代への国民の期待を見事に裏切った鳩山由紀夫元首相はじめ、世襲議員は少なくない。世襲は古くて、新しいテーマだ。他分野から政界への人材登用の道を閉ざすリスクがある一方、ポピュリズムに流されない信念をもった政治家が育つメリットもある。
 ▼そもそも今回の選挙では、尖閣諸島問題をはじめ、消費増税、原発、TPPと大きな争点がめじろ押しだ。「そこしか攻めるところがないのか」などと、自民党から皮肉られても仕方がない。
 ▼世の中の動きにも敏感だった志ん朝さんには、国民の政党離れについて、こんなコメントがある。「自分が表舞台に立てないから、ちょっと気の合ったもんで、党をつくろうよってえのがみえちゃった」。こんな浮ついた議員が淘汰(とうた)されないのは、世襲のせいだけではあるまい。

眺望の魅力

2012年11月20日 | Weblog
春秋
2012/11/20
 もう何十年も前の話だが、東武鉄道の浅草駅に行くのが楽しみだった。百貨店を併設した駅ビルだったし、屋上遊園地にも心が躍った。屋上に遊園地をつくったのはここが日本初だったそうだ。今では変哲もない正面のエスカレーターでさえ、果てしなく長く思えた。
▼そして、建物の2階から列車がきしむ音をたてながら隅田川に飛び出して行く。旅の第一歩がそこにあった。そんな思い出深い浅草駅ビルがあす、新装開業する。すでに外観は1931年の開業当時のネオ・ルネサンス様式に復元されている。これで、5月に開業した東京スカイツリーとの相乗効果も一層高まるだろう。
▼再開発が相次ぐ浅草では凌雲閣を復活させる計画もあるらしい。別名、浅草十二階。明治半ばに建てられた八角形のビルだ。高さはスカイツリーの十分の一もないが、当時の人々には十分だった。「十二階から見た山の眺めは日本にもたんとない眺望の一つである。それは秋の晴れた日に限る」と田山花袋も書いている。
▼眺望の魅力。それは鳥の目をもつ爽快感か、地上を見下ろす小さな優越感か。東京では100メートルを超す高層ビルが急増し、400棟近くになったそうだ。こんな変わり続ける東京で来月半ばに知事選がある。衆院選との同日選だ。秋の晴天ももうわずか。誰に今後を託すのか、ここはしっかりと目を凝らさねばなるまい。