天声人語11月26日
自宅のはす向かいがコンビニで、冷蔵庫がわりに重宝している。めまぐるしい盛衰を映し、ここの店名は15年で3回変わった。徒歩3分ほどの間に、無休で競う同業が4店。道すがら、これほどのおでんを誰が買うのかと思う▼日本のコンビニが、10月末で5万店を超えたという。店を支える周辺人口から国内はすでに限界との説もあったが、消耗戦を勝ち抜いたところが増殖しているらしい▼コンビニは、独自の商品とサービスで若者の消費をリードしてきた。野菜を置く店も増え、遠出しづらい高齢者をつかんでいる。宅配便、公共料金、ATM、防犯の駆け込み寺……。生活スタイルの変化に即応し、先の大震災では、有事に頼れる社会インフラとしても見直された▼経営環境は厳しい。わが国の小売業は、縮む人口と胃袋を取り合う宿命だ。物を売るだけなら敵は多く、近くて便利は当たり前、我らお客の要求はきりがない。大手は全国を七つ八つに分け、おでんの味を変えているそうだ。おにぎりや弁当はさらに細かい▼〈コンビニのおにぎりコーナー早々と売切(うりき)れとなる田植えの季節〉内藤三男。農村や町はずれには、砂漠のオアシスのような店もあろう。旅先でなじみの看板を見つけ、助かったと思うことがある▼多機能ゆえの安らぎは、コンビニならではだ。食文化を壊すといった批判に耐えるには、深いところで消費者とつながり、味方を増やすほかない。四季に合わせ、行事をにらみ、100平米(へいべい)の知恵比べは続く。
自宅のはす向かいがコンビニで、冷蔵庫がわりに重宝している。めまぐるしい盛衰を映し、ここの店名は15年で3回変わった。徒歩3分ほどの間に、無休で競う同業が4店。道すがら、これほどのおでんを誰が買うのかと思う▼日本のコンビニが、10月末で5万店を超えたという。店を支える周辺人口から国内はすでに限界との説もあったが、消耗戦を勝ち抜いたところが増殖しているらしい▼コンビニは、独自の商品とサービスで若者の消費をリードしてきた。野菜を置く店も増え、遠出しづらい高齢者をつかんでいる。宅配便、公共料金、ATM、防犯の駆け込み寺……。生活スタイルの変化に即応し、先の大震災では、有事に頼れる社会インフラとしても見直された▼経営環境は厳しい。わが国の小売業は、縮む人口と胃袋を取り合う宿命だ。物を売るだけなら敵は多く、近くて便利は当たり前、我らお客の要求はきりがない。大手は全国を七つ八つに分け、おでんの味を変えているそうだ。おにぎりや弁当はさらに細かい▼〈コンビニのおにぎりコーナー早々と売切(うりき)れとなる田植えの季節〉内藤三男。農村や町はずれには、砂漠のオアシスのような店もあろう。旅先でなじみの看板を見つけ、助かったと思うことがある▼多機能ゆえの安らぎは、コンビニならではだ。食文化を壊すといった批判に耐えるには、深いところで消費者とつながり、味方を増やすほかない。四季に合わせ、行事をにらみ、100平米(へいべい)の知恵比べは続く。