つばさ

平和な日々が楽しい

権力者がお手盛りにしないのはなかなか難しい。

2012年11月01日 | Weblog
夕歩道
2012年11月1日
 古代ローマ皇帝ティベリウス。ごますり連中が「陛下の名前も月の名になさっては」と進言。「皇帝が十三人になったらどうする」とはねつけた。孤高の人との悪評もあるが、自制心を示す逸話。
 太陽暦を採用したローマの英雄ユリウス・カエサル。その名を七月に、ティベリウスの養父で初代皇帝アウグストゥスは八月に自身の名を残した。権力者がお手盛りにしないのはなかなか難しい。
 地方議員の政務調査費を政務活動費に改めるとか。調査研究だけでなく「飲食懇談に使いたい」と議員さん。マンガ本購入にも流用された調査費。税金という飯は、自制心なく盛り放題なのかな。

百三十五カ国中百一位

2012年11月01日 | Weblog
中日春秋2012年11月1日
 敗戦直後の日本で、「男女同権」は、一つの流行語であり、合言葉だった。一九四六年四月の東京新聞に、こんな話が載っている
▼当時の銭湯の混雑は猛烈で、燃料も不足していた。ある銭湯は窮余の策で、きょうは男だけ、あすは女だけと一日交代にした。男の入浴日、威勢のいいおばあさんが、どんどん服を脱ぎ男湯に入ろうとする。「きょうは男の日ですよ」と注意すると、「何言ってんだよ、もとと違って、いまは男女同権なんだよ」
▼この月の十日は、男女同権を記念する日となった。女性に参政権が認められた初の総選挙に向け、当時の本紙は、「婦人参政権も猫に小判か」との見出しで書いた。<大部分の女性は新しく与えられた参政権にいまだ戸惑いのかたちで貴重なる一票の行使については早急には期待できぬ>
▼だが、現実は違った。男女同権は単なる流行語ではなく、閉塞(へいそく)から解放を求める行動そのものだった。女性の投票率は六割を超え、女性代議士が三十九人生まれた。その一人が、九十四歳での逝去がきのう公表された山口シヅエさんだ
▼その訃報に、時代の流れを感じた方も多いだろう。ただ時の流れほど、男女同権は進んでいない。国際的な研究機関の「男女格差報告」で百三十五カ国中百一位。女性議員の少なさも指摘された。山口さんら先駆者の霊前に供えるには、余りに寂しい報告だ。

「1・6トンかな。ということは2トン車いっぱいくらい」。

2012年11月01日 | Weblog
【産経抄】11月1日
 「これまで執筆した原稿は全部でどれくらい?」「1・6トンかな。ということは2トン車いっぱいくらい」。先月30日に79歳で亡くなった藤本義一さんが2年前、ある新聞のインタビューに答えている。
 ▼大阪府立大学在学中から、ラジオドラマの脚本を書いて賞金稼ぎをしていた。映画のシナリオから小説、随筆まで、原稿を枚数ではなくトン単位の重さで量るのは、この人くらいだろう。しかも、書斎にこもってひたすら机に向かうタイプではない。
 ▼昭和49(1974)年に『鬼の詩』で直木賞を受賞したとき、すでにテレビの深夜番組「11PM」の名司会者として広く知られていた。娘さんが詰めかけた記者の話を耳にして言ったそうだ。「お父さん、またショーに出るの」。賞をワイドショーと間違えたらしい。
 ▼社会批評の鋭さにも定評があった。たとえば、自らも自宅で洋服だんすの下敷きになり九死に一生を得た阪神大震災から2カ月後、こんな指摘をしている。被災者に投げかけられた「ガンバレ」は、実は傲慢な言葉ではないか、と。東日本大震災でも、同じ議論があった。
 ▼藤本さんによれば、ガンバレという命令形は、自分自身にいう言葉だ。激励の言葉を唱えるだけの「ガンバレ派」に対して、実際に手を差し伸べた人たちを「ガンバリ組」と呼んだ。藤本さんは、もちろん後者だった。
 ▼兵庫県芦屋市にケアハウス「浜風の家」をつくり、震災で親を亡くした子供たちの駆け込み寺にしようとした。戦中、戦後の少年時代のつらい記憶と重なり、子供たちの苦しみが、人ごとではなかったという。もちろん、ダンディーな藤本さんは、そんな「ガンバリ」をひけらかすことは一切なかった。

心の中に境界を設けるしかない。

2012年11月01日 | Weblog
春秋
2012/11/1
 夜中に出歩かなければ、危ない目にあわない。歓楽街に出かけなければ、暴力沙汰に巻き込まれない。安全と危険を隔てる時間や場所の境界が、かつては存在した。そこを越えず日常にいれば安心できる。だが住宅地が郊外に広がり、生活が24時間化し、境界は消えた。
▼日本の安全神話崩壊を、法社会学者の河合幹雄さんは、こう説明する。境界が存在しないといえば、やはりインターネットの世界ということになろうか。なるほど、何が起きるかわからない。パソコンが遠隔操作で乗っ取られた事件に続いて、今度は約9万人のスマートフォンから、1180万件もの個人情報が盗まれた。
▼ネット上にスマホ用のサイトが開かれ、人気ゲームの紹介を装ったアプリ(ソフト)が並んでいる。ダウンロードして起動すると、アドレス帳に登録していた個人の電話番号やメールアドレスが抜き取られる仕組みだったという。こうした情報は、振り込め詐欺や悪徳商法をたくらむ連中にとって、宝の山になるのだろう。
▼境界なき世界の捜査が難しいことは、遠隔操作事件が証明している。スマホからの情報流出では警視庁が容疑者検挙に踏み切ったが、「5人逮捕」のニュースを一瞬「誤認逮捕?」と聞き間違ったほどだ。とにかく、知らないサイトやメールは遠ざける。どこへでもつながる世界であれば、心の中に境界を設けるしかない。