■上原健太郎,2016,「正規教員を目指すことはいかにして可能か――沖縄の非正規教員を事例に」『都市文化研究』18: 71-83.
概要
本稿では,「学校から職業への移行」という教育社会学的な観点から,正規教員を目指す非正規教員について論じる。非正規教員の増加が社会問題化しているにもかかわらず,従来の研究は非正規教員を真正面から取り上げてこなかった。数少ない先行研究は,非正規教員が構造的に生み出された存在であり,かれらが30歳前後で正規教員になること,またそれまでの期間,非正規教員としてある程度の満足感を得ていることを明らかにしてきた。その知見を踏まえつつ,本稿では,学卒後しばらくの期間,非正規教員として働き
続ける若者がいかなる状況に置かれ,また,非正規教員はその状況をどのように意味づけているのか,さらには,非正規教員として満足感を得ているその背景にはいかなる条件が指摘できるのかという課題を設定した。具体的には沖縄の若者を分析対象とした。
分析から明らかになったのは,流動性・非対称性・多忙といった過酷な状況である。また,やりがい・高給・浪人ネットワークといった条件が,かかる過酷な状況を緩和している点も明らかとなった。とはいえ,それらの条件が,非正規教員を教員世界に囲い込んでいる点も浮かび上がってきた。しかも,非正規教員の「正規教員になる」という達成志向が,時間の経過に伴って徐々に希薄化していく点も確認できた。つまり,30歳前後で正規教員になること,また,正規教員になるまでの期間,非正規教員としてある程度の満足感を得ている,という従来の主張からはこぼれ落ちる,深刻な現実が浮かび上がってきたのである。
キーワード:非正規教員,正規教員,学校から職業への移行,沖縄,生活史
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