打越正行の研究室 UCHIKOSHI Masayuki's laboratory

このブログでは、広島と沖縄で暴走族・ヤンキーの若者を対象とした参与観察調査をしてきた打越正行の研究を紹介しています。

暴走族のパシリになる――「分厚い記述」から「隙のある調査者による記述」へ

2016年07月25日 16時53分33秒 | 書いたもの(DL不可)

■打越正行、2016年7月25日、「暴走族のパシリになる――『分厚い記述』から『隙のある調査者による記述』へ」前田拓也・秋谷直矩・朴沙羅・木下衆編著『最強の社会調査入門――これから質的調査をはじめる人のために』ナカニシヤ出版、86-99.(全246ページ、ISBN-10: 4779510791、2530円)



概要
 参与観察における「調査者の隙」について、その意義を確認することが本稿の目的である。参与観察では、C・ギアツが民族誌の記述の方法として提唱した「分厚い記述」に象徴されるように、できるだけ長く調査を続け、また調査対象者とより深いラポールを形成することが、調査対象社会や対象者の文脈を読み解く際に重視されてきたといえる。一方、ここで注目するのは調査者が調査対象社会や対象者とのやりとりに巻き込まれるか否かといった基準である。この両者の出会い方こそが、調査の文脈を読み解くために重要である。それらの文脈をまるで一つのデータのように把握するのではなく、ある状況や相互行為に常に位置付けながら理解する必要がある。そして、その理解のためには調査者がそれらの文脈に直接に巻き込まれる余地としての「隙」が欠かせないことを指摘した。

目次
 はじめに――この本を手に取ってくれた方へ
 第Ⅰ部 聞いてみる
  1 昔の(盛ってる)話を聞きにいく――よく知っている人の体験談を調査するときは(朴 沙羅)
  2 仲間内の「あるある」を聞きにいく――個人的な経験から社会調査を始める方法(矢吹康夫)
  3 私のインタビュー戦略――現在の生活を理解するインタビュー調査(デブナール・ミロシュ)
  4 キーパーソンを見つける――どうやって雪だるまを転がすか(鶴田幸恵)
 第Ⅱ部 やってみる
  5 「わたし」を書く――障害者の介助を「やってみる」(前田拓也)
  6 「ホステス」をやってみた――コウモリ的フィールドワーカーのススメ(松田さおり)
  7 <失敗>にまなぶ、<失敗>をまなぶ――調査前日、眠れない夜のために(有本尚央)
  8 暴走族のパシリになる――「分厚い記述」から「隙のある調査者による記述」へ(打越正行)
 第Ⅲ部 行ってみる
  9 フィールドノートをとる――記録すること、省略すること(木下 衆)
  10 学校の中の調査者――問い合わせから学校の中ですごすまで(團 康晃)
  11 好きなもの研究の方法――あるいは問いの立て方、磨き方(東 園子)
  12 刑務所で「ブルー」になる――「不自由」なフィールドワークは「不可能」ではない(平井秀幸)
  13 仕事場のやり取りを見る――「いつもこんなかんじでやっている」と「いつもと違う」(秋谷直矩)
 第Ⅳ部 読んでみる
  14 「ほとんど全部」を読む――メディア資料を「ちゃんと」選び、分析する(牧野智和)
  15 判決文を「読む」――「素人でいる」ことから始める社会調査(小宮友根)
  16 読む経験を「読む」――社会学者の自明性を疑う調査の方法(酒井信一郎)
 おわりに――社会学をするってどういうこと?
 索引 



オリジナルホームページ

ナカニシヤ出版

アマゾン

インタビュー記事

書評(京都大学生活協同組合)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする