打越正行の研究室 UCHIKOSHI Masayuki's laboratory

このブログでは、広島と沖縄で暴走族・ヤンキーの若者を対象とした参与観察調査をしてきた打越正行の研究を紹介しています。

沖縄のヤンキーの若者と地元――建設業と製造業の違いに注目して

2021年05月30日 08時45分00秒 | 口頭発表


■打越正行、2021年5月30日、「沖縄のヤンキーの若者と地元――建設業と製造業の違いに注目して」日本平和学会2021年度春季研究大会ラウンドテーブル『「沖縄問題」の本質とは何か』(山形大学)

 

報告要旨
 本報告では、沖縄の周辺層に生きるヤンキーの若者たちが地元を介して建設業に移行する過程を対象とする。その過程は日本社会(沖縄を除く、以下同様)の周辺層の若者が、家庭や学校を基盤として工場労働者となる移行過程とは質的に異なるものであること、その差異は沖縄の基幹産業である建設業と日本社会の分厚い製造業の間にある分断によって生じるものであるということについて述べる。本報告から導かれる「沖縄問題の本質」とは、「骨抜きにされた自治」にあることを指摘する。


企画趣旨
 本部会は2020年5月に刊行された『平和研究』54号(特集:「沖縄問題」の本質)の執筆者および編集担当を中心に構成されるラウンドテーブルである。
 沖縄には日米安保条約に基づく米軍基地が集積し、日本国憲法による平和主義を享受できていない。このような状況は日米安保体制を基調とする戦後の安全保障政策の中で形成されてきた。なぜ日米安保体制の矛盾が「沖縄」に集中したのであろうか。その問いに答えるためには、日本と沖縄の関係、東アジアにおける沖縄の在り方、さらには沖縄自体に内在する要因とその相互作用までを捉えなくてはならない。そこで54号では「沖縄問題」には「本質」があるとあえて仮定し、その形成要因と過程を学術的に詳らかにすることを目的とした。
 そこでは小松寛が「巻頭言」にて平和研究における沖縄問題とは、どのような平和のあり方を選び、その実現のために適した政体を選ぶ、「平和」と「自立」の組み合わせをめぐる議論であったと論じた。島袋純は沖縄の有する自己決定権の正統性を日本政府による差別的政策と国際人権法から説き起こした。これに対し鳥山淳は、自立への掛け声の下で等閑視される沖縄内部の「惨憺たる状況」から再考を求める。打越正行の論稿はその沖縄内部に迫る民族誌である。戦後沖縄では製造業が発展せず、その歪みは日本型福祉の欠如という形で現れていた。そして、上杉勇司は日米の軍事戦略を論じた上で、日米安保体制の枠内で沖縄の負担軽減を実現するには、基地を全国で担う国民の覚悟が必要だと指摘した。
 以上の成果を踏まえた上で、本部会ではまず執筆者間での対話を通して、「沖縄問題」の本質について議論を深めていく。そして熊本博之は編集担当として、平良好利は非会員の立場から議論に参加し、本号の意義とこれからの沖縄問題の展望について語り合う。

 

パネリスト:
 島袋純(琉球大学)
 鳥山淳(琉球大学)
 打越正行(和光大学)
 上杉勇司(早稲田大学)

討論:
 熊本博之(明星大学)
 平良好利(中京大学)

司会:
 小松寛(成蹊大学)

 

報告レジメ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評『交差する辺野古――問いなおされる自治』――「決定権なき決定者」の選択

2021年05月02日 18時51分53秒 | その他の業績

■打越正行,2021年5月2日,「書評『交差する辺野古――問いなおされる自治』――『決定権なき決定者』の選択」琉球新報(2021年5月2日、朝刊)(https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1315134.html, 2021.5.2).

 

対象図書
■熊本博之、2021年、『交差する辺野古――問いなおされる自治』勁草書房.

 

 本書は、辺野古集落に住む人々が、普天間基地移設問題といかに対峙(たいじ)してきたのかについて描かれた辺野古抵抗史である。2010年5月、辺野古区行政委員会は、普天間代替施設の辺野古沖への建設を条件付きで容認する決議を行った。著者は「なぜ辺野古は、自らの生活環境の悪化につながる新たな基地の建設を、条件つきながら容認しているのか」と本書で問う。その問いに、17年以上にわたり通って体得した辺野古の生活の論理と時間から迫る。

 

琉球新報(書評)

 

アマゾン(書評した本)

 

勁草書房(書評した本)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする