「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。
被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」
(日本国憲法37条3項)
国選弁護人は、日本国憲法で定められた権利です。
しかし、憲法の条文が、「刑事被告人」となっていたために、
逮捕・勾留されてから起訴されるまでの「被疑者」の期間には、
これまで長い間、国選弁護人の制度はありませんでした。
そのため、お金のある人は自分で費用を支払って私選弁護人をつけることができるのに、
お金のない人は弁護人をつけることができないという不公平な状態が続いていました。
裁判の時に弁護人が必要なことは当然です。
だから、被告人に国選弁護制度が必要なことはもちろんです。
しかし、起訴される前の「被疑者」の期間での弁護人もとても重要です。
「被疑者」段階は、警察や検察取り調べを受け、捜査機関と対決しなければなりません。
法律や捜査に素人の被疑者が、弁護人の助力なしに、
捜査機関と対等に戦うことなどとてもできません。
その結果、違法な取調べや捜査が行われ、いくつもの冤罪が生まれてしまいました。
全く人違いの冤罪もありました。
犯人であることに間違いはなくても、
やったことよりも重い責任を負わされたという事案は無数にありました。
その原因のほとんどは、被疑者の期間にあります。
「被疑者」の期間にこそ、弁護人が必要なのです。
2006年(平成18年)から、ようやく、一部の重大事件について、
被疑者国選弁護制度が始まりました。
勾留された後であれば、起訴される前でも、国選弁護人がつく制度ができたのです。
ようやく、お金がない人でも弁護人をつけることができるようになりました。
2009年(平成21年)からは、被疑者国選制度の対象となる事件が拡大されました。
窃盗や詐欺、覚醒剤などの薬物事件、強制わいせつ、傷害など、多くの事件で、
勾留された時点から国選弁護人を請求できるようになりました。
(*一定の資力以下であることが必要です。)
ようやく始まった被疑者国選制度ですが、
暴行や公務執行妨害、迷惑防止条例違反(痴漢)など軽微な事件は対象となりません。
また、逮捕されてから勾留されるまでの間(最長で72時間)は、国選弁護人はつきません。
今後、さらに国選弁護制度が拡大していくことが課題となっています。