今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・中央アルプス、麦草岳・木曽前岳

2009年08月27日 | 山登りの記録 2009
平成21年8月23日(日)
 麦草岳2,733m、牙岩2,676m、木曽前岳2,826m

 8月はお盆休み以降、やっと夏らしい日が続いている。でも、本当の夏というお天気ではない。太平洋高気圧が一向に強くならないためで、何となくもう秋になったようなお天気だ。この夏のアルプスの計画はそんな訳で、天候不順により頓挫したままなのだ。一番の計画は秋まで持ち越しでしょうか。取りあえず、人の少なそうな日帰りアルプスハイキングに出かけた。やや遠いモノの、直ぐにアルプスというお気軽さは中央アルプスですね。

 木曽駒周辺で最も静かなピーク麦草岳から、崩壊した岩場を通過する牙岩を経て木曽前岳へのルートは、静かなアルプスが楽しめそうだ。余裕があれば、木曽駒とか中岳あたりを遊んでもいいか…。土曜の夕方、早めに家を出た。

 内山・麦草・杖突と、いつもの峠越えコースで伊那に出て、権兵衛トンネルを抜け木曽路に入る。木曽駒高原スキー場(跡)が今回の登山口で、夜10時に最上部のゲレンデ脇にある登山口に着いた。ここで林道が2分し、右が木曽駒で、左が茶臼山へのルートということで真新しい標識と登山届入れのポストがあった。木曽駒高原スキー場は一応休業と言うことらしいが、レストハウスや施設は既に廃墟化していて、どうみても廃業という雰囲気。スキー人口の減少で、地の利の悪いスキー場はどこも経営が厳しいらしい。まあ、スキー場とゴルフ場は一時期に作りすぎたきらいもあるし、同じ事をみんなで争って?楽しんだという時代が終わったと言うことなのだろう。林道脇の草むらに車を停めてシュラフを被った。他に車は1台停まっていたが、どっちにしても木曽駒へは『しらび平』からロープウェイというのが多数派だろうから、下から登ろうとする人は少ない。

 ちょっと寒い感じだ。木曽駒辺りにも足を伸ばそうと思えば早立ちする必要がある。観光客がやってくる木曽駒へは、既に登っている事もあるし、必ずしも登ろうとは思わないが…宝剣や中岳には登っていないのだった。

 3時30分にアラームで目覚めるが、まだ真っ暗で眠くて起きられなかった。次に目が覚めたら大分明るくなっていた。遠くに停まっている1台だけの車の主と思われる人影が、登山道入り口の林道を上っていく姿がシルエットで見えた。のろのろと起き出して支度を始める。4時半になっている。

 ここはスキー場のゲレンデの中で、一面カヤトの原が広がっている。直ぐ下にスキー場のレストハウスがやや廃墟になりつつ見える。その向こうにはスキー客用のホテルの建物があり、そこはまだ営業しているようで駐車場にはそれなりに車が停まっていた。西に見晴らしがあるが、晴れた空、彩雲がたなびく遠くに見えるぎざぎざの山並みは、そう槍穂高連峰だ。左手遠くには山の字を書いたように三つ高まりが見えているが、乗鞍岳のようだった。

 5時に出発。砂利の敷かれた林道を上っていく。行く手は麦草岳から北に派生した尾根の上部が見えている。結構急な林道で、しばらく行くと広場状になってそこでロープによって通行止めになっていた。車が2台停まっている。駐車した茶臼山分岐の登山届ポスト地点からここまで車で入れるらしい。約10分程タイムロス?をした。

 ロープで止められていた地点から更に進むと、正沢川支流幸ノ川上流を塞ぐ堰堤ダムで林道は終点。飛び石伝いに川を対岸に渡り、そこから登山道が始まった。落葉松の植林を登っていく。思ったほどの急登ではなく、ジグザグに高度を稼ぐといった感じ。5時48分に『木曽駒ヶ岳 福島Bコース4合目』の標識を見て、落葉松にダケカンバが混じるジグザグ上りはなおも続く。西に窓が開いたように展望がある。スキー場はもう大分下になって、雲海に埋まった木曽谷の向こうに乗鞍と北アルプスの槍穂高が見えた。すっきりと晴れた空は、すっかり秋の気配で空気はヒンヤリとして汗もかかない。立ち止まっていると寒くさえ感じる。

 樹林帯を登り続け、いつしか周囲の木々はコメツガやシラビソになっている。ベンチが設置された『4合半 力水』の標識がある広場に6時48分に着いた。ちょろちょろと湧き水が流れ、それが力水という水場らしい。差し込まれた樋から、ホントにちょろちょろといった雰囲気で水が流れ出していた。これは大変美味しい水だった。ちょっと休憩。

 力水からは登りもきつくなって、その分効果的に高度を稼ぐようになる。寒い位なので、汗をあまりかかないから、快調に登る。コメツガ純林になると『5合目』の標識を過ぎる。尾根に乗り、周囲のコメツガは原生林といった植生に変わる。7時40分に『6合目』標識を過ぎると、間もなく麦草岳が望まれ、石に赤ペンキで『一休み』の文字がある広場に着いた。お言葉に甘えて一休み。

 『一休み』の広場から先は大分眺めが良くなる。高度は2,300㍍を越え、馬の背から木曽駒にかけての稜線を見上げるようになった。西側の展望も開け、御嶽山・乗鞍岳・北アルプスの連嶺が見渡せるが、西から南にかけては高曇りの空が広がって青空は見えない。岩に木の根がからむ尾根を辿っていると、8時33分にひょっこり真新しいサイディング外壁の7合目避難小屋に着いた。丁度上から降りてきたハイカーとすれ違う。避難小屋の中をのぞくときれいに整頓されていて快適そうだ。直ぐ上に、これも真新しいトイレがあった。トイレの平地の向こうに、眺めが良さそうな岩が樹林から突きだしていた。広場には風力計なのか?風車が付いた鉄柱が立っていた。

 トイレのある平地から道は3つに分かれている。そのまま進むのは、木曽駒に真っ直ぐ向かう道。西に麦草岳を巻くように付けられているのは、スキー場から木曽見台を経て赤林山を巻き麦草岳に登る道に繋がるトラヴァース道。それらの道の間を真っ直ぐ麦草岳に向かう道は、藪の中に隠れ気味に上っていた。入り口には『麦草岳頂上』の看板が外れて置いてあった。休まずに、そのまま藪がちの道を上に向かう。覆い被さる草をかき分けながら、この道を辿る人も少ないと見える。

 茶臼山や行者岩・将棊頭山などの懐かしい稜線が木曽駒の奥に見える。初めて中央アルプスに登ったあの時からもう4年経つ。真下に意外に近く、上り出した木曽駒高原スキー場が見下ろせた。ぼくの車も判るくらいだ。中央アルプスはいきなり急激に高まるので、こうして見ても懐深い中腹といったものは存在しない。南北アルプスみたいな前山が無くて、薄っぺらな稜線が衝立の様に連なって居るという感じなのだ。

 藪をかきわけ登り続けると、木曽駒から木曽前岳への稜線が大きく見えてきた。木曽駒と木曽前岳の間には、つんと突き立った宝剣岳も見える。薄暗い雲に覆われてしまい、青空はほとんど見えなくなった。藪の中は刺す虫こそ少ないが、顔に突進してくる小虫がうるさく、はらってもはらってもで、イライラする。ハイマツが現れると稜線の一端に飛び出し、駒岩を見る。9時44分に麦草岳山頂に着いた。大分痛んだ『麦草岳』の山名標識と、奇美世滝方面から上ってくる道を指し示す方面標識、そして三等三角点標石があった。意外にあっけなく着いた。眺めは広闊だが、あいにくすっかり全天を覆ってしまった薄暗い雲のせいか、気分晴れ晴れという感じでは無い。その上、半袖では寒く、重ねて着た長袖シャツでもやはり寒かった。

 麦草岳は、南西側にハイマツに覆われた緩やかな尾根が伸び、駒石が点景になってなかなか素敵な雰囲気だ。御嶽山や乗鞍・北アルプスといった眺めに加えて、木曽福島の町の向こうには延々と山並みが幾重にも続き、ここに来て見えるようになった恵那山や南木曾岳、そして中央アルプスの主稜線から孤立した三ノ沢岳も姿を現した。気になっている、三ノ沢岳から下る尾根の中間にある突こつとした岩山、蕎麦粒岳も見える。

 三角点の傍らに腰掛け、佐久のスーパーで昨晩買った『おやきパン』を食べる。パンなのに野沢菜の具というのが長野県…2つ買ったのだが、もう一つにはナスが入っていた。でも、案外美味しかった。他に、これもご当地もので『カステラジャム』という名前で、パンの間にジャムをたっぷり挟んだカステラがサンドしてある、何となく懐かしいような…レトロな雰囲気のパンも買いました。これが美味しい。入っている袋の図案も、今時これは無いよね、といったレトロさ。また後で買おうと思った程だった。

 休んでいると寒いので、10時10分に麦草岳から牙岩方面に進む。麦草岳からは、ますますルートもはっきりしない。ここから牙岩を経て木曽前岳に至る道は、エアリアで『危険』とか『不明』とか書かれた破線ルートで、牙岩付近の崩壊が激しいから最近はますます歩く人も少なくて、一部バリエーションルート並になっていた。特に、麦草岳から一気に下る急斜面は、藪とお花畑に道も消え、足場も悪いので危険だ。稜線の西側は大崩落しており、稜線も浸食されてかつての道は崩れ去っていた。そのため、東寄りにお花畑の中を迂回していく。

 ウスユキソウ・ヤマトリカブト・ミヤマシシウド・イブキトラノオ・タカネニガナ・アキノキリンソウ等が、にょきにょきと生えた様な花崗岩の柱状オブジェの間のわずかな平坦地にお花畑を広げていた。そんな訳だから、このお花畑を見る人も少ないのだろう。薄暗い雲から、時折雨がぱらぱらと落ちてくる。予報では、午前中は曇りがちながら昼過ぎから晴れるというものだったが…。雲に覆われた空は暗い。遠くに見える北アルプス方面は上空に青空が広がって、槍・穂高連峰は陽を浴びているのが見えるし、やはり遠くに見える蓼科山も陽が当たっていた。

 危なっかしい崩壊斜面の縁を慎重に上下して、またお花畑と藪を迂回し、錆びたクサリが付けられた岩場を通過していく。そそり立つ牙岩は裏側に2段の木のハシゴが付けられていて、その上に立った。上部のハシゴは一部朽ちかかっている。牙岩を過ぎると、木曽前岳との鞍部に降りる。ここには『牙岩』の看板と方面標識が立っている。危険箇所はここまでで、見下ろす北俣沢は一直線にV字谷が切れ込んで、凄まじい景観だ。11時46分に牙岩と木曽前岳の鞍部に到着。麦草岳からここまで、距離からは考えられないくらい時間が掛かった。

 牙岩鞍部から木曽前岳は、西側の崩壊した岩の大斜面を避けてハイマツの斜面を北側に迂回しながら登って行く。西側が大きくえぐれて崩壊した麦草岳と、崩落した岩斜面が続くここまでの稜線が良く見える。金掛岩方面から上ってくる道と合流し、真新しい石祠がある分岐ピークから一旦下って上り返した平坦なピークが木曽前岳の山頂だった。12時33分に木曽前岳に到着。

 直ぐそこに鞍部にある青い屋根の玉ノ窪小屋を挟んで、木曽駒が目と鼻の先に近づいた。木曽駒やそこから続く中岳・宝剣岳の山頂部には沢山の人が居るのが見て取れる。そこまで行けないこともないが、あんな人混みにわざわざ行くこともないだろう。ここには誰もいない。静寂が満ちていた。割合広々して、あまり山頂らしくない木曽前岳の山頂で、今日はここまでとしてのんびりすることにした。湯を沸かしカップラーメンとコンビニのおむすびを食べる。飽きない眺めを写真に撮ったりしてしばらく解放。

 次第に青空が広がって、西面は凄絶な崩壊斜面の宝剣岳や向かいの三ノ沢岳は対照的。片や岩の殿堂、片やどっしりとハイマツに覆われた典型的な日本アルプスの山だ。1時36分に山頂を降りる頃には、夏空ならぬ高層雲を刷毛で掃いたような真っ青な空が広がっていた。ようやく寒くなくなり、半袖になって下った。山頂に居る間に3人程ハイカーがやってきたが、目の前にある喧噪の木曽駒?に比べれば、静かすぎるほどのアルプスだ。下った木曽駒との鞍部にある玉ノ窪小屋もひっそりとしていた。

 木曽福島Bコースの標識に従って、玉ノ窪と呼ばれるカールを下る。一旦下って、木曽前岳や牙岩の下をトラバースし、そのまま麦草岳も巻いて7合目避難小屋に繋がる道だ。牙岩の巻き道辺りは、柱状の岩が帯の様に連なり特異な景観。途中、水場が2カ所程あって、周囲はお花畑になっていた。ミヤマダイコンソウやヨツバシオガマ・ウサギギク・チングルマ・オトギリソウ等が点々と花群をつくり、湿り気の多い所はヤマトリカブト・ミヤマシシウド・オタカラコウ等が
見られた。8月も下旬になっている割には花が多く見られる。

 麦草岳の巻き道は、高拒のある急斜面に桟道が渡され、巻き終わると行きに通過した7合目避難小屋に3時半に着いた。陽射しが強いが、暑いという程ではない。短い夏がいつの間にか終わって秋の陽射しになっていた。決して時間的に余裕があった訳ではないが、後は下るだけだから、ここでまた湯を沸かしてコーヒーを飲んだ。一回の山行で2回も湯を沸かしてブレークすることは、ぼくとしては珍しい。いつも歩きすぎて、時間的に余裕のない山ばかりで、せわしなく感じている。たまには良いかな。

 もう、誰もやってこない。3時47分に7合目避難小屋から最後の下りを坦々と下る。大した疲れも感じず、林道に降りた。林道の閉鎖箇所にも、もう車はなく。登山口のスキー場は森閑としていた。5時半に駐車地点に戻った。

 帰りは、昨年秋やはり中央アルプス(南駒ヶ岳・越百山)に登った時に寄った天神温泉青雲荘の赤い湯(メタケイ素)を独り占めして疲れを癒し、250㎞の道程を引き返した。家には11時頃着いた。

 ちょっと外せば、こうして静かなアルプスが楽しめる。まだまだ中央アルプスは遊べるかなあ

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2 コメント

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麦草岳から木曾前岳の間に鎖線ないですね (ノラ)
2009-08-31 21:19:36
あさぎまだらさん こんばんは。私は中央アルプスは殆どしらないし,エアリアのマップも持ってないのであさぎまだらさんが歩かれたコースがどんなものなのか記録を読んで,2万5千の地図を見て想像するしかないのです。地図で見るとコースは長いし,おまけに麦草岳と木曾前岳の間は破線が入ってないので明確な登山道がないってことですよね。標高の高いところで,人の歩いてない所を歩くというのは勇気がいることだと思います。うーんです。さすが若い時は岩登り小僧と呼ばれただけのことはあるなと
感心するばかり。これじゃ寒かったわけだと思ったしだいです。
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コースはあります (あさぎまだら)
2009-08-31 23:41:34
ノラさんこんばんは。
麦草岳から木曽前岳までのコースはあります。
牙岩付近の崩壊が激しいので、現在は破線になっているようです。標識類や設置してあるクサリ、ハシゴ類も補修されていないので、怪しいものになっています。一部不明の箇所もありますが、全体としては歩くのに問題ない程度です。ただ、時間は読めません。ルートファインディングとか崩壊した箇所の迂回がありますからね。難しいコースではないと思います。一般ルートとしては?ですが…。
寒かったですね。標高2800㍍前後ありますからね。
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