今度、どこ登ろうかな?

山と山登りについての独り言

・荷鞍山、白尾山、アヤメ平

2009年10月27日 | 山登りの記録 2009
平成21年10月24日(土)
荷鞍山2,024.0m、白尾山2,003m、中原山1,968.8m

 来週は雨模様の天気になるという。土曜は晴れるが、日曜は曇りで、月曜火曜は雨が降ると、天気予報は言っていた。土曜が晴れるなら、どこか行こうかな?このところ遠出が続いている、と言うより随分地元の山にはご無沙汰だった。今年は夏に登った本谷山がかろうじて県境の山だが、登山口は新潟側だ。そうしてみると、年始めに登った浅間隠周辺の山以来、地元の山は登って居ないことになる。登ってしまった山ばかり、という訳でもないし登って居ない山は幾らでもある。ただし、道が無い山がほとんどだが…。今回は、久しぶりに尾瀬の山に登ることにした。尾瀬方面は4年前に黒岩山・赤安山へ行って尾瀬沼まで周回して以来だ。

 富士見峠やアヤメ平付近には行ったことが無い。観光地と化している尾瀬は、アプローチの面でも制約が多く、当然人も多いからなかなか足も向かない。最近では『尾瀬国立公園』として、単独国立公園化して一層入山者も増えているそうだ。日光国立公園という他県の名前で一括りにされていたのは、群馬県人としていささか不愉快ではあったものの、単独国立公園化を目指した地元(自治体)の真の意図にも、ややきな臭いものを感じるが…。

 富士見峠から荷鞍山と白尾山(できれば皿伏山まで)に加え、行ったことが無いアヤメ平も見ておきたい。荷鞍山はガイドブックにルート記載がない山だが、東電の巡視路がちゃんと通じていて、『隠された登山道』になっているというミステリーめいた山らしい。白尾山付近の縦走路から、入口を分からなくするようなカムフラージュがあるということだ。土曜のお天気を信じて尾瀬がある片品村に向かった。

 金曜の夜9時過ぎに家を出て、1時間半で尾瀬の玄関口戸倉に着いた。冗漫な富士見林道を2時間歩くのもなあ、とこのとき考え、交通規制も終わっている鳩待峠に一旦向かってみたが、津奈木の分岐で通行止めだった。夜間工事中で午前3時過ぎまで不通だという。その上、鳩待峠の駐車場は、何と普通乗用車一日2500円も取るそうだ。尾瀬国立公園というのは、こういう事だったらしい?そういえば、何となく片品村周辺全体にショウバイ・ショウバイという鳴き声が響き渡っているようだった。自然保護とか、環境保全とか、自然遺産をなんたらとか、のかけ声の後ろには、そろばん玉を弾く姿が重なるのだった。尾瀬全体に漂う、大義名分の明と暗、は今回のハイキングでも一杯見せられた。そんな事はともかく、尾瀬戸倉スキー場の分岐から富士見峠へのルートを示す何の案内もない富士見下ゲートまで車で入った。

 既に紅葉はピークを過ぎ、富士見下へ向かう狭い舗装路は色とりどりの落葉が降り積もっていた。舗装路が終わると広場になってゲートがあり、そこが終点だった。道の両脇が駐車場で、一台だけ車が停まっている。終点の100㍍程手前には、トイレと広い駐車場もある。ここにかつて富士見下山荘という建物があったそうだ。尾瀬の他の登山口と違って、ここの駐車場は周年無料らしい。その分、ここから標高差700㍍、距離にして7.3㌔の林道歩きがあるから、人気もなく静かだということだった。しかし、尾瀬登山の黎明期は、この富士見口が尾瀬への主要入山口であったのだという。ぼくは、大清水口からぞろぞろと列になって、未明の尾瀬沼に登っていった時代からしか知らない。その後は、最も楽に入山できる鳩待口がメインになり、今に至っている。

 まだ夜の11時を過ぎたばかりで、近場は、やはりアプローチも楽だ。思った程寒くはなく、今回から車内用に持ち込んだ冬用のシュラフに潜って眠った。アラームは5時半、出発は6時とした。アラームが鳴る5時半までぐっすり眠った。アラームで目覚めたが、まだ暗い。予報の「朝のうちは曇り」の通り、どんよりと曇っていた。車がいつの間にか2台増えていた。アラームを6時にセットし直して、またシュラフに潜った。6時に起きて、今度は支度を始める。パンを食べていたら、一台また車がやってきた。

 6時25分に出発。後着の車の主も支度をしていた。未舗装の林道を上っていく。しばらくは12曲がりの名の通り、大げさに迂回しながら高度を上げていく。しばらく登ったら、直ぐ下にぼくの車があった。この辺りはブナやナラの巨木が多く、それにモミジも混ざって、終盤になった紅葉の名残で彩られていた。長い林道だから、急がずにゆっくりと登っていく。硫黄沢から冬路沢沿いの道になり、斜めに上っていく道になると、間もなく平坦な公園のような森に出る。この付近まで来ると、ブナはすっかり落葉し初冬の雰囲気だ。下生えの笹が何故か刈り払われていた。行く手のアヤメ平付近の稜線が高く見えるようになってきた。対岸には白尾山から続く、特徴ある離れた双耳峰の荷鞍山が姿を現す。この形を荷鞍(にぐら)に見立てたのだろう。

 空はどんよりと曇ったまま。時々太陽の位置が分かる程に、薄くその姿が見えかけるが、一向に晴れて行く気配は無い。どうもこういったお天気は、その後も晴れて行かない事が多い。この日もそんな予想のまま、結局終日青空は見られなかった。

 林道の砂利を踏む音と、時折鹿の遠音が響く以外は何の音もしない。林道の脇に、塩ビパイプを突き刺してある水場があったので、持ってきた水を入れ替えていると、後着した人が軽装で追い抜いていった。様子からすると、アヤメ平に写真でも撮りに行くといった感じか?その後も単調な林道を辿り、やや飽きたかなと思った辺りで、『水場』と書かれた札が下がった検地ブロック積みの『大げさな水場』を過ぎると、意外に大きな緑色のトタン屋根が見えてきた。8時24分富士見小屋に到着。

 木造の大きな富士見小屋は、もう営業を終わり、全ての窓や戸は固く閉ざされて森閑としていた。その小屋の前で、先ほど追い抜いていった後着の人が食事をしていた。それともう一人、小屋の前で仰向けに寝て休んでいる人がいた。

 富士見小屋の前には立派な公衆トイレがある。アヤメ平方面に向かう道には、東電製の『尾瀬国立公園』と誇らしげに書かれた大きな看板と、尾瀬のマップ入れが置いてあったが、ご自由にお持ち下さいと書かれたケースにはマップは無かった。もう、シーズンが終了しているので撤去してしまったのだろうか?登山道が始まる所に、人工芝のマットが付けられ、『尾瀬に雑草の種子を持ち込まない様に、靴底に付いた種子を落としてから入山しましょう』と書いてある。成る程、しかしその後、この小屋から数百㍍も稜線に伸びた車道の終わりにパラボナアンテナが建っていて、そこにも同じものがあった。そこで疑問に思ったのは、この数百㍍の延長された車道(東電のアンテナ管理道路)の部分は尾瀬では無いのだろうか?という疑問。車のタイヤに付着した雑草の種子は、いくらでも周囲にまき散らされるのだろうが、あくまでも、車道が終わったところからが『尾瀬』だという欺瞞。ちょっと無理がありそうな気もする(ご都合主義だなあ)。

 富士見小屋では休まずに、そのまま白尾山方面に向かう、東電の管理道路を進む。ここは泥濘ない様に砂利が敷いてある。富士見峠の分岐を過ぎ、ソーラーパラボナアンテナが建つ所で車道は終わり、くだんの説明看板と種落としの人工芝マットが白尾山方面の登山道入り口にも設置してあった。もちろん、途中の富士見峠分岐(尾瀬ヶ原の下田代十字路への登山道入口)にもあった。パラボラアンテナからは泥濘るんだ尾瀬特有の道になるが、木道が敷設してある箇所も多い。笹の切り開きを緩やかに登っていくと、背後は富士見小屋とその上にアヤメ平の平坦な稜線が望まれるようになった。茫洋とした白尾山に近づくと、何カ所も小さな湿原を横切る。湿原は草も枯れ、ラクダ色のパッチになっていた。ほぼ平坦な稜線を鉢巻きするような道になり、目の前に双耳の荷鞍山が並んできた。繋がる稜線のどこかに、その隠された巡視路の入り口があるはずだ。

 目をこらしながら歩いているが、もう間もなく白尾山の頂上部が行く手に見えてきた。赤い木の札が下がったシラビソを見つけ、ここか?と思い笹をかき分けるが、深い藪にはそれらしいものも無い。小さく下って、あともう一度上り返せば白尾山になってしまうなあ。と、そこにあるシラビソの枝に赤テープが付けられていた。見ると、足元の藪入口が踏み固められ、明らかにそこは藪の向こうに人が沢山歩いている痕跡があった。果たして、背丈を超える笹をかき分けて踏み込むと、その先には明瞭な切り開きが続いていた。

 荷鞍山へは立派な道が続いていた。シラビソが茂る鞍部に下り、大きな岩を右から巻いて、最後の薄暗い登りを上り返すと、狭い頂上に出た。頂上から先にもずっと切り開きは続いている。荷鞍山山頂に9時45分到着。二等三角点が半分埋まって頭を出していた。その側には錆びて朽ちかけたM大ワンゲルの懐かしい青いMプレートが落ちている。シラビソの木に荷鞍山と書かれたGさん名板が何故か2つも付いていた。

 ルートはこの山頂で西に屈曲していた。山頂は非常に狭く、藪に囲まれ眺めはない。屈曲した先を進むと、下りになる地点は笹の低い下生えになって、南と西に大きく眺めがあった。山頂の南側は岩場になって急峻だった。どんよりとした空は相変わらず。高曇りなので、景色は良く見えるが…。直ぐ下に荷鞍山の南峰が近く、先には四郎岳と燕巣山が目に付き、奥鬼怒の山並と日光白根から錫ヶ岳方面の山並、真南に赤城山が遠く、西には上州武尊から笠ヶ岳・至仏山とアヤメ平へとぐるりと見渡せた。荷を下ろして、赤飯おむすびを食べ一息。やはり、今日はこのまま晴れて行きそうもない。時々、うっすらと日輪が見えるが、直ぐに雲のベールに包まれてしまうのだった。そのせいもあって、寒々とした光景だった。

 10時20分に荷鞍山から引き返し、もと来た道を辿って白尾山の縦走路に戻ってくる。そのまま緩く登り、白尾山の山頂プレートとベンチがある縦走路が直角に折れ曲がった、白尾山の真の山頂下に11時9分に着いた。白尾山の最高点は、笹などの密藪をかき分けた10㍍程先にあった。シラビソが囲む身動きできないほどの藪の中。何故か、Gさん名板は最高地点から数㍍離れた、明らかに低い所にあるシラビソの木の(どうやって付けたのだろう?)高い所に付いていた。地上3㍍くらいの所に釘でシラビソの木に打ち付けられていたのだ。

 白尾山山頂下のベンチに腰掛け、誰もやってこない山を一人で満喫。本当に静か。尾瀬沼方面に少しくだって、向こうに聳える燧ヶ岳と手前の皿伏山を見下ろしてくる。この上り下りを考えたら、展望もない皿伏山の往復は敢えて行く必要も感じなかった。晴れていたら往復しただろうが…どんより天気が行く気を無くした。

 いつまで休んでいても、誰一人やって来なかった。11時32分に白尾山から富士見小屋に引き返す。富士見小屋までは誰にも会わなかった。富士見小屋周辺では、ハイカー数人とすれ違う。そのままアヤメ平に向かう。富士見田代池塘のベンチにもハイカーが数人。眺めが良いアヤメ平に登っていく稜線の道は大変気持ちが良い。なだらかな白尾山と2つのピークを持つ荷鞍山が向かいに良く見えていた。間もなく湿原が現れ、その上に燧ヶ岳が高い。木道を歩いて行くと、広々したアヤメ平に出た。西にぽっかり至仏山が浮かんでいた。北には景鶴山や平ヶ岳へ続く山々が見えた。アヤメ平に12時46分着。残念ながら、ここの一番良いお休み場は、地元らしいグループが宴会?で占拠していた。(このグループは車で富士見小屋までやってきて山の上で宴会していた。宴会するのに許可車両のプレートを堂々と付けて来るのはいかがなモノか…既得権なのでしょうか?)

 広々したアヤメ平の景色を見ながら、最高地点の中原山に向かう。枯れ色の湿原に池塘が点々とある。至仏山と燧ヶ岳を左右に見て、見飽きた景観ながら、やはり尾瀬は良いものだ。かつて踏み荒らされて荒廃した湿原の植生回復のために、あちこちに囲われたエリアが見られた。しかし、花の咲く時期は確かに山上の楽園だろう。植生を回復している地道な努力のおかげで、随分昔に戻りつつあると言うことだ。

 12時59分に中原山三角点着。三等三角点が木道の脇に、笹に囲まれてにょっきり立っている。しかし、ここは休む場所もない。そのまま下り、横田代まで下るとお休み場のベンチがあった。湿原の真ん中にぽつんとあるお休み場は気分も良い。湯を沸かしてカップラーメンを食べようとしたら、3人連れのカメラマニア?らしいシニアハイカーがやってきた。湿原の上に至仏山が、随分近づいて見えた。南には遠く、上州武尊が薄くシルエットだ。

 少し寒くなってきた。1時21分に横田代から引き返す。アヤメ平のグループはまだ宴会中。下っていくと、もう誰も富士見小屋周辺には居なかった。富士見林道をまたぽくぽくと下っていった。こんな時間に軽装で富士見林道を上ってくる人が2人もいたが、暗くなるまでに上に着けたのだろうか?4時丁度に林道ゲートに下り付いた。盛りを過ぎたとはいえ、駐車場周辺の紅葉はまだ鮮やかだった。

 帰りは、片品村の寄居山公園というところにある、鎌田温泉・寄居山温泉センターに寄って湯に浸かる。誰も他にお客さんが居なくて、完全貸し切り状態だった。受付のおばちゃんが、ぬるくないか?とか、他に誰も居なくて寂しくないか?とか世話を焼いてくれるのだった?露天風呂こそ無い小さな温泉施設ながら、掃除が行き届いて清潔な印象で○だった。気分良く家路についた。

 お天気はどんよりと曇った外れだったが、アヤメ平付近を除けば、本当に静かな山を楽しめた。荷鞍山の道については、見つける楽しみがあるのでそのままで良いでしょう。あくまで、巡視路でしょうから。

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3 コメント

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荷鞍山 (重鎮)
2009-10-27 05:48:09
こんにちは

荷鞍山に行く道は最近では有名になりましたね。
10年前に私はそれを知らずに笹藪の中に突入しました。
おかげでストックを紛失してしまったことがあります。
それにしても、カムフラージュする意味がわかりません。

富士見林道を歩いていると、ホントにいい加減さを感じます。
車で林道に入ってきて、タラの芽を採っているんですよね。
まあ、尾瀬は富士見林道に限らす、林道は妙な許可車両がいっぱい入っています。

今度は、大清水からハイブリットバスを通すとか?
まあ、自然保護を掲げると何でもありですね。

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M大のプレートとかGさん名板見てみたいです (ノラ)
2009-10-27 22:21:49
あさぎまだらさん 重鎮さん こんばんは。重鎮さんの紅葉の荒沢岳-兎岳-灰の又は見ました。凄い写真ですね。是非見てみたいと思います。富士見峠まで車で来て宴会している、地元の許可車両って何ですかね?こういうことやってるから役人はいいかげんといわれるんですね。
荷鞍山の落ちてるM大プレートはよくなくならないものです。荷鞍山はいつか行くかもしれません。尾瀬のこのあたりって行ったことないんです。
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尾瀬国立公園 (あさぎまだら)
2009-10-27 23:15:33
重鎮さん、ノラさんこんばんは。
重鎮さんの荒沢岳~灰の又の写真、確かに凄いですね。作り物の様に見事な紅葉です。昔、あそこは登りたいと思ったままになっています。越後三山と荒沢岳・兎岳~丹後山は登っていますが…。
荷鞍山のルートを隠す理由は自然保護なんかとは関係無いのでしょう。東電の事情でしょう。
標識類や木道をせっせと設置して、尾瀬を守るというポーズをしていますが、そもそも尾瀬ヶ原をダム湖として沈めて、電源開発するためにあの辺りの山々を所有したのですから。尾瀬の国立公園化も、自治体の税収増や企業の新たな事業展開のための資本投下など、見返りを期待してのものでしょう。
本当に『尾瀬を守る』という視点なら、入山者のオーバーユースが問題になっているのに、わざわざ入山者を増加させるような事はしないですね。
それにしても、自然保護?とかいう『錦の御旗』をかざして、おかしな規制やおかしな許認可が多すぎますね。
ノラさん、荷鞍山のM大プレートはまさに年代物ですね。三角点の脇に置いてありましたが、もはや時代モノですね。あそこのワンゲルは一世を風靡しましたからね。持ち去られないことを願います。
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