平成18年5月4日(木)
(大原平ノ頭 1969.3m 御陵山 1822.4m)
3年前の11月に奥秩父の小川山に登った際、裏瑞牆(うらみずがき)と呼ばれる花崗岩の岩塔群から東一つ向こうの稜線上に王冠を二つ並べた様な岩山を見つけた。丁度落葉松の黄葉の時期に重なり、それはそれは見事な眺めだった。その山に登ろうと調べたが、先入観からそれを長峰と勘違いしてしまった。長峰に登って、それが間違いだったことを知った。その山は長峰ではなく、昭文社の「山と高原地図」によれば、あまりパッとしない「大原平ノ頭」という名前らしかった。ツインの王冠のもう一つには「千平」と、これまた冴えない名前が付いていた。
地図で登山ルートを探り、何度か登ろうと計画しながら先延ばしになっていた。先月、朝日岳に二度目の敗退の後、中途半端な時間だったから「じゃあ、ここに登ろう…」と大原平ノ頭に登るつもりで、間違って手前の岩峰に登ってしまったので、未だに未登のままなのだ。http://blog.goo.ne.jp/tsimosan/e/12f6e7b7c2a96ca0cb9520bba2f893a7参照
30日に谷急山に登ったばかりだけど、何しろこの4月からはカレンダー通りにしか休めないので、行けるときには山に行こう。ということで、因縁?念願?の「大原平ノ頭」決行と相成ったのであった。道のない山とはいえ、登り口から標高差で500㍍程度。前回様子を見た感じでは、落葉松の植林された沢筋を忠実に辿るだけでそれほど困難な雰囲気ではなかった。時間が当然余るから、この山域で登り残している御陵山(おみはかやま)もついでに登っておこう。その他に横尾山と高登谷山の地図も念のため持って行くことにした。
前夜発。川上村は何回来たかなあ?今年だけでもこれで3回目、この辺りの山も登り尽くしてきた感じ。前回失敗していたから、今度こそは登り口の林道を間違えないようにと探すが、夜中だから良くわからない。明るくなってから探そうと、高原野菜畑上部の道端に車を停めてシュラフにくるまった。何だか知らないけれど、ここに来る途中夜中なのに山岳マラソンでもしているような人たちが点々と走っていた。中高年(というより…おじいさん)ばかりなのが何とも…。
目が覚めると時刻は朝の5時半で、周囲はガスっている。道のない山だけに霧なんか巻いていては登れない、でも上空は明るいし次第に晴れてくるだろうと、もう一眠りした。
6時少し前にシュラフから顔を出すと、前回間違って登った岩峰(1,720m)が青空を背景にすっくと立っていた。まだ全天ではないが、これで晴れてきそうだ。おむすびを食べて、登山口の林道の確認をする。川端下集落のある谷(大弛林道が走る)と町田市市民休暇村(常楽院平という地名)がある谷の間の山並みの高みが大原平ノ頭だが、そのピークに向かって一筋、水流のある沢が登っている。その沢沿いの林道を詰めると、ピークの直ぐ近くまで行けると言うことだった(雑誌「山の本」にあった情報)。今、車を停めている沢沿いの林道がそれに間違いないようだった。支度をして6:30出発。青空が気持ちいい。
しばらく、25,000図に書き込みがある林道を奥に進む。高原野菜畑の外れに来ると、そこに鹿よけの電柵が林道も塞いでいた。「きのこ山だから入山禁止…」の様なことが書かれた看板が付いていた。時期では無いから良いでしょう(勝手に解釈)…ね。長野県はどこに行ってもこの看板だ。
林道は轍の跡もくっきりと、しばらくは明瞭な道だった。落葉松の植林に白樺が少し混じり、間違えて登った岩峰を少し見下ろすくらいの高さまで来ると、林道は間伐された落葉松やその枝やらでジャングルジムの様になり、通行不能になった。まるでアスレチック並みで、まともには歩けない。林道自体も崩壊して道型も判別できない程になっていた。仕方ないから伏流になった沢沿いをしばらく忠実に詰めると、植林が終わり沢の源頭部になった。そこからは雑木やシャクナゲのジャングルだった。足元にはハシリドコロが花を咲かせて群落を作っていた。これの芽出ししたばかりのものは、いかにも美味しそうなので、間違えて食べると神経毒で精神錯乱を起こし山の中を走り回るといういわく付きのもの。
右手に見える尾根が近いので、沢沿いを離れそこまで登る。尾根に着くと小川山の展望があった。足下には川端下集落も見える。しかし、ここから稜線沿いは岩稜登りで、松やシャクナゲが絡みついて容易ならざる登高だ。間違えばそのまま100㍍くらい下に真っ逆さまだ。稜線伝いは厳しくなったので、また沢側に回り込む。
シャクナゲやダケカンバなどがびっしりと密藪になり、腕や顔にぴしぴし枝を打ち付ける。結構しぶとい薮漕ぎになった。ここもご多分に漏れず、シカの糞が点々とシカ道に落ちていた。シカ道はトンネル状で右往左往しており、ここに関してはあまり登りの役に立ちそうもなかった。再び岩に突き当たり、枝に掴まったりぶら下がったりして、漸く頂稜の一角に出た。そこからまだ、岩峰を巻いたり、岩場をよじ登ったりして、最後はシャクナゲの薮をかき分けて三等三角点のある頂上に着いた。登りだしてから丁度2時間、8時25分だった。
粉々に砕けたチャートがばらまかれた岩場の中央に木材でガードされた三角点標石があるだけで、あとは何もないシンプルな山頂だった。南は少しシャクナゲなどが高かったが、その他は全く遮るものもない素晴らしい展望台だ。すっかり晴れ上がった青空の下に、上部を残雪にきらめかせた奥秩父の主稜線、金峰・朝日・国師から甲武信方面までが高いスカイラインを作っていた。北には八ヶ岳が、まだべったりと白い峰々だ。千曲川沿いの男山・天狗山・御陵山の稜線は蟻ヶ峰までうねうねと延びて、その向こうに御座山が頭を出している。蟻ヶ峰から東には大蛇倉山などの山並みが御座山から派生する稜線と繋がっている。遠くに霞んで両神山が見える。
周囲に見える山も登っていない山の方が少ない、懐かしい山ばかりだ。川端下集落を見下ろす西側は絶壁になっていて、ほんの2㍍程先は空間になってすっぱりと切れ落ちていた。チャートの砕石が崖際まであったから、そこまで行ってのぞき込むことはできなかった。川端下から見上げた岩の砦の上、小川山から見た王冠のてっぺんにこうして立てたことは本当に嬉しかった。
稜線伝いの千平へはシャクナゲや松の密藪が覆った岩稜をからめて上り下りする厳しそうなルートだ。千平まで行きたいと思っていたが、困難な様子を見るとそれ程までして行く程のものでもない、この山頂で充分だと思った。稜線続きの長峰まではかなりの距離があるように見えたし、幾つもの岩峰を越えていかなければならない。稜線沿いの密藪は長峰に登った時にも経験済みだ。この辺の山は下部が落葉松の植林でどこでも歩けるが、稜線沿いはシャクナゲなどの薮がひどい。沢筋は総じて水流が少なくて滝も余りなく、木々も疎らで歩きやすい様だった。
一通り写真を撮ったり眺めを楽しむと、岩の上に座っておむすびやパンを食べた。いつもながら、山に来るとよく食べるぼくだった。9時10分に山頂を降りた。
下りの目安は下の間違えた岩峰の位置を確認しながら、登りだした沢にうまく下り着くことだった。登りは何の印も付けずに来た。今日の晴天、周囲も見えるし、ルートは単純で距離も少ない。密藪で視界が無くなる所だけ注意すれば問題はないからだ。
シャクナゲとダケカンバや松の混じる薮は岩場もあって、沢の源頭までは気が抜けなかった。顔や身体にぴしぴしと鞭のように枝が当たるので痛い。足元の苔むした樹床はふかふかして崩れやすい。下りは岩場がシビアな尾根伝いをやめて、直接登ってきた沢に下ることにしたが、この方が正解だった。沢筋の方が薮も薄く、足場も良かった。思いの外早く源頭に下り着く。春の陽が暑いくらいで眠気を誘うようにツツドリが啼いていた。足元からヤマドリが飛び立っていった。
ジャングルジムのような間伐材の折り重なりを抜けると、見えてきた高原野菜畑では農作業に励む人やトラクターが動いていた。たんたんと林道を下り、間違えて登った例の岩山を見上げて車まで戻ってきた。下りは1時間ちょっとしか掛からなかった。まだ時刻は9時15分。この時間からなら横尾山と高登谷山の2山を登ることも出来るが、今日はあと御陵山を登って帰ろうと思った。横尾山は花がきれいな所だそうだから、花が咲いている時期の方がいいだろう。車に乗って御陵山の登山口である馬越峠に向かう。
川上村はまだ桜が満開だ。標高が高いので丁度北海道の都市部と同じ頃の季節で、春がやっと来た感じだった。ゴールデンウィーク中とはいえ、高原野菜の村は農作業が忙しそうだった。
馬越峠の狭い駐車スペースには車が一杯だ。もちろん、ほとんどは天狗山から男山に向かったものだろうけど。南相木村側に少し下った路肩に車を停めて、早速峠の切り通しから直上する踏跡を登る。雨が少ないせいか、登山道は乾いてほこりっぽかった。行く手には台形の御陵山が形良いが、途中にある高圧鉄塔は無粋でいただけない。この高圧線は群馬から県境を越えて御座山の肩をかすめているあの幹線で、ここから奥秩父の主稜線を越えて山梨方面に延びていた。
ルートは稜線伝いで小さなアップダウンが多い。雑木やシャクナゲに松が混じる岩混じりの道で、大原平ノ頭辺りの樹相や岩質と似ていた。奥秩父から続く古生層の山で、チャートや石灰岩が見られるが、ここは大原平ノ頭と同じでチャートに覆われていた。だから天狗山などの岩山は何となく赤っぽい色をしているのだった。
鉄塔は98㍍もあった(鉄塔に書いてあった)。丁度その下で休んでいたら、熟年夫婦が反対側からやってきてすれ違った。この日唯一のハイカーだった。
御座山が大きく見える。大蛇倉山の下に白いコンクリートの三川ダムが近かった。大蛇倉も蟻ヶ峰もこからだと奥深い山に見える。御陵山から蟻ヶ峰まで同じ様な高さの山陵が続くが、御陵山の先に幾つか無名?の岩山があるのが気になっている。最近作られたこの山稜を横切る林道を利用すればこれらの岩峰に登ることも可能だろうか?御陵山の北に寄り添うようにある岩峰が形良かった。
最後は少し急な登りで、12時5分に南北に細長い御陵山の山頂に着いた。北の端に壊れかけた木造の祠があり、南端のピークに三角点があった。展望は丁度真ん中辺りの岩場から東西が広く開けて見えた。八ヶ岳をバックにした天狗山がそそり立ってなかなか見事な眺めだが、やはり目の前を横切る高圧線が目障りだ。やや霞んできたが、南アルプスの北岳や甲斐駒・手前に奥秩父の主稜線と横尾山辺りが見える。川上村の畑のビニールマルチが白く光っている。
誰も居ない静かな山頂で、ガスコンロの音がゴーゴー響いた。ラーメンを食べてのんびりした。GW中とは思えないひと気の無い山だ。1時間ほど山頂で休んでから午後1時にゆっくり下った。来た道を辿って2時に馬越峠まで戻ってきた。やはりGWとあってか、この峠を越えていく車やバイクも多い。
峠から南相木に下り、定番の「滝見の湯」で汗を流す。いつもと違って混雑していたが、どういう訳か浴場は余り混んでいないのだった。湯船で脚を伸ばすと気持良かった。今日はあまりがつがつせず、のんびり山を登ったような感じかな。
連休中だから当然道路も混んでいるだろう。ぶどう峠を越えて、上野村から南牧に抜ける裏道を通ったから渋滞にも巻き込まれずにウソのように早く家に着いてしまった。夕飯は家で食べられたのだった。
画像のページへ
http://photo.www.infoseek.co.jp/AlbumPage.asp?m=0&key=1565064&un=118647
(大原平ノ頭 1969.3m 御陵山 1822.4m)
3年前の11月に奥秩父の小川山に登った際、裏瑞牆(うらみずがき)と呼ばれる花崗岩の岩塔群から東一つ向こうの稜線上に王冠を二つ並べた様な岩山を見つけた。丁度落葉松の黄葉の時期に重なり、それはそれは見事な眺めだった。その山に登ろうと調べたが、先入観からそれを長峰と勘違いしてしまった。長峰に登って、それが間違いだったことを知った。その山は長峰ではなく、昭文社の「山と高原地図」によれば、あまりパッとしない「大原平ノ頭」という名前らしかった。ツインの王冠のもう一つには「千平」と、これまた冴えない名前が付いていた。
地図で登山ルートを探り、何度か登ろうと計画しながら先延ばしになっていた。先月、朝日岳に二度目の敗退の後、中途半端な時間だったから「じゃあ、ここに登ろう…」と大原平ノ頭に登るつもりで、間違って手前の岩峰に登ってしまったので、未だに未登のままなのだ。http://blog.goo.ne.jp/tsimosan/e/12f6e7b7c2a96ca0cb9520bba2f893a7参照
30日に谷急山に登ったばかりだけど、何しろこの4月からはカレンダー通りにしか休めないので、行けるときには山に行こう。ということで、因縁?念願?の「大原平ノ頭」決行と相成ったのであった。道のない山とはいえ、登り口から標高差で500㍍程度。前回様子を見た感じでは、落葉松の植林された沢筋を忠実に辿るだけでそれほど困難な雰囲気ではなかった。時間が当然余るから、この山域で登り残している御陵山(おみはかやま)もついでに登っておこう。その他に横尾山と高登谷山の地図も念のため持って行くことにした。
前夜発。川上村は何回来たかなあ?今年だけでもこれで3回目、この辺りの山も登り尽くしてきた感じ。前回失敗していたから、今度こそは登り口の林道を間違えないようにと探すが、夜中だから良くわからない。明るくなってから探そうと、高原野菜畑上部の道端に車を停めてシュラフにくるまった。何だか知らないけれど、ここに来る途中夜中なのに山岳マラソンでもしているような人たちが点々と走っていた。中高年(というより…おじいさん)ばかりなのが何とも…。
目が覚めると時刻は朝の5時半で、周囲はガスっている。道のない山だけに霧なんか巻いていては登れない、でも上空は明るいし次第に晴れてくるだろうと、もう一眠りした。
6時少し前にシュラフから顔を出すと、前回間違って登った岩峰(1,720m)が青空を背景にすっくと立っていた。まだ全天ではないが、これで晴れてきそうだ。おむすびを食べて、登山口の林道の確認をする。川端下集落のある谷(大弛林道が走る)と町田市市民休暇村(常楽院平という地名)がある谷の間の山並みの高みが大原平ノ頭だが、そのピークに向かって一筋、水流のある沢が登っている。その沢沿いの林道を詰めると、ピークの直ぐ近くまで行けると言うことだった(雑誌「山の本」にあった情報)。今、車を停めている沢沿いの林道がそれに間違いないようだった。支度をして6:30出発。青空が気持ちいい。
しばらく、25,000図に書き込みがある林道を奥に進む。高原野菜畑の外れに来ると、そこに鹿よけの電柵が林道も塞いでいた。「きのこ山だから入山禁止…」の様なことが書かれた看板が付いていた。時期では無いから良いでしょう(勝手に解釈)…ね。長野県はどこに行ってもこの看板だ。
林道は轍の跡もくっきりと、しばらくは明瞭な道だった。落葉松の植林に白樺が少し混じり、間違えて登った岩峰を少し見下ろすくらいの高さまで来ると、林道は間伐された落葉松やその枝やらでジャングルジムの様になり、通行不能になった。まるでアスレチック並みで、まともには歩けない。林道自体も崩壊して道型も判別できない程になっていた。仕方ないから伏流になった沢沿いをしばらく忠実に詰めると、植林が終わり沢の源頭部になった。そこからは雑木やシャクナゲのジャングルだった。足元にはハシリドコロが花を咲かせて群落を作っていた。これの芽出ししたばかりのものは、いかにも美味しそうなので、間違えて食べると神経毒で精神錯乱を起こし山の中を走り回るといういわく付きのもの。
右手に見える尾根が近いので、沢沿いを離れそこまで登る。尾根に着くと小川山の展望があった。足下には川端下集落も見える。しかし、ここから稜線沿いは岩稜登りで、松やシャクナゲが絡みついて容易ならざる登高だ。間違えばそのまま100㍍くらい下に真っ逆さまだ。稜線伝いは厳しくなったので、また沢側に回り込む。
シャクナゲやダケカンバなどがびっしりと密藪になり、腕や顔にぴしぴし枝を打ち付ける。結構しぶとい薮漕ぎになった。ここもご多分に漏れず、シカの糞が点々とシカ道に落ちていた。シカ道はトンネル状で右往左往しており、ここに関してはあまり登りの役に立ちそうもなかった。再び岩に突き当たり、枝に掴まったりぶら下がったりして、漸く頂稜の一角に出た。そこからまだ、岩峰を巻いたり、岩場をよじ登ったりして、最後はシャクナゲの薮をかき分けて三等三角点のある頂上に着いた。登りだしてから丁度2時間、8時25分だった。
粉々に砕けたチャートがばらまかれた岩場の中央に木材でガードされた三角点標石があるだけで、あとは何もないシンプルな山頂だった。南は少しシャクナゲなどが高かったが、その他は全く遮るものもない素晴らしい展望台だ。すっかり晴れ上がった青空の下に、上部を残雪にきらめかせた奥秩父の主稜線、金峰・朝日・国師から甲武信方面までが高いスカイラインを作っていた。北には八ヶ岳が、まだべったりと白い峰々だ。千曲川沿いの男山・天狗山・御陵山の稜線は蟻ヶ峰までうねうねと延びて、その向こうに御座山が頭を出している。蟻ヶ峰から東には大蛇倉山などの山並みが御座山から派生する稜線と繋がっている。遠くに霞んで両神山が見える。
周囲に見える山も登っていない山の方が少ない、懐かしい山ばかりだ。川端下集落を見下ろす西側は絶壁になっていて、ほんの2㍍程先は空間になってすっぱりと切れ落ちていた。チャートの砕石が崖際まであったから、そこまで行ってのぞき込むことはできなかった。川端下から見上げた岩の砦の上、小川山から見た王冠のてっぺんにこうして立てたことは本当に嬉しかった。
稜線伝いの千平へはシャクナゲや松の密藪が覆った岩稜をからめて上り下りする厳しそうなルートだ。千平まで行きたいと思っていたが、困難な様子を見るとそれ程までして行く程のものでもない、この山頂で充分だと思った。稜線続きの長峰まではかなりの距離があるように見えたし、幾つもの岩峰を越えていかなければならない。稜線沿いの密藪は長峰に登った時にも経験済みだ。この辺の山は下部が落葉松の植林でどこでも歩けるが、稜線沿いはシャクナゲなどの薮がひどい。沢筋は総じて水流が少なくて滝も余りなく、木々も疎らで歩きやすい様だった。
一通り写真を撮ったり眺めを楽しむと、岩の上に座っておむすびやパンを食べた。いつもながら、山に来るとよく食べるぼくだった。9時10分に山頂を降りた。
下りの目安は下の間違えた岩峰の位置を確認しながら、登りだした沢にうまく下り着くことだった。登りは何の印も付けずに来た。今日の晴天、周囲も見えるし、ルートは単純で距離も少ない。密藪で視界が無くなる所だけ注意すれば問題はないからだ。
シャクナゲとダケカンバや松の混じる薮は岩場もあって、沢の源頭までは気が抜けなかった。顔や身体にぴしぴしと鞭のように枝が当たるので痛い。足元の苔むした樹床はふかふかして崩れやすい。下りは岩場がシビアな尾根伝いをやめて、直接登ってきた沢に下ることにしたが、この方が正解だった。沢筋の方が薮も薄く、足場も良かった。思いの外早く源頭に下り着く。春の陽が暑いくらいで眠気を誘うようにツツドリが啼いていた。足元からヤマドリが飛び立っていった。
ジャングルジムのような間伐材の折り重なりを抜けると、見えてきた高原野菜畑では農作業に励む人やトラクターが動いていた。たんたんと林道を下り、間違えて登った例の岩山を見上げて車まで戻ってきた。下りは1時間ちょっとしか掛からなかった。まだ時刻は9時15分。この時間からなら横尾山と高登谷山の2山を登ることも出来るが、今日はあと御陵山を登って帰ろうと思った。横尾山は花がきれいな所だそうだから、花が咲いている時期の方がいいだろう。車に乗って御陵山の登山口である馬越峠に向かう。
川上村はまだ桜が満開だ。標高が高いので丁度北海道の都市部と同じ頃の季節で、春がやっと来た感じだった。ゴールデンウィーク中とはいえ、高原野菜の村は農作業が忙しそうだった。
馬越峠の狭い駐車スペースには車が一杯だ。もちろん、ほとんどは天狗山から男山に向かったものだろうけど。南相木村側に少し下った路肩に車を停めて、早速峠の切り通しから直上する踏跡を登る。雨が少ないせいか、登山道は乾いてほこりっぽかった。行く手には台形の御陵山が形良いが、途中にある高圧鉄塔は無粋でいただけない。この高圧線は群馬から県境を越えて御座山の肩をかすめているあの幹線で、ここから奥秩父の主稜線を越えて山梨方面に延びていた。
ルートは稜線伝いで小さなアップダウンが多い。雑木やシャクナゲに松が混じる岩混じりの道で、大原平ノ頭辺りの樹相や岩質と似ていた。奥秩父から続く古生層の山で、チャートや石灰岩が見られるが、ここは大原平ノ頭と同じでチャートに覆われていた。だから天狗山などの岩山は何となく赤っぽい色をしているのだった。
鉄塔は98㍍もあった(鉄塔に書いてあった)。丁度その下で休んでいたら、熟年夫婦が反対側からやってきてすれ違った。この日唯一のハイカーだった。
御座山が大きく見える。大蛇倉山の下に白いコンクリートの三川ダムが近かった。大蛇倉も蟻ヶ峰もこからだと奥深い山に見える。御陵山から蟻ヶ峰まで同じ様な高さの山陵が続くが、御陵山の先に幾つか無名?の岩山があるのが気になっている。最近作られたこの山稜を横切る林道を利用すればこれらの岩峰に登ることも可能だろうか?御陵山の北に寄り添うようにある岩峰が形良かった。
最後は少し急な登りで、12時5分に南北に細長い御陵山の山頂に着いた。北の端に壊れかけた木造の祠があり、南端のピークに三角点があった。展望は丁度真ん中辺りの岩場から東西が広く開けて見えた。八ヶ岳をバックにした天狗山がそそり立ってなかなか見事な眺めだが、やはり目の前を横切る高圧線が目障りだ。やや霞んできたが、南アルプスの北岳や甲斐駒・手前に奥秩父の主稜線と横尾山辺りが見える。川上村の畑のビニールマルチが白く光っている。
誰も居ない静かな山頂で、ガスコンロの音がゴーゴー響いた。ラーメンを食べてのんびりした。GW中とは思えないひと気の無い山だ。1時間ほど山頂で休んでから午後1時にゆっくり下った。来た道を辿って2時に馬越峠まで戻ってきた。やはりGWとあってか、この峠を越えていく車やバイクも多い。
峠から南相木に下り、定番の「滝見の湯」で汗を流す。いつもと違って混雑していたが、どういう訳か浴場は余り混んでいないのだった。湯船で脚を伸ばすと気持良かった。今日はあまりがつがつせず、のんびり山を登ったような感じかな。
連休中だから当然道路も混んでいるだろう。ぶどう峠を越えて、上野村から南牧に抜ける裏道を通ったから渋滞にも巻き込まれずにウソのように早く家に着いてしまった。夕飯は家で食べられたのだった。
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