Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

鉄道敷のキキョウ

2008-08-21 22:41:32 | 自然から学ぶ


 毎年たくさんキキョウが咲く飯島町本郷のため池を、盆に生家を訪れた際に遠目に見たところ、今年は紫色が少なく見えた。どういう影響かはわからないが、秋を迎える季節には、行く夏を惜しむような花である。絶滅危惧種と言われるものの、あまりそういう意識にならないのは、家々の庭でも咲いている姿を見るからだ。しかし、野でキキョウを見ることは大変珍しい。残念ながらほ場整備が行なわれた空間ではまず見ないし、そうでなくともこの半世紀以上手の加えられなかった水田の土手でもキキョウを見ることはほとんどない。そんなキキョウを飯田線の伊那本郷駅の北側の踏切の近くに、電車の窓越しに見つけた。たった数株なのだが、藪と化した雑草の中に、紫色の花が目立ったのだ。丈が長く、そこそこの大きさの花を咲かせるキキョウが、雑草の中に咲いていればすぐに目につく。その窓越しに見つけたキキョウを盆に生家に帰った折に、近くまで行って確認してきた。以前からも触れているように、鉄道敷きにはこうして今では珍しくなった花がけっこう咲いている。「ブタクサとワレモコウ」で触れたように、あまり手の加えられなかった水田地帯で、かつ開発がじわじわと進んできた空間には、昔からの植生と新興の植生の両者を見ることになるが、鉄道敷きは意外と新興の雑草は少なかったりする。もしあったとしても、それは鉄道がもたらしたものというよりは、隣接する道路を介してのものではないかと思えるほど、鉄道敷きの方が環境変化は少ない。

 鉄道脇でブタクサやアレチウリといったこのごろ話題の外来植物をあのり見ない。そういえば日本にやってきてすでに長い歴史のあるニセアカシアの姿も少ないことに気がつく。人工の空間だからといって外来のものに駆逐されているわけではないのである。とそんなことを印象としてもったことから、数日乗車区間の鉄道敷きの様子をうかがってみた。大田切駅の西側にはたくさんのブタクサが花を咲かせているが、どう見ても鉄道がもたらしたものというよりは、その向こう側の盛土の際にやってきた雰囲気だ。

 とはいえ、鉄道草といわれ、鉄道が開通していくとともに全国に広がったヒメジョオンがあるから外来生物をもたらさないというわけではないが、それをくつがえすほどこの空間には昔ながらの花が咲いていたりする。

 キキョウがこうして見かけられるのは、わたしの認識では、飯田から伊那市駅の間で前述した伊那本郷駅近くのものと、大沢信号所の北側、相の沢川の鉄橋へ迂回する西側の荒れた畑の中だけである。
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