Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

盆休みに

2008-08-17 19:48:03 | つぶやき
 PCが壊れてサービスセンターを検索していると、こうした会社も「盆休み」とは言わないが「夏休み」で休業している。けっこうこの期間に休業している会社は多く、田舎だけの「盆」ではないことが解る。高速道路がこの時期に正月並みに混雑するところをみれば、今や正月と同等とは言わないものの、盆という期間が国民にとっては休日というイメージになっている。そのいっぽうで、お役所は盆の時期でも暦どおりにやっている。この時期には「留守番」などという言葉も出るほど、一般的には休業イメージがあるにもかかわらず、お役所は涼しい部屋の中で営業を続ける。「家にいるより涼しいから」などといって留守番を選択する人たちもいるというのだから、果たしてそんな暇な人たちのために通常業務をする必要があるのだろうか。

 先ごろ明日から盆という日の夕方、役所から電話がかかってきてすぐに仕事をやって欲しいという。冗談ではない明日から休む予定なのにそれは無理だと言うが、「なるべく早くやって欲しい」という。期日を指定してくださいといっても明言しない。このあたりからしてうまいもので、こちらにその日を先に言わせようとする。役所の人たちはこういう人たちが多い。それができないのなら仕事はやらない、ということなのだろうが、もともと仕事に命を懸けているわけではないからそんなことを気にしないようにしている。それでも律儀な方だから一応盆休み後の余裕をみて回答すると、やはりという感じに納得していないようす。口には出さないが盆中に成果を求めているようだ。もちろんこちらも納得はしない。あらかじめそういう約束ならともかくそうではない。盆明けの予定も詰まっていて、本当ならもっと猶予が欲しいのに、気を使って口にした期日が納得いかないというのだから、もともとわたしの仕事じゃないから、嫌なら仕事はお返しする。そこまでは至らなかったが、しぶしぶ納得してもらった後、元受からいきなり上司に電話がかかってきて、「早くしろ」ということらしい。盆には盆にしかできないことがあるのに無理をいうものである。

 実は、わが社には盆休みというものはない。だからこんなやり取りになる。とはいえ、こちらにも予定があるのだからそう簡単に予定を変えて盆に出てくるというわけにはいかない。そんなことがあって言いなりにはなりたくないが、少しばかり気を使って仏様を送る16日、だれもいない会社へ向かう。誰もいない会社の方が留守番と錯覚して会社に来ているような輩がいないから、仕事もしやすい。役所の仕事を引き受けている会社だけに、こんな季節は休業にすれば良いと前から思っている。もちろん役所だって正月のように旗日にすれば良いのにと思うが、そんなことを言う人はいない。

 盆の季節は新盆見舞いにたくさんの家を回る人も多い。地方はそれが当たり前のように行われている。そして都会からはそんな仏様を参りに里帰りする人が多い。これほど多様化した時代でも繰り返し行われている。それでもこの13日、親戚へ新盆の見舞いに訪れると、都会に出た顔はあまりなかった。だいぶ新盆の供養も廃れてきた、というよりも無理にその時期に訪れるというほどのこともなくなったようだ。長子ではなかったわたしには、それほど家の付き合いもなく、同じ日に新盆の見舞いにあちこち回るということはないが、地方にあっては盆という期間は忙しい時期である。

 新盆の席で親戚と顔を合わる。こんなことでもなければめったに顔を合わせない人たちとも宴席で同席し、これがもしかしたら今生の最後かもしれないと思われるような人たちと会話を交わす。葬式で顔を合わせたときもほとんど挨拶も交わさなかったおじさんと話をする。同じように葬式では遠くに座っていて一言も交わさなかったいとこともずいぶんと昔話をした。これが盆だと強く認識できる一日だった。亡くなった者にとっても、そんな昔話のために親戚の人たちが集まってくれたことを喜んでいるだろう。悲しい時代になった。だからこそこぞって地方をめざしているこの時期を、国民の休日にするべきだとわたしは思う(もちろん盆の時期が異なるところもあるだろうから異論も多いだろうが)。
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